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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー70 次なる進化

「ところでさ」


 ついさっき空間転移で僕らに当てがわれた領主の館の一室に戻ってきた僕らはまだ会話を続けていた。


「さっき、もう少しで進化するみたいな事言ってたけど、もうすぐってどのくらい?」


「どのくらいって……いつでも進化できるってくらい」


 なんだと!?


「仕組みって分かってる?進化の仕組み」


「条件を満たしたら進化するってことくらいは知ってるけど……」


 実際、ステータスボードで調べてもそうとしか書いてなかった。

 他に何があるというのか。


「【進化】って条件がたくさんあるんだよ。……ここからはよく聞いてよ?寝ないでよ?寝てて聞いてなかったは無しだから」


 睡魔との戦いに必死だった僕は慌てて目を強引に擦って耳を傾ける。


「えっと、進化条件みたいなのがたくさんあって……例えば君が満たした『絶望』とか『闇の神の加護』とか。それぞれランクがある。まあそんなに細かくはないんだけど1、2、3に分かれてる」



 半分は知っている。


 ランクがあったのは知らなかったが、条件がいくつもあるのは知っている。

 あんまり覚えてないけど、いつ『絶望』を満たしたのかも大体見当がつく。


「君が満たした『絶望』は中の上」


 どこが1、2、3なんだよ。


「『闇の神の加護を得る』は上の下」


 おい。


「で、条件クリアごとにクリア難易度に応じたポイントがもらえて、指定されたポイント量を超えたら進化が起こる」


「闇の神の条件が上の下なのに何でまだ進化しないんだ?【宙】は中の上で進化したのに。もしかして気付いてないまに何個か条件満たしてたのか?」


 訓練中にあの音が鳴っても気づかない可能性は高い。

 しかし、その見解を奏は首を横に振って否定する。


「ただ単に進化に必要なポイント数が上がっただけだね」


 ああなるほど、そういうこと。


「そ。で、これからの進化についてだけどいくつか良さそうな条件があるけど?」


「幾つかって……どのくらい?」



 帝国戦前に更に強くなれる可能性があるのなら試すべきだろう。


「まず……『熾星終晶刀』を使用可能にする事」



 確か、幻獣種のLV700くらい必要だったはず。

 今が20前後だったから……まあ格上3、40体くらい倒す感じか。



 ……無理じゃね?

 今更格上なんて簡単に見つからないし。


 幻獣種以上は迷宮に行かないとなかなか見つからない。

 そして、今から新しい迷宮を一層から順に巡るのはめんどくさいし、帝国戦には間に合わない。



「後は、一定以上の出力の攻撃を繰り出す事。何だっけ、【宙の共鳴】だったっけ?アレを全力でやったらクリアかな?結構簡単でしょ」



 確かに。

 本当に拍子抜けである。

 これには結構悩んでいたのに、これだけで解決とは。



「ただ、場所が問題だよね。アレ使ったら間違いなく誰か死ぬよ」


 それもそうだ。

 結界でも防げない衝撃波となるとどうすればいいのか本当にわからない。

 服に防御魔法を刻むくらいしか思いつかない。

 そして、僕らは魔法を知らないから騎士団の誰かに頼むか、奏に任せないといけない。

 どちらにせよ、時間がかかる。



「それからついでにもう一つ悪い情報。……これって誰か人を殺さないといけない」



 ダメじゃん。

 絶対無理じゃん。


「帝国でやるかぁ?……」


 そう言いながら空を仰ぐ。

 天井だが。


「帝国も俺の友達いるからうんって言いにくいけど……やるとしたらそこだね」


 微苦笑を浮かべながらも奏が頷く。


 まあ、友人に危険が迫るとなるといい気はしないだろう。



「それに……使いこなせるか、だよなぁ……」


 進化したら確かに性能は上がる。

 だが、使いこなせないのならば【宙】以下になる可能性もある。


 ……【宙】になった時のこと、大して覚えてないんだよねぇ。


 我を忘れていたせいで、記憶からすっぽりと抜け落ちてしまっている。


「一旦保留かな」


「それもアリ」


 すぐに決める必要もないだろう。

 もし両方とも無理そうなら、今のスキルのままで戦うまでだ。


 このスキルも悪くない。



「っていうかさ、前々から思ってたけど、使わないの?熾星終晶刀(アレ)


「ん〜、なんかレベルに条件があるらしくって」


 今使ってもただのかっこいい刀だ。

 それならイルテンクロムの武器の方がいい。



 めんどくさいよね。

 仕方ないけど。


 神器だし。


 神器だから。



「使えばいいのに。能力なくても、魔力を込める剣なんだから普通の剣よりは強いと思うけど」



 そうなんだけどな。

 そりゃそうなんだけどな。


 なんか嫌じゃん。

 自分が不完全って分かった上で中途半端に神器使うのって。



 なんだか申し訳なさを感じる。


 誰に対してかはわからないけど。



「そんなしょーもない事気にしてたのか。思ったより繊細……っていうか律儀なんだねぇ。優人って」


「当たり前のように心読まないでもらえます?」


「何のことだか」


 肩を竦めて軽く受け流された。

 この飄々とした態度と言ったら何とも組みしにくい。


 それが奏らしさでもあるのだが。





「はぁ〜。もう寝よ」


「早いね。まだ10の鐘鳴ったばっかじゃん」


「いいだろ。もう疲れた」


「ははっ。いつもの体力はどこへやら」


「あんだけ追求されたら嫌でも疲れるだろ」


「それは同意。俺も話はそこまで得意じゃないし」


 なかなか意見が合う。

 相性がいいのかもしれない。



 新しい親友になれたらいいんだけどなぁ。



 今は心を読んでないらしく、それらしい反応は見えない。



 まあ、いいか。



 そんなことを小さく呟きながら、ゆっくりと瞼を下ろした。



『一定以上の出力の攻撃を放つ』のランクは中の上です。簡単すぎると思うかもしれませんが、宙の共鳴は【宙】にディフォルトで備わっている術式ではなく優人が生み出した技です。『一定以上の出力の攻撃を放つ』は本来この段階で満たせる条件じゃないんです。

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