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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー77 訓練後のあれこれ

「結局さ、七星剣の力ってなんだったんだ?」



 戦いがーー否、訓練に一旦区切りがつき、回復済みの奏が漸く立ち上がったところで質問を投げかけた。


 戦闘後、回復の力を使いながら傍に突き刺さっている七星剣を見ていると、まだ聞いてなかったことを思い出したのだ。


 結局、剣のトゲトゲは磔にされた時に光った四つから一つ増えて、五つ光った状態で地に刺さっていた。

 最後まで威力は変わっていないような気がしたのでなんの効果があるのか見当もつかなくなったのである。



「ついでに合間合間で使ってた大きい剣の方も教えてや」


 大きい方はなんとなく……というか殆ど確定している。

【分裂】だ。



 いくら見たことのない剣でもサイズ、形、色全て同じの剣がいくつもあれば(おの)ずとわかる。

 あれはわかりやすすぎる。


「大きい方はそれであってる」


 いちいち口に出さなくても勝手に思考を読んで回答が送られてくるので会話が大変楽である。

 最近はもう勝手に読まれても何も言わなくなった。


 最近といってもここニ、三日だが。



「こっちはね〜面白いよ?」


「勿体ぶらなくていいから」


「ノリ悪いなぁ」


「いつものことだろ」



「まあね」


 一泊置いて返事が戻ってきた。


「それで、剣の力なんだけど……あ〜……なんていうかなぁ……」


「何かあんのか?」


「いやないけど。でもさ、これ言ったら、結構本気で殺そうとしてたこと伝わるな〜〜と」


「別に気にせんけどな。僕も殺しそうになったし」


 毒まで使った僕にそんな心配などしなくていい。

 結構ガチで戦ったのはお互い様だ。


 余波で倒れてる軟弱者どものことは知ったこっちゃない。

 なんで姉妹も死にそうにしてんだよ。




「じゃあいうけど……」


 意を決したように真面目な優等生モードの顔に戻った奏が告げた。


「あれって、7回指定の場所を攻撃された相手を確実に殺す剣なんだよね」


 ……ん?


「しかも回復も蘇生も時間遡行も意味なくて、俺とか小見山さんの力でも覆せない力で殺すんだよね」


 ……んん?





 ……………はい?




 ……………はい?




 ……蘇生も無理?回復も時間遡行も無理?『絶対』も?うっそ〜〜ん


 うっそお〜〜







 流石にそこまでやばいとは思わなかった。

 せいぜい普通に『殺す』とか。



 確死するとは思わなかった。








 殺意高っ!!



