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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー61 朝の一コマ

「ん〜」


 朝日が部屋に差し込み、朝を知らせる。


「朝か……」






 一度意識が浮上したら後は速かった。

 すぐに閉まっている窓の隙間から街の喧騒が漏れ聞こえてきて、意識を覚醒までもってくる。


 瞼をほんの少し開けると窓から燦々とした太陽の光が目に飛び込んできた。


「ふあぁ……」


 大きな欠伸をしてから伸びをして体を解す。


 それから違和感を感じて横に視線を向けて………


「……なんで?」


 純恋を見つけた。


 おそらく遥香に作ってもらったであろう薄ピンクのパジャマを着用した彼女が小さな寝息を立てながら眠っていた。


「昨日……なんかあったっけ?」


 そもそもなんでここで寝てるんだ。

 一回叱られたんだからもう純恋もベッドに勝手には入らないと思ったのに。

 なんで遥香も回収に来なかったんだろ。


 ……いや、半分お前のせいだよ


「昨日は……あれ?純恋に怒られて……寝落ちしたのか?もしかして。それで……僕のことが可哀想になった純恋が一緒に寝てくれたってことか?だったら遥香も今日だけわざと見逃した?」



 まあ、そう見えないこともないが。



 それから、別に遥香は見逃したわけではなく、あの後部屋に戻ってから姉の指示通りすぐに寝たから姉が優人と添い寝したことに気付いてないだけだ。


「なるほど。遥香もああ見えて意外と優しいとこあるんだな」


 酷い言い草である。


「次からは辛かったら相談してそのまま一緒に寝てもらおっと」


 2人に謝れ、優人。












「それにしても純恋ってこんな顔して寝るんだなぁ〜」


 奇しくも昨夜の誰かさんと同じことを言う優人。

 でも、最後まで同じなわけではない。


「なんか……アイドル形無しだな………」


 何か嬉しいことでもあったのか、唇が弧を描くように吊り上がっていて、若干涎が垂れている。


「これは……どうするべきなんだ?」


 見なかったふりをするのがいいのか。

 涎をこっそり拭いてあげるべきなのか。


「いや、流石に拭かれたら起きるよな。それで………『何してるんですか優人くん。もしかして私を襲おうと……?』みたいなこと言われて避けられるようになるかも?」




 いや、ここは遥香に任せるべきだな。

 うん。


 ………いや、アイツを起こしたらそれはそれでめんどくさそう……


 絶対怒られるわ、これ。


 同じ轍は踏まない。

 僕はもう学習した。



 僕のスキルは【進化】。

 だったら今だって進化できるはず……!何かいいアイデアが浮かぶはず!


「まずは……取り敢えず起こすか?」


 現状、一番不味いのが遥香に目撃されること。

 いくら添い寝を許可しても、ちょっとでも体に手を出したように見えたらほぼ間違いなく縁を切られる。

 それはまずい。



 取り敢えず起きてもらって、万が一の時は僕の無罪を主張してもらおう。

 所謂、保険だ。




「おい、純恋。起きろ。朝だぞ」


 起きる気配すら感じない。


「お〜い。起きろ〜!もう朝だぞ〜」


 若干、ピクリと身体が震えて小さく寝返りを打つ。


「朝だぞ!」


 ゆさゆさと肩を揺らしてどうにか意識を呼び戻す。


「……もう昼ぅ?…………じゃあこのまま夜まで寝ればぃ…………」



 朝である。



 それから、そろそろ起きてもらわないと計画が破綻する。

 というか、すでに半分ほど瓦解している。


「優人くぅん………大好きぃ……」


「嘘つけ」


 本当である。


「昨日あんなにぃ……」


「は!?僕何やった!?」


 何も起こっていない。

 これはただの寝言である。


「大好きぃ〜」


 こちらは本当である。




「そんなことよりいい加減起きろ!怒られるのは僕なんだぞ!?もう置いていくからな!」


「待ってください!困ります!」



 掛け布団をガバッと押し退けて純恋が飛び起きた。


「あっ……あっ…………」


 それから、声にならないうわ言を呟く。


「なんでもう起きてるんですかぁ!」


 突如として悲鳴を上げた。

 正直言って意味がわからん。



「今日は早く起きて……寝顔を見るつもりだったのに……」


「ああ、そういえば、もうちょっと寝言どうにかした方がいいと思うぞ」


 からかい混じりに一応伝える。


「どういうことですか?」


「いやなに、ちょっと寝言が激しかったか「何言ってましたか、私!?」言ってた言ってた」


 なんと言うべきか。

 まあ、事実だけ言えばいいかな?


「簡単に言えば……『優人くん愛してる♡これからも私と一緒に寝て♡』みたいな?」


 酷い誇張である。



 だが事実を知らず、更に、その言葉に心当たりのある純恋に効果は抜群だった。



「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁ」


 突如として、清々しい日光が降り注ぐ部屋に奇声が響いた。


「ホントですか!?嘘ですよね!?嘘って言ってください!」


「いや、本当」


 半分は嘘である。


 だが、純恋がその事実を知る由もなく、頭を抱えて先程跳ね除けた布団を頭の上からすっぽりとかぶった。

 クラスの人気者としての姿はどこへやら。


「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 直後、本日2度目の悲鳴が聞こえた。



 因みに、後で本当のことを伝えたら本気で殴られた。


 痛かった。











 これが帝国戦の僅か2日前の朝の一コマである。



当初の予定では100話まで毎日投稿の予定でしたが、110話で第二章幻帝戴天が終わるので、そこまで毎日投稿をします!

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