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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー75 新たな力

「【世界の書(セルノ・アゼイシア)】っ!」


「【モノリス】っ!」


 今朝と同じような詠唱から戦いが始まる。


 僕の頭上に石柱が、奏の左掌の上には一冊の本が顕現する。

 両者の放つ漆黒の靄と金の光が実に対照的で映えていた。




 結局、訓練は余計な怪我をしないように順番にすることになった。

 そしてその一番槍が僕と奏である。

 正直、最後が良かったのだが見本が最後でどうすんだよ、とあれよあれよという間に蒼弥に丸め込まれてしまっていた。

 こういう時、仲の良さが仇となる。

 その仲がいいが故の気安さも大切ではあるのだが。





「さて」


 どう出るか。

 普通にやれば新しい力を使わずとも勝てるだろうが、そうもいかない。

 今試運転せずにいつするというのか。


 いくらスキルの仕様で使い方が既に脳に刻まれているとはいえ、実際に使いこなせるかは別問題。



『使えてる』と『使いこなせてる』は違うのだ。



 少なくとも『使える』だけの力を実戦に用いるのは憚られる。

 そんな愚行はかえって邪魔だ。



 だから今、見極める必要がある。

 明日からの戦いの日々で、これらの力を使っても良いのか、悪いのか。




 奏と視線を合わせてニッと笑うと同じような笑みが返ってくる。


「全力でぶつかろう」


「じゃあ行くよ。我願う 我に忍耐の力あり。我願う 我に再生の力あり」



 取得したのは痛覚耐性と治癒の力。

 この二つを取ったということは大量に権能をその身に降ろすつもりだろう。


 でないと、忍耐なんていう戦いでは最優先から外れる能力を取ったりしない。



【世界の書】の弱点である術者への負担の大きさ。

 それをカバーできる力を最優先に取ってきた。


 大量の権能を得ることで身体にかかる痛みを麻痺させて、戦闘を不利にしないように働きかけ、磨耗した命……特に精神を回復させる。


 なんでここまで無茶をする。

 いくら勝ちたくてもこれはやり過ぎだろう。




「【彗星(コメット)】っ」


 単純な隕石系統の破壊技。

 驚異的な飛来速度とその速度を変換した圧倒的な破壊力で周囲を壊し尽くす。



「我願う 我に守護の権能を与えよ」


「【離界天墻(ヴァガネミューノ)】」


 遥か上空から飛来した彗星は長いターコイズブルーの尾を引いて地に堕ちた。

 ガゴオォォンというような聞いたことのない衝撃音が耳を劈く。


 大量の砂煙を上げたソレは周囲の木を薙ぎ倒し、周りの土を最も簡単に抉り取る。



 後ろで悲鳴が聞こえた。


 声的に純恋。

 何やってんだアイツは。


 このくらいは無傷で防げよ。








 間違いなく直撃したが、これで倒せる思うほど僕は愚かじゃない。

 直前に【離界天墻(ヴァガネミューノ)】という言葉が確かに聞こえた。



 アレ(ヴァガネミューノ)は確か魔力バカ喰いして、更に他のスキルを全停止させる代わりに無壊の盾を張る、みたいな力だったはず。


 まだ砂煙から出てこないということは、中で何やら準備しているのだろう。


「展開……【スターズ】」


 自動で動くの六つの小星が周りを漂う。



 それにしても遅い。

 死んでいるわけではないと思うけど……


 ……ヤバっ




 煙の奥で膨大な魔力が吹き荒れている。

 何やってんだアイツ。


 殺す気だろ。


「【十字衝(サザンクロス)】」


 何をしでかすつもりなのかは知らないが準備するに越したことはない。

 右掌に金色の形の安定しない棒状の何かが召喚された。





 十字衝は無壊の剣。


 南十字星の持つ膨大なエネルギーを依代として顕現させる光の星剣。

 特別で複雑な能力は持たないが、代わりに莫大なエネルギーをそこに宿す。



 完全に実体を持っているわけではなく不完全な形であるからこその不可壊。

 そして不完全だからこその防ぎにくさを備えた十字の剣である。




 だが、



 砂煙を突き破って一つの影が迫る。


 右手には一振りの金に輝く剣。


「はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「クソッ!!」


 剣を振りかぶる奏に六の星が迫る。


 しかし、突如として宙に同じような剣が現れると星を貫く。

 そのまま増えた剣は消滅して元の一振りのみとなる。


 そしてそのまま剣が触れ合い、ギイィィィンと嫌な音が耳に届く。



「なんだその剣はっ」


 控えめに言って、ヤバい。

 剣自体の強さは圧倒的にあちらが上だ。


 熾星終晶刀と遜色ない……というか、アレを超えるほどの力を感じる。

 あの刀(熾星終晶刀)って神器のレプリカのはずだぞ!


 おかしいだろ!


 理屈で考えれば、これも神器のレプリカか、もしくは神器そのものということになる。

 これだけのものを使うんだったらそりゃ時間もかかるわなと納得したところで、左手に別の剣が現れたことに気づく。


「2本召喚してたのか」


「なんだと思う?この剣の力」


 既に1本目の剣は消えており、今まで左手にあった剣が今は右手に収まっている。



「なんだろな」


 そう言いつつもしっかりと思考を巡らせる。


 色は黒。

 余す所なく漆黒の刺突剣。

 ガードの部分が他の部分と比べて少し華美になっていて、トゲトゲしている。

 刺突剣にしてはガードの部分が小さく見えて少し違和感を覚える。


「神剣・七星剣。これが名前。くれぐれも死なないように気をつけて。面白い力あるから」


「能力に関しては皆目見当もつかんけどまあ、気をつける」






 第二ラウンドが始まった。




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