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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー50 ゼレニグム商会

 店内に入ってからは完全に別行動をと……ろうとしたら純恋に一緒に行動するように言われた。

 なるべく意識しないようにしているが男子が自分だけと言うのはどうにも落ち着かない。

 隣に遥香がいるおかげで二人きりにならないのがせめてもの救いか。


 ん?……でも遥香も女子なのか。

 なんか、遥香がいたら男子が自分だけって感じしないな。


「別に一緒じゃなくてもいいんじゃないか?」


「だって男の子とのお出かけは初めてでしたし……どんな感じなのかなって気になりましたし……」


「今経験しなくても良くない?」


 しかも相手が僕じゃなくてもいいのでは。


「善は急げです」


「一緒にいても役にたたないと思うけど……」


「一緒にお出かけして、一緒に服を選ぶと言うのが大事なんです」


 もはや恋人のデートである。

 ただのクラスメイトとすることではない。


 そのことを伝えると、


「へっ…えっ、いや、あのっ……」


 すぐに顔を赤くして視線を逸らす。

 こんなにからかいがいのあるヤツはなかなかいない。


 そんなことを考えていたらいきなり腕に痛みを感じた。


 そちらを見ると、腕から木が生えていた。

 まじで(ほっそ)い枝だけど。



 ……木の枝貫通してんじゃん。

 誰がやったかはわかるけど。


 そっぽを向く遥香にを軽く睨む。

 なかなかどうして、大胆なことをする。


 何かされるとは思っていたがまさか腕に風穴が開くとは思っていなかった。

 周りに飛び散った血は遥香の【創造】の素材に指定することで完全にマジックバックに回収されていた。


 ……しれっと何僕の血取ってんだよ。


 普通に考えて、あとで血を使った創造スキルでも使うんだろう。

 大方、血を試したかったけど自分の血をとる勇気はなかったってところか。


 実際のところ、目的は純恋と仲良く話す優人への牽制である。



 既に自己治癒の補助スキルは発動していて、風穴はもうほとんど塞がっている。


 日本にいた頃は考えられなかったが、このくらいはじゃれ合いの範疇に入る。

 強くなるにつれてこのじゃれ合いがエスカレートするのが怖い気もするが、その時はその時だ。




 今いるのは女性用の服売り場。

 周りの視線が痛くてしょうがない。


 二人はさっきの話が嘘