『殺す』のバーゲンセールじゃん。



 やりすぎだって。

 いくらなんでも。


「そうは言っても最後の………コズミック・レイかな?あれも同レベでやばいじゃん。あれって毒撒き散らす破壊光線でしょ?」


「まあね。でも治せるし後の被害は残さない。スキルを止めたら毒も消える。0になる。完全に、だ。」


「それでも危険なものは危険なんだけどね」


「ただの光線よりは、な?」


 そもそもスキルが強すぎるのだ。

 毒が少々加わったところで今更だ。




「ちなみになんの毒?あらかじめ浄化と癒しかなりの力でかけたのにあっというにあのザマだし。何あれ?なんの毒?」


「使おうか迷ったんだけど……あれは放射能」


「マジ?」


「大マジ」


 毒に詳しいわけではないが、あの時の毒の量は大体致死量に届いていたはず。


 それでもこの程度で済んでいるのは、やはりステータスの恩恵だろう。


 でも多分純恋には効かないんだろうなあ。

 光線は効くだろうけど。



「もっとあったでしょ。あれ使われるよりは一瞬でやられる攻撃の方がありがたかったんだけどなあ……」


「一瞬で木っ端微塵にできるヤツとか?」


「できればやんわり一瞬で殺される方が好みかな」


 次の瞬間。


「だったらアタシがやってあげるわよ!」




 果敢な掛け声が聞こえた。

 同時に上空から響く轟音。



 遥か上空に一つの紅星。



「わお。遥香もこの規模が創れるようになったのか」


「元から作れる!」


 僕らがいるクレーターの縁に遥香がいた。

 もしかしなくても激おこらしい。

 だがわからない。



「何に怒ってんだ?」


「あんなにやるんなら先に言えよっ!こっちは大変なんだよっ!」


 なるほど。

 巻き込まれて怒ってんのか。


「次からは結界張っとけよ」


 忠告とアドバイスを込めてそう返す。



「もっと控えめに戦えって言ってんの!」


 だが、望んだ答えではなかったらしい。

 なるほど、そういうことか。



 領域構築したら観戦できないと思って使わなかったが、どうやら使ったほうが良かったらしい。


 次からはそうしよう。

 奏とここまで本気で戦うことはなかなかないと思うが。




新星(ノヴァ)



 短い詠唱と共に上空の紅星が爆散する。


 瞬時に黒い影が宙に広がり空をすっぽりと包み込む。

 奏が虚の権能で万物吸収の膜を広げたのだ。


 降り注ぐ残骸は一欠片も溢すことなく全て回収する。

 完璧だ。


 最高なコンビネーションに遥香からもため息しか出ない。



 取り敢えず、失望ではなく呆れのため息であることを願おう。



「姉さんが埋もれてる。助けに来て」


 遥香でもできるだろうと思ったのだが、それを言ったらアンタ達がやったんだから他の残骸も含めて全部直せと言われた。


 遊んだのなら後片付けも必要ということだろう。







「何処ここ」


 クレーターをよじ登るとそこはもう別世界であった。

 ここがローデリア郊外だということが瞬時に理解できないほど荒れ果てていた。


「何処って……アンタがやったのよ」


 おそらく【スターバースト】のせいだろう。


 あのバカみたいに強い絨毯爆撃が大量のクレーターを作ったんだろう。

 こんなに穴ボコにするなんてけしからん。



 一応言っておくが、僕のせいじゃない。

 決して責任転嫁ではなく、半分の出力も出してないのにここまで何もかも壊す【星】が悪い。


 なんで壊すのは得意なのに直す能力が殆どないんだ。



「奏頼んだ」



 もう一度言うが、決して責任転嫁ではない。

 適材適所だ。


 断じて自分の力では再生できなかったわけではない。

 面倒なだけで出来ないわけではない。



「我は定める ここでの戦闘による土地への被害は存在しなかった」



 ふむ。

 やっぱりさっきは本気ではなかったらしい。


 疲労が溜まっているであろう今、いきなり現実改変とかいうチートをやってきた。



 まあ、僕だって使ったのは出力最下位のものばかりなのでどうせ奏もそうなんだろうとは思っていたが。



 それよりも、なんの神の力だろうか。

 現実改変だからな、氷の眷属あたりが妥当か。


 時を操った感じはしない。

 幻……そんな神いたっけ?


 夢とかかな?


 因みに正解は記憶の神と夢の神の複合スキルである。

 優人は知らないが、奏はもう複合スキルが使える。


 そもそもの手数の多さが術式同士を複合している可能性を薄めているのだ。


 手数が多いとやはり、自分の知らない神の力や何かの神の力の副次的効果を疑ってしまう。

 可能性としては難易度の高い複合魔法より自身の知識不足を疑うほうが遥かに簡単だからだ。




 まあ、別にいいか。


 そう思い至る。

 だって奏は味方だから。



 日本での日々も含めて実に4人目の親友だ。

『親友ではなく友達』という者はほとんどいないので仲がいいのはこの4人だけとなる。

 因みに4人とは蓮斗、蒼弥、純恋、奏である。


 それだけで奏の存在の大きさが窺える。


 因みにだが、遥香はゆるキャラ的立ち位置である。


 大切な存在だが、どちらか言うとネタキャラ枠に近い。

 完全なネタキャラでもないのだ。


 雑に扱われ、皆に揶揄われている感じがしないでもないが案外、優人も大切に思っているのである。




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