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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第一章 ようこそ、異世界へ
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1ー6 刀の条件

 翌日、男子の半数近くが寝ぼけ眼だった。

 相も変わらずスキルやら魔術具やらについて夜遅くまで話し合っていたらしい。


「おはよー」

「うん、おはよう」


 次々と食堂へ降りてくるクラスメイトと挨拶を交わす。カウンターでパンとスープを受け取り、席につく。


「おはよう、優人。いい朝だね」

「ああ、おはよう」


 席で挨拶を交わすのはお馴染みの蓮斗。


「眠そうだな。いつ部屋に戻ってきたんだ?」

「んー、多分3時くらいだと思うけど、正確にはわからないな。時計ないし」


 一応、ステータスボードに書いてあるのだが、表記が違うため読みにくくて読む気がしないのだ。


 深夜に眠りにつき、6時という早朝に起きる。

 そんな生活を送っていながらも親友の声には今日もハリがあった。


 ところで、この世界の時刻は鐘の音で知らされる。

 王都の鐘はとにかくうるさい。

 早朝から一定時間ごとに街中に響き渡るせいで、夜更かしした頭には最悪の目覚まし時計だ。



 軽く談笑しながら食事を終える。

 話の途中に聞いたのだが、蓮斗のスキルは【透過】という力らしい。

 文字通り、なんでも透過するスキルとのこと。

 強いスキルというより、便利スキルなように感じた。

 少なくとも【進化】よりはいいスキルだろう。


 訓練のことを考えながら、席を立つ。


 その時、バンッと大きな音を立てて勢いよく扉が開き、奥から銀の鎧に身を包んだ騎士が入ってきた。

 その音に驚き、その拍子に持っていたスープの皿が跳ねて服にシミができた。

 少しだけイラッとしながら、優人はその元凶をジロリと見つめた。


 顔に皺はなく、30代近くのように見える。

 両脇に部下と思われる騎士を二人連れており、年齢の割に身分が高そうだ。


 男は扉の前で一礼すると口を開いた。


「やあ初めまして、勇者の皆様!俺は───」


 そう言った後、一度ゴホンとわざとらしく咳払いをした。


「失礼、私はエルリア王国で騎士団長を勤めているジェラルド・トレス・エイブ。以後お見知り置きを。今日の訓練は三の鐘から始まります!!場所は第二訓練場、わからなければ城の騎士にでも聞いてください!では!!!」


 彼は無駄によく通る大音声で簡単な挨拶と伝達事項を伝えると口を閉じ、もう一度礼をすると足早に部屋から去っていった。


 突然のことで、誰も口を挟めなかった。

 クラスメイトはチラチラと周囲の反応を伺っている。


 蓮斗の視線は優人に向かっていた。


 ……僕に聞かれても。


 優人は心の中でそう呟いた。




 ***




 朝食を終えた後、優人は早めに訓練場にやってきた。

 特にやることもなく暇だった上、この世界に来てから部屋に篭りっぱなしで、少し運動がしたい気分だったのだ。


 蓮斗と一緒に来ようと思っていたが、蓮斗は蒼弥ともう少しスキルで遊びたいと言っていたため今は一人だ。

 召喚された時に、部屋でスキルを使うなと言われた気がするが、気のせいだろう。


 ちなみに蒼弥、こと九重蒼弥は優人のもう一人の友人である。


「もう誰か来てたりするのかな」


 ……西田あたりは運動好きだったはずだけど……最近はスキルに興味津々だから来てないかもな。


 訓練場に着くと、数人の騎士がジェラルドの指示のもと、大量の武器や防具を運んで、並べていた。

 並べているだけだが、騎士たちは全員杖を振って自在に武器を動かしている。

 優人は訓練場の入り口で棒立ちになってその不思議な光景に見入っていた。

 地面には初めて見る魔法陣が刻まれており、青の光を帯びている。

 そして、その中から次々と訓練用の武器と思われる物が飛び出してきた。


「すごい……」

「魔法を見るのは初めてかい?」


 突然隣から声がかかった。

 突然のことに驚き、思わず優人は飛びずさった。


 それを見て声の主は軽い笑いを浮かべた。

 彼は改めてジェラルドと名乗ると、魔法を見るのは初めてかと僕に問うた。

 

「いいえ、スキルは……」


 そう答えようとして、ふと疑問を抱いた。


「魔法、ですか……?」


 スキルの別名だろうか?


