表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
84/248

2ー67 会いに行こう

「あ」


 突然純恋が呆けた声を上げた。



「どうかした?」


「姉さん?」


「そういえば、私たち未だにクラスのみんなと会ってません!」


 そう言われてやっと思い出した。

 そういえばそうだったな。


「ここでみんなと合流する予定だったじゃないですか!なんで忘れちゃってんですか、私!」


 何忘れてんだ、と頭を抱える純恋。


「姉さん大丈夫。私も忘れてた」


 遥香。

 それはフォローになってない。


「まあ、僕も忘れてたんだけどね」


 そりゃあ二週間以上このメンバーで過ごしたら忘れもする。

 仕方ない。



 しかもこの二週間は特に濃い日々の連続だった。

 あれだけ死にかけて、厄介ごとに巻き込まれて、祝福みたいな綺麗なものを見たら誰でも忘れるだろう。


「勇者たちはどこにいますか?」


「はっ!勇者の皆様は領主の館にあるお茶会室におられます。少々室内が乱れており、急いで直したため簡素になっておりますが、勇者様方に相応しくない部屋という状況は防げたかと」


「別にそこまで気にしなくてもいいんだけど……」


「いえ、そういう訳にもまいりませぬ。貴方様方は大切な客人。それもこの度の戦争に協力してくださる方々。もてなさないわけにはいきませぬ」


「じゃあ、ありがとう」


 素直に感謝を伝えてそちらに向かおうと体の向きを変える。



「……ところで……お茶会室は何処でしょうか」


「……ご存知ありませんでしたか。足どりがしっかりとされていましたのでてっきり知っておられるのかと」


 向きを変えたはいいが、場所は知らない。

 勢いだけはいい優人である。


「俺の本で調べてみる?多分載ってるよ?」


 ひらひらと右手を振りながら奏が聞く。


 そういえば【世界の書(セルノ・アゼイシア)】ってなんでも書いてある本だったな。

 祝福の印象強すぎて忘れてた。


 どうしようかと考えていると


「それには及びませぬ。私がご案内いたします」


 勇者をほったらかしにすると自分が叱られる、と苦笑しながらそう言ってきた。



 因みに今更だが、会話の相手は騎士団の第一軍長である。







 赤いカーペットが敷かれた廊下を5人でゾロゾロ歩く。



 聞いた話によると、ここにきた時は酷かったらしい。


 扉という扉がぶっ飛ばされていて、壁は蜂の巣状態。

 そこら中に死体がゴロゴロしていて壁や床そして天井には血飛沫が張り付いていて地獄絵図だったようだ。




 兵士総動員で死体を撤去。

 それから火葬。

 その後みんなで城全体に洗浄魔法。

 修復関係の魔法が得意な者は家々の修理。


 そこまでやって漸く勇者を入れられる。



 さっき漸く城の本館の補修が完了したようで、一般兵士の殆どが今は別館の補修に勤しんでいる。

 因みに今は昼過ぎ。

 軍がここに着くのが確か二の鐘の頃の予定だったはずだから、およそ

 ご苦労様。



 っていうかさ。

 ほんと、イカれてる。

 住民全員殺すとかありえんだろ。

 なんのためにここを攻めたんだ?


 お金とか?

 あ、もしかしてレベル?




 お金よりもレベルの方がしっくりくる。


 まあ、全部憶測なんだけどね。



 そうこうしているうちにお茶会室に到着する。

 ほんの僅かの面積しかない(ふち)にさえ彫刻がある壁面と比べ扉はえらく簡素で、『扉の枠にピッタリと嵌りさえすれば、装飾はどうでもいい』というような考えが透けて見える。


 これが兵士たちの突貫工事の作品だろう。

 まあ仕方ない。


 見た目よりも効率優先だ。



 急いで作ったせいか、端々に小さな隙間があり、薄暗い廊下に仄かに光が漏れ出ている。

 同じように誰かの声も漏れ出ているが、声が多すぎて何を言っているのかはわからない。




 おそらく補助スキルの全体能力強化を使えば内容も一言一句きっちり聞き取れるだろう。

 LV4にしてまだ聞き取れないということはないはずだ。



 だが!

 ここでスキルに頼って内容を盗み聞くのはなんだか申し訳ない。

 それに聞こえないものを無理に聞くのも野暮だろう。

 必要な情報が聞こえるのなら別だが、どうせ大した情報じゃない。


 それに、僕と同じく、と言うよりも僕より聞こえるはずの奏も聞こえている様子はない。

 聞いてないんだろう。


 まあ、大切な情報があったとして、どうせ奏に聞けば分かる。

 全ての情報が書かれてるんならわからないはずがない。



 だが、例外もあるようだ。

 何故かこの城を落としたヤツのことはわからない。


 もしかしたら自分より強いやつのことはわからないのかもしれないな。




 因みに、正解は竜聖が情報流出を拒絶したからなのだが。




 こちらを一度振り返った第一軍長ユグレイに小さく頷くと扉が開かれる。



 暗かった廊下に光が差し込み、喧騒が届いた。




宙の箱庭の能力がよくわからないという話があったのでもっと詳しく書き直します。

①空間を無数のブロックに見立てる。

②シャッフル。

簡単に言うとこうです。


詳しく書くと、

まず空間をわけて、説明のために空間に1から順に番号をつけます。この時、1の空間をまっすぐ進むと2の空間に着きます。

シャッフルします。とりあえず、3と10の空間を入れ替えたことにします。

本来なら2からまっすぐ進むと3に着くのですが、入れ替わっているので10に着きます。この時周りから見ると、普通に2の奥の空間にいるように見えます(つまり、普通に3の空間にいるように見える)。そして10を抜けるとなんと11に着きます。10の空間をを抜けた部位から順に空間を飛び越えて11に移動する感じです。逆に、11から後ろに進むと普通は10に着きますが、3に着きます。そして、そこを抜けると2に着きます。3を抜けた部位から2に空間を飛び越えて移動する感じです。


これで何ができるのかと言うと、宙の箱庭で3と10を入れ替えて、今、自分が2からまっすぐ進んだ先の10にいるとします。そして、11に敵がいます。周りから見ると剣は届きません。しかし、実際にいるのは10なので、剣を突き出せば11に切先が飛び出ます。

これだけでも強いんですが、当然、敵の背後の空間と入れ替えれば敵の後ろから剣が飛び出ますし、横や上からでも攻撃できます。しかも、入れ替えたかどうかは術者にしか分からないので、敵からは発動したかどうかすらも分かりません。


さらに、防御にも転用でき、攻撃が迫った時に入れ替えれば防御できますし、入れ替え先を敵の後ろとかにすれば敵の攻撃がそのまま敵に帰って行きます。

敵が大技を打った瞬間、その攻撃が敵の背中に直撃、とかもありえるので攻撃抑制にも使えます。


空間転移と何が違うのかと言うと、宙の箱庭は同時に幾つもの空間をシャッフルできます。それから、空間転移は発動からしばらくすると入れ替わった空間が勝手に元に戻ります。ですが、宙の箱庭は術者が解除するか、魔力切れになるまで続きます。


ちなみに、空間入れ替えで敵を切断、とかはできません。入れ替えただけで、繋がってはいるので。なのでうっかり転移範囲から腕とかが出ていても切れません。


最後に、全方位衝撃波とかは防げません。空間は繋がっているので。衝撃波の伝わり方はメチャクチャですが、最終的には届きます。こういう時は空間転移かモノリスでどうにかしましょう。


長文で申し訳ないですが、以上で説明は終わりです。

多分、これ以上詳しくは難しいです。

頑張ってどうにか理解してください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