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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー60 私の気持ち

<綾井純恋視点>



 私、綾井純恋は今、梶原優人くんの部屋にいます。





 先ほどまで泣き叫んでいた部屋の主は泣き疲れたみたいで、今はスヤスヤとおとなしく、抱きついた姿勢のまま眠っています。


 いつものしっかり者で私たちを助けてくれる頼れる優人くんも好きですが、今の甘えている彼のことも同じくらい好きです。

 滅多に見れない貴重な姿ですしね。

 超激レアです。

 SSR以上ですよ。



「大好きですよ、優人くん」


 小さく、小さく呟きます。

 寝ている彼には間違いなく聞こえてないと分かってはいるのですが動悸がおさまりません。

 カァ〜と頬が赤く染まるのが自分でも分かります。

 心なしか体温も高いみたいです。




 最近になって漸く気付いたんです。

 私は優人くんが好きです。

 心の底から大好きと思っています。




 でも、だからこそ。


 彼が自己犠牲が前提の計画を考えていると知った時に大いに怒りました。

 大切な人だからこそ、好きな人だからこそ、です。


 自分を大切にして欲しい。

 幸せになって欲しい。


 自己犠牲の果てに私たちを救うことで皆から感謝されるのではなくて、みんなと一緒に笑い合えるようになって欲しいんです。

 幸福を掴んで欲しい。


 そして、あわよくばその時に隣にいるのが自分であって欲しいと思っています。






 彼は皆のために犠牲になろうとしていましたが、彼は十二分に苦しみを背負っています。



 親友が目の前で殺されるなど普通は耐えられません。

 私も、遥香があの時殺されていたら正気ではいられなかったと思います。




 あの時、エルリアのお城で逃げ損ねた私達を助けてくれたのも優人くんでした。

 もし優人くんがいなければ間違いなくあそこで死んでいました。


 一度別れましたが、その後もすぐに再会して今までずっと助けられています。

 ホントに頼りっきりです。



 今でこそ、そこそこ強いですがそもそもの話、彼がいなければこんな速度で強くはなれません。



 さっき、優人くんは私にありがとうと伝えようとしていましたが、本当は感謝すべきなのは私達の方です。


「本当に今までありがとうございます、優人くん。それから、どうかこれからも側にいてくれると嬉しいです」



 一言感謝を伝えてから、優しく頭を撫でる。



 今日まで気付いていませんでしたが彼の心は磨耗し続けていたみたいです。

 いつ壊れてもおかしくないくらいに弱っていました。


 バランスボールの上に乗っているような状態です。

 運良く均衡が取れていたおかげで未だに崩れていませんでしたが、文字通り、いつ倒れてもおかしくない状況でした。


 古宮くんの死だけではありません。

 優人くんにはその前に負った心の傷もあります。




 長く彼は苦しんでいたと思います。

 だから、今度は私が優人くんの心の穴を塞ぎます。


 彼の心の支えになります。

 なってみせます!


 もう彼に理不尽がないように、彼を支えてみせます!





 そんなことを考えながら、純恋は今まで使っていた真実の魔眼を止める。



 このスキルは元々読心スキルと嘘耐性が混ざって真実の魔眼になったんです。

 当然、読心もできます。


 時々不自然な行動があったので、何かあるのかもしれないと前々から思っていたんですが、今日の祝福で精度が上がったので、その時こっそり調べたんです。


 その結果がこれです。



 悪いことをした自覚はあります。

 でも、


「それでも……気付けてよかったです」


 取り返しがつかなくなる前に止められたことに安堵の息を漏れます。



 その時、ドアがゆっくりと開いて遥香の声が聞こえた。


「姉さん?終わった?」


「終わりましたよ。もう少しこのままでいようと思うので先に寝といてください」


 そう言った時、ドアがさらに押し開けられ、彼女の顔が見える。


「っ〜〜〜〜!」


 優人くんが抱きついている今の状況に思うところがあるようで声をあげそうになっていましたが、私が人差し指を口の前に添えて、しーっと伝えると渋々といった感じの表情を残して出ていきました。






 遥香は外で防音をしてくれていました。

 遥香が外で協力してくれているとわかっていたからこそ本気で優人くんと話せたんです。



 後で何かご褒美でもしないといけませんね………


 そんなことを考えていたらゴソゴソと動いていた優人くんゆっくりと重力に従ってベッドに倒れました。

 抱きしめられていた私も同じように一緒に倒れます。


 倒れても優人くんが起きる気配はなく、未だに小さな呼吸音を立てています。



「優人くんってこんな寝顔なんですね……」


 前に寝た時は私の方が先に寝てしまいましたし、朝は私が起きた後すぐに優人くんも起きてしまったので殆ど顔を見れませんでした。


 あの時は優人くんも積極的でしたからね……


 あの時は必死で平静を装いましたが内心、心臓バクバクでした。

 男性にいきなり抱きしめられてドキドキしない女性なんていません!



 それにしても、やっぱり……


「寝ている時は可愛いですね……」


 憑き物が取れたかのように本当に穏やかな寝顔を浮かべる彼はとても幸せそうな笑みを浮かべていました。

 ひとしきり泣いてから寝たのがよかったのかもしれません。


 本人に内緒でこんなことを言うのもなんですが、本当に可愛かったです。

 写真でも撮っておきたいくらいです。


「この顔を知っているのは私だけ……ですか」




 すっごい背徳感ですね。


 ……でも本当に私以外誰も見てないですよね。


 一緒にいる遥香でさえもこの寝顔は見ていないはずです。

 迷宮で倒れていた時は苦しそうな顔を浮かべていたのでノーカンです。


 ノーカンなんです!





「そういえば……あの時膝枕もしましたね」


 あれ?もしかしたら私が初めて優人くんに膝枕をした人ですか!?



「だっ、だったら……優人くんと一緒に寝たの私が初めて……?」


 そうに違いありません。

 だったら優人くんを抱きしめたのも優人くんに抱きしめられたのも……



 もちろん、家族の方はノーカンです。





 みるみるうちに背徳感が大きくなっていきます。


「し、仕方がないですね!今日も私が一緒に寝てあげます!」


 わざとらしく大声でそう宣言した純恋は、自分と優人に布団を掛ける。



 明日は早起きして寝顔を見ましょう。

 こんな顔は一緒に過ごしていても滅多に見れませんからね。

 それに、他のみんなが合流してしまったら一緒に寝ることなんてできるはずがありません。




「べっ、別に私が一緒に寝たいわけではありません。優人くんが周りを気にするせいで私を誘いにくくなると思っただけです!」



 自分を諭すようにそう言ってから、もう一度しっかりと寝顔を脳裏に焼き付ける。



 なんだか眠くなってきました。

 これ以上は起きれそうにありません。


「おやすみなさい。優人くん」


 一度言ってみたかったこのセリフを言います。


 そして、最後にもう一つ大仕事があります。

 今日1日の最重要任務です。


「ふぅ〜」


 一度深呼吸をして呼吸を整えます。

 とても緊張しています。

 生まれて1番の緊張かもしれません。



 覚悟は随分前から決めています。


 今日を逃したら次いつできるかわかりません。

 絶好の機会である今日を今更諦める気はさらさらありません。




 ゆっくりと顔を近づけて優人の頬に両手を添える。


 それから




「んっ……」


 そっと、額に唇を落とした。



爆発しろ!リア充め!!


……なんてことは思っちゃいませんよ。ええ、作者ですから。キャラの幸せを願うのは当然のことです。ええ、決して羨ましいなどとは思っていないのですよ。ただちょっと、いいな〜と思っただけで、別に羨ましいわけじゃありません。

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