 初めて聞いた魔法という言葉が引っかかった。


「そう、魔法だ。選ばれた者だけが使えるスキルと違い、学べば誰でも使える汎用的な技術だよ」

「じゃあ、あの人たちが使ってるのは……」

「全員魔法使いさ。基本的にスキルは勇者の特権と思っていい。だが、威力なら君たち勇者のスキルの方が上だ」


 ということはスキル鑑定の時公爵が使ってたのは魔法か。


 勇者と同等の力を持つ者が沢山いるなら、なぜ僕らが呼ばれたのか。

 その疑問が少し晴れた気がした。

 やはりスキルは特別なのだ。


「だが、君はここに座学をしに来たわけではないだろう?」


 もう少し聞いてみたいことがあったが、確かに、と優人はジェラルドの言葉に納得した。

 座学は後でやってくれると聞いている。

 今は体を動かそうか。


「この世界に来て外に出てなかったので少し運動したいな、と思いまして」


 ジェラルドが頷く。


「なるほど、姫君から聞いたと思うが、使いたい武器は考えてきたかい?ほとんどの武器は揃っているからね」


 そう言われて、優人は兼ねてから考えていた武器を伝える。


「刀ってありますか?」

「刀か。……カタナというと、君たちの世界にあるという片刃の剣かい?あるにはあるが……剣じゃダメなのかい?」

「刀がいいです。理由を聞かれたら困るんですが……強いていうならロマンでしょうか?」

「ロマンが私にはよく分からないのだが、少なくとも簡単には渡せない。刀は過去の勇者が作ったいくつかしかない。それに振り方が違うから他の勇者と違う訓練をしないといけない場合がある」


 確かに、西洋の剣と刀は重心が違うという話を聞いたことがある。

 他にも斬り方にも差があるとか。


 だが、せっかくチャンスがあるなら手放したくはなかった。


「簡単には、ということは何か条件を満たせば使わせてくれるんですか?」

「……まったく、頭が切れる子だ。だがそうだな、すぐ飽きられても困るから……」


 そう言って彼は手のひらを地面に翳した。

 するとその手に短めの杖が召喚された。

 杖全体に青い波のような物が描かれている意匠で、かなり特徴的なものだった。


 迷うことなくジェラルドは杖を振り、その動きに合わせて地面に紋様が刻まれていく。

 最初に円を描き、その中に複雑な記号を付け加えていく。

 描き終わると模様が光り、青く輝いた。


 するとジェラルドは魔法陣に腕を突っ込み、そしてすぐに引き抜いた。

 腕を引き抜いた時、彼は木刀を握っていた。


「取れ。そして少し手合わせをしろ」

「手合わせですか……?」

「訓練が始まるまでに私に一撃入れてみろ。一撃入れてなお使いたいと思っていれば訓練してやる」


 それを聞いて、優人は頬を引き攣らせた。


「手加減してくれますよね……?」


 騎士団長を名乗る人物の本気に僕が耐えられるとでも思っているのか。

 確かに木刀を振るった経験はあるが、ジェラルドに一撃入れる自信はない。


「何を言う。手合わせで手加減してどうするんだ。もちろん木の槍を使うから安心するといい」

「木でも骨折とかしませんか?」

「なんだ、怪我が心配なのか。安心するといい。そこに用意した回復薬で骨折程度すぐ治る」


 骨折程度、か。


 足がすくむ。


 骨が折れる音を想像して、背中を冷たい汗が流れた。


 怖い。

 帰りたい。


 でも、逃げてはいけないと心が叫ぶ。


 やっぱり普通に死が隣り合わせの世界なんだろうな。

 気を抜けばあっという間に命は散って、何も成せないまま死んでしまう。

 そんなのは嫌だ。


 強くならないと。

 骨折を恐れてたら強くなんてなれない!


 ……やってやるよ。


 優人が顔を上げる。

 瞳は決意の色に染まっていた

 その表情を見て、ジェラルドは目を見開く。



「受けて立ちます」

「それでこそ勇者だ」



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