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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー57 邂逅

 料理に手をつけて僅か15分後。



 目の前にあった肉料理は綺麗さっぱり無くなっており、テーブルには野菜が乗った皿だけがちょこんと置かれてあった。


 3人とも視線を飛ばすだけで誰も手を出さない。


「遥香……食べたら?」


「お前が注文したやつだろ」


「いや、遥香が野菜もあった方がいいって言ったじゃん」


「私じゃなくて姉さんだけど、まあ許したげる」



 野菜が減る気配はない。

 残すのも手ではあるが、基本的に日本より貧しいこの世界で食べ物を残すのは憚れる。


 こう言うところで日本人の『もったいない』精神が邪魔をする。




 結局、僕らが出した結論は……


「召喚・テスカ」



 野菜を食べられそうな応援を呼ぶことだった。




 側から見れば魔物が店内で放し飼いされてる状態なんだから見られない方がいい。

 ちょうど3人の影になっていて周りからは見えにくい場所に召喚する。


 それから野菜がこんもりとのった皿を静かに持ち上げてテスカに渡そうと思って影に佇む魔物の口元に皿を近づける。


 次の瞬間、見えない手のようなものが野菜を掴んで一気に口内に放り投げる。

 おそらくテスカがエネルギー操作で作った擬似的な手だろう。




 僕らを1時間もの間苦しめた野菜たちはものの10秒で消え去った。




 ***




 店を出た僕らは宿に向かって歩く。

 途中で少し小路地に入って、一旦帰していたテスカを再召喚する。



 光が溢れ、影が見えた。

 マジックバックに仕舞っていたランプの魔術具を取り出して、ランプの上部にある魔石に魔力を注ぐことで明かりを灯す。


 真っ暗闇だった裏路地に光が走り、僕らの姿が鮮明に映るようになる。



 ここにテスカを呼んだのはさっきのお礼を言うためだ。

 腰を屈めてランプを地面に置く。


 下げられた光源に映ったのはーーー





 真っ赤に染まった魔獣だった。


「……え?」


「「きゃあぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」」


 夜の帳が降りきっている暗い街の裏路地に2人の悲鳴が響いた。



「っていうか、お前ってそんな可愛い悲鳴出せるんだな」


「うっさい!黙れ!」


 もっとおっさん臭い悲鳴出すのかと思ってたわ。

 割とマジで。


 あんな高い声出るとは思わなかった。




 ***




 魔獣だったと言ってもテスカしか呼んでないんだからテスカ以外にあり得ないわけで、消去法でテスカに決まる。




 真っ赤に血塗られた飼い犬ならぬ飼いテスカ。

 ホラーじゃんか。


 悲鳴を上げるのも頷ける。



 大方、自分の食糧のために魔物でも倒した時に呼び出されたんだろう。


 理由を理解してもまだ怖い。

 今日は悪夢だな………



「テスカ。さっきは助かった」


 頭を撫でて取り敢えず労う。


「いいのである。我は主にテイムされた魔獣なのである。主のために働くのは当然なのである」


「それでも助かった。また困った時は頼む」


「主は食べられるものを頼むべきだと思うが?」


「うっ………」


 ぐうの音も出ない。

 完璧な正論。



 いやぁ……自分の従魔に説教される日が来るとは思わなかったな。

 こんな小さな子に叱られたら無視するわけにはいかない。


 そう考えながらもう一度頭を撫でる。






 そこで声が路地に響いた。




「従魔に嫌いなものを食べてもらうのもそうだけどさ、街に無許可で従魔を入れるの止めない?」


 地面から約50センチほど上空に人が浮かんでいた。

 焦茶の髪で、身長は……170センチ……もうちょっと高いか?

 でも、そのくらいはある。



 穏やかな微笑を浮かべて地面に降り立った彼に問い詰めるような言葉がかけられる。


「は!?おまっ……いつから!?どうやって!?」


「今来た。勇者っぽい魔力の流れが見えたからね」


 飄々とした態度で遥香の問いを受け流す。




 遥香が言うのはおそらく、魔力探知をずっとしてたのに気付かなかったということだろう。


 今も、この至近距離で魔力が見えない。



 少年は異常だった。

 いつでも戦闘に移れるように全身に魔力を行き届かせ、腰を落とす。


「敵意も害意もないから。取り敢えず、自己紹介するよ……名前は出原奏。ロルニタ帝国で召喚された勇者の1人で帝国を裏切ることができた唯一の勇者さ」


「裏切った?」


「そう。何故だか洗脳が解けてね。俺だけ逃げれたってこと」


「でも証拠がないだろ。せめて僕らが信じれるような何かを見せて欲しいんだけど?いきなり後ろからナイフでブスってされるのは御免だし」


「だったら、私の【真実の魔眼】を使ったらいいんじゃないんですか?」


 なるほど。

 君は5%の賭けがしたいと。

 で、5%を信じると。

 なるほどね。


「正解率5%じゃん……」


これで示された真実はむしろ嘘だと判断した方がいい。


「あっ………」


 どうやら確率の話はすっかり頭から抜け落ちていたらしい。

 こういう感じのポンコツさが純恋らしいっちゃあ純恋らしいんだけど。



「だったらこれならどう?……【世界の書(セルノ・アゼイシア)】」


 彼の掌に魔力が集積される。

 集まった魔力は光の粒となって仄暗い道を照らし、神秘的な光景を映し出す。


『夜』という時間帯が特別感をより一層引き立てた。



 魔力は徐々に本の形をとり、空に向けられた左の掌の上に影ができた。



 斯くて一冊の書物は召喚された。


彼は結構重要キャラです。

スキルも普通に強いし。

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