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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー71 翌日

「ん〜〜」


 いつも通りに目を覚ます。

 そして顔を洗って服を着替える。


 着るのは黒を基調とした衣装に鮮やかな青の刺繍が刻まれているものだ。

 全体的に手間がかかる装飾で見ただけで高価だとわかる。


 まあ、実際はどこかで手に入れていた、魔術師の衣装とか言うを素材に、遥香の創造で作ったから手間なんてスキル行使の手間くらいなもんだが。



 それから、全体に奏が再生の女神の魔法陣を刻んだので欠損しても魔力を使えば修復される。

 ついでとばかりに守護の女神の魔法陣も刻んでいたので防御面もかなり向上したはずだ。



 感謝のつもりで奏には懐かしのエラティディアの鱗をあげた。





 一通り準備を済ませ、姿見で最後の確認をする。


 それからいつも通り、姉妹の部屋に行こうとして、やめた。



「あっぶねえええええ」



 普通に忘れていた。

 そういえば昨日からクラスメイトと合流したのだった。


 主不在の奏のベッドを視界の端に捉えていなかったら部屋に直行していた。


 しかも僕とあいつらの部屋は正面だったから、僕は考え無しに正面の部屋の扉を開けただろう。

 結果、よくわからない他人の部屋を訪問することになってしまう。




 もし万が一姉妹以外の女子だったら社会的に殺される。


 気をつけよ。



 そんなことを考えていると部屋のドアが開いて奏が入ってきた。


 薄手のTシャツを着た奏はこちらを認識すると挨拶を送ってきた。


「おはよう」


「ん。おはよう。何してたんだ?」


「ただの朝のランニング。案外気持ちいいよ。次からは誘おうか?」


「いや、いい。気分が乗ったら行く」


 大嘘である。

 そもそも気分が乗る日なんて来ない。


 僕の朝のルーティーンはギリギリまで惰眠を貪ることただ一つ。


 朝から運動なんてとんでもない。




 そんな怠惰の象徴たる思考の優人が召喚前から学年トップクラスで運動神経がいいのはなぜだろう。

 最早、世界七不思議である。




 思考を読んだのかは分からないが、奏が苦笑していた。




 ***




 場所は変わって食堂。

 まだ朝日が昇ったばかりではあるが優人と奏は朝食を摂っていた。



「そういえばさ、昨日の夜に言い忘れてたけど進化条件、どっち満たして進化するかで進化結果変わるよ」



 今言うな。

 今更悩まさないでくれ。


 結論を出してたわけじゃないけどさ。


「因みに何と何?」


「それ聞く?お楽しみでいいんじゃ?」


 焦らすなぁ。

 って言っても想像つかないんだよなぁ。


 空間系統とか自然系統の進化でしょ?

 何がある?

 結界系とか?


 軽く思考を巡らせてみたものの、埒があかないと悟って早々に思考の海から帰還する。

 考えるだけ無駄だ。


 お楽しみにするのも悪くないだろう。





「それよりさ」


 その時、奏が声を上げた。


「今日、どうするつもり?一緒に行く人発表って昨日言ってたけど反発あるでしょ、当然。特に男子諸君から」


「だろうな。でもその辺も一応考えてる」


「ならいいけど」


 その会話を最後に二人の間に沈黙が流れる。

 居心地の悪い沈黙ではなく、落ち着く沈黙。




 やがて、食べ終わった奏が先に席を立つと、食堂で働いているらしき側仕えの人がすぐに食器を下げる。

 同じように席を立った僕は……もう一度席に座った。


 普通に食べ切ってなかった。


 雰囲気とノリで立ち上がったが食事を残すのも違うと思い、一人で食事を再開した。


 入り口で振り返った奏が何やってんだと呆れた表情を送ってきて、そのまま食堂を出て行った。

 ホントに何やってんだろ。



 部屋に帰ると奏が僕の色違いの衣装に着替えた奏がいたのでそのまま部屋を出た。

 因みに色は黒基調に金の装飾。


 普通にカッコよくて似合ってる。

 癪なので口には出さないが。


 まあ、どうせ読まれてるんだろう。





 来たのは場外の草原。


 二人は10メートルほどの距離を空けて向かい合っていた。


「天壁」


 守護の女神の権能。

 周囲に影響を与えないように緑の半透明の結界が構築される。



「じゃっ、始めようか」


 その言葉が試合開始の合図。


「モノリス!」


世界の書(セルノ・アゼイシア)!」


 同時に召喚される漆黒の石柱と分厚い書物。


 スキル行使が終了すると同時に二人は駆け出す。





 人知れず、二人の強者が激突した。









「アンタ達、馬鹿なの!?」


 戦いの最中、結界から漏れ出た膨大な魔力に気付いた遥香と叩き起こされたであろう純恋が駆けつけた。


 地面には大きなクレーターが幾つも出来ており、およそ人同士の戦いにはとても見えない。


「朝から何やってるんですか。結界壊れちゃってますよ」


 ホントだ。

 今気付いた。



 当の僕らはクレーターの底で寝そべっており、荒い息を繰り返している。

 奏は治癒の力を隣で使っている状態だ。


 せっかくの衣装も腕部分が消し飛んでおり、金の刺繍部分が血で紅に染まっている。

 はっきり言って悲惨な状態である。



 そう言う僕もつい先程まで全身斬り傷だらけだったのだが。


「何って言われても、朝のトレーニングだよ」


「こんなのが朝のトレーニングなら誰もトレーニングなんてしない。バカなの?」


 今日は遥香に罵られる日らしい。

 出会ってまだ5分も経ってないのに既に7回『馬鹿』を聞いている。



 なんて日だ。



「もう直ぐ集合時間ですよ。初日から文句を言われたくはありません」


「文句を言うのは勇者達だな」


「だろうね」


「まあ、移動に関しては問題ない。魔力はまだまだ余裕がある」


「あれだけやってまだっ余裕があるって……」


「行くよ。空間転移」




 視界が入れ替わる。

 交換した場所は城の騎士団の訓練場。


 入れ替わりが完了すると声が聞こえてきた。


「おっ、お前えええぇぇ!!まっ、また綾井さんとどっかに行ってぇ!!」




 もういいよ。

 このやり取り。


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