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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー54 その頃の帝国

<元勇者・天野竜聖視点>



 新たな生を得てから2日。

 現在、自身の身体能力は召喚直後の時点、つまり男子高校生の平均的なところまで回復した。


 生後2日とはいえ、一度成長した経験があるとその分成長も速い。


 速くなかったらマズいので特段嬉しいわけでもなく、どちらかというと安心が心の大半を占めていた。



 世界への復讐をつい先日誓ったわけだが、脱出しないことにはどうにもならない。

 というわけで48時間考え続け、魔力を無駄に浪費しながら何とか()()()()を突き止めた。



 その場所というのが魔力の発生源。


 ここには国民からこっそり徴収した大量の魔力が保管されており、あらゆる魔術具に自動で魔力を供給し、作動させている。

 つまり、無人の管制塔だ。


 本来、城にこんな施設はない。

 どころか国民から魔力を徴収することすらもない。


 理由は簡単。

 そもそも国民の魔力を徴収しなければならないほど魔力を馬鹿喰いする魔術具など置いてないから。




 ただ、この国ロルニタ帝国は違う。

 ここで運用されているのは過去の竜聖が作った魔術具の数々。


 そのほとんどが強すぎる力を持っているが故に、魔力を馬鹿喰いし、とても帝室だけでは魔力を賄えない物ばかり。

 しかし、止めるわけにはいかなかった。


 使われているのは洗脳の古代魔術具アーティファクト・ファレインタルムをはじめとする数々の重要魔術具。

 この国基盤と言っても過言ではない魔術具たちだから、止められない。


 この国が軍事一辺倒な動きを続けられるのも洗脳によって自在に国民を操れるから。

 これが止まればあっという間に国は崩壊する。
















 だからここを一旦止める。






 ここには竜聖を閉じ込める牢にスキル使用不可の呪いをかけている魔術具もある。

 昔に培った魔力探知能力をフル活用して何度も何度も確かめた。



 失敗はできないから。



 ここは今は誰にも気づかれていない。

 ここのことは今の人たちは忘れている。


 でも見張りでもつけられたらおしまい。



 だから一度きりのチャンス。



 スキルを行使する。

 普通はできない。


 でも、方法がある。


 死ぬ直前に作った最後の創造品である特殊な魔法陣を描く。


「代償。10年の寿命」


 それが代償魔法。

 釣り合いが取れるものを代償に捧げることで願いを叶える魔法。


 前回はあらゆるものを代償に命とスキルを得た。


 今回は、


「取得、無限の魔力」


 これでも足りない。

 だから時間制限を設ける。


「制限、1分」


 1分間の魔力無限タイム。

 まずするのが、魔力の放出。


 全身から魔力を放出し、スキル阻害の魔術具から発せられる魔力を相殺する。

 魔術具の効果を外す方法は効果を発している魔術具に大量の魔力を叩きつけること。


 放出すること約50秒。

 一瞬魔術具の効力が薄まった。


 これ以上は待てない。

 魔力が途切れた瞬間僕が負ける。


 だからここで勝負に出る。


 拒絶するものはもう決めている。


「魔力の拒絶っ!!!」


 瞬間、魔力が一瞬消えた。


 だからすぐに部屋を出る。

 牢の入り口は魔力障壁。

 だから容易に脱出できた。



 自分の魔力も無くなるんだからスキルを使えるのは一瞬。


 でも予想通り。

 障壁の外ではスキルが使える。


 すぐさま【拒絶】を解除して魔力を元に戻す。


『スキルの行使によってレベルが上がりました』


『LV1→LV9』


 無情な声が脳内に響いた。

 一応、誰かを殺さなくてもレベルは上がるらしい。

 だがやはり、誰も殺していないのでレベルの変化がものすごく緩慢だ。



 1分はすでに経っていて魔力無限のボーナスタイムは終わった。

 今の魔力量は少ない。




 でも計画通り。


 ここは秘密の実験場。

 そうそうバレることはない。


 唇を釣り上げて小さく笑った。

 奥の扉を開けて次の部屋に進む。




 奥にあったのは知っている部屋だった。

 研究室。

 通称ラボ。



 ……いや、そのまんまか。

 通称じゃないか。



 いくつものガラスケースが置かれ、様々な機械が動いていた。

 流石に幾星霜を経た今では活動を休止しているが施設の設備だけは今も健在で、使える状態で置かれている。


 別に今から何かを研究するわけではない。

 たとえ機械があっても使い方がわからないのだからできない。



 目的はその動力源。



 動力源は当然魔力。

 近くの戸棚の中に保管されていた魔石の中から手頃な大きさのものをいくつか手に取ると魔力の供給場所に押し当てた。

 1秒も経たないうちに魔石が白く染まる。



 ちなみに白く染まる理由はこの機械に時と命を司る氷の魔法陣を敷いているから。



 白一色に染まった魔石を隣に置いて、二つ目の魔石にも魔力を込める。


 三つ目まで染めた後、魔石を抱えて部屋を出た。

 これ以上魔石を持つといざという時の対処ができない。



 魔石を抱えたまま別の扉を開け、その奥の研究者たちの寝室が立ち並ぶエリアを素通りする。


 目的の場所はその奥。

 最後の扉を開けるとそこには一つの小部屋が。


 今までの部屋は魔術具によって壁や天井が光を放っていたがこの部屋には一切の光源がない。

 純粋に真っ暗な部屋。


 ここは来たことがある。

 だから使い方は知っていた。


 床に手をついてゴソゴソと部屋の中心を探り、そこに魔石を全て置く。


 床に魔法陣が浮かび上がり、それが強い光を放つ。

 転移用の風の魔法陣。

 通称、転移陣だ。


 風の魔法陣を作るには風の属性が必要だが、使うのは風属性を持っていなくても問題ない。

 そのまま氷の魔力を吸い込んでいく。



 魔石が白から元の透明に戻るのを目端で見ながら自分も陣に乗る。


 三つ目の魔石の半分くらいまで魔力を吸ったところで吸収が止まり、陣全体から青の光が立ち上る。


 一瞬の浮遊感と共に視界が青一色に染まり、次の瞬間小さな小屋の中にいた。



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