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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー68 再会

「お、お、おおおお前っ!なんで綾井さんと一緒にいるんだ!」


 扉が開いた音でシーンとなった部屋に響いた第一声がこれである。



 なんか、もっとこう……感動的な…ね?

 泣きながら抱きしめたりはしたくないけどさ、なんか、ねぇ?


 もうちょっとあるじゃない。


 なんで第一声から非難が飛んでくるのさ。




 もうここから逃げ出したくなってきた。

 逃げたら逃げたで陰口が確定するので逃げはしないが。




 こう言う時の対処法。


「さ、遥香。みんなと挨拶するんだ」


 それは遥香へ全部押し付けるというもの。

 面倒は押し付けるに限る。




「うるせぇ!こっちの質問に答えろっ!」


 だが、今回は無駄であった。


 実感がないが、綾井純恋という人間はこの学年のアイドルである。

 彼女が誰か一人と、特に男子と、一緒に何かするのは他の生徒からすれば嫉妬の対象でしかないのだ。



 っていうかなんで奏に注目いかないんだよ。

 普通にイケメンなのに。



 僕の考えでは奏に質問が流れてこちらについては何も追求されないはずだった。

世界の書(セルノ・アゼイシア)】にも未来は載っていないため、対策のしようがない。



 こういう時は本人に任せる。

 嫌な予感しかしないが、最終手段だ。


 最早これしか道はない。


 スッと横にずれると、斜め後ろにいた純恋を遥香が押し出す。


 ナイスだ、遥香。

 後でご褒美あげよう。



「あ、えっとですね……えっと、優人くんとは親友になりました。お城で別れてからずっと、私たちを助けてくれたんですよ?みんなもこれから仲良くなってあげてください」



 そうじゃあない!!!

 違う!!


 もっと違うことを言ってくれ!!



 それから僕をもう優人と呼ぶなぁ!!

 梶原と呼べっ!!!




 期待を裏切らない綾井純恋。

 しっかりと嫌な予感を当ててきやがった。


 今日もポンコツ。

 僕への被害が全く計算に入ってない。



 これで添い寝の件を言いでもしたら廊下に転移(飛ば)してやる。




「遥香。純恋(コイツ)下がらせて奏の紹介をしてくれ」


「姉さんの意思優先だけど……今回は従ってあげる」


 助かった。

 僕は矢面に立てない。

 立った途端に蜂の巣だ。



「優人くんって強くて優しいんですよ。頑張ったら褒めてくれますし、抱きーー」


「姉さんもう大丈夫。後は私が説明します」


 あっぶねえぇぇぇええええええええええ!?

 ナイス遥香あぁぁああああああ!!



 っていうかさ、コイツの記憶どうなってんの?

 大して優しくした覚えはないし、褒めた覚えもないし、抱きしめたのも偶々(たまたま)だし。


 脳内フィルターかかりすぎだろ。




 ***




「それでさ、これからどうする?」


「取り敢えず、僕らと一緒に帝都に行くメンバーは明日伝える。今晩4人で話し合うつもりだから、3人ともよろしく。場所は……後で言う」


 こそこそ話し合ううちに奏が新たな仲間として紹介されて、帝国を裏切って味方になったことも伝えられた。

 そこから分かれてちょっとだけクラスの雑談をした後会はお開きになり、個人の時間になる。


 時間は既に夕方。

 なんだかんだ言って、お茶会室で2時間近く過ごしていた。


 因みに奏は大変そうだった。

 イケメン故に。


 純恋も遥香も興味なさそうにするけど、奏の顔はかなり整っている。

 僕の顔が中の上くらいだとすると奏は上の中くらい。


 絶世の美男子には程遠いがそれなりのイケメンである。


 奏曰く、中一で初めての告白を受けて、結局今まで(高二まで)に4回の告白があったらしい。

 チッ、リア充め。


 爆発しろ。



 これで彼女ゼロだから驚きだ。

 見た目に違わず(たがわず)真面目である。


 うん?付き合ってないならリア充じゃないって?

 いやいや、告白されたらリア充だろ。


 爆発しろよ。



「あからさまに綾井さんから好意寄せられてるヤツが言っても説得力ないよ」


 読心しやがったな。


 それから、好意のことは知っている。

 流石にあれは誰でも気付く。


 別に僕は最近流行りの恋愛小説主人公の持っている特殊能力であるDNH(鈍感・難聴・卑下しすぎ)は持っていない。

 だから、本人は僕に聞こえていないつもりで言っている数多の賞賛や告白紛いの宣言もちゃんと聞いている。



 それから、もしかしたら額にキスもされているのかもしれない。

 確実ではないが。



 朝起きたら額あたりに知らない魔力の残滓があるのを感じたので、こっそり寝ている純恋を調べたら見事に彼女の魔力と一致した。


 魔力が直接付着するのは血液とか唾液が付いた時くらいしかないが、流石に寝ている僕の額に血液を垂らしたとも思えないので答えは唾液。


 その流れでキスまで辿り着いたわけだが、本当のことはわからない。



 間違いないとは思うが、それを聞くのも野暮だろう。




 それに、聞き方がわからない。


『ねえ、キミさ、僕のおでこにキスした?ねえ?』


 そう聞いて万が一違ったら気まずすぎる。

 それから遥香に殺されかねない。



 故に聞かない判断を下した。


 奏に聞くのは、本当だった時に可哀想だから聞かない。


「まあそれが賢明だと思うよ」


 またもや僕の心を読んだ奏は僕の意見に肯定を示す。


「勝手に読むなよ」


 それに対して僕は拒絶の意思を示しつつも苦笑を浮かべた。


遥香:何で梶原の指示に従わないといけないんだよ。もういいだろ。……え?姉さん何言ってるの?あんなに梶原のこと大切とか言ってたのに、これじゃあ梶原殺されるよ?いやでも姉さんに抱きついて、抱きしめられて、あんなに優しくされたんだから、悔いなく死ぬのかも?それに姉さんの初キスもらうとか万死だし。うん?梶原?助けてって?やだなあ……え?それも言っちゃうの?不味くない?流石に梶原可哀想だな……よし、出原に話移そう。出原、あとはお前がどうにかしろ。


遥香の脳内思考、こんな感じです笑。

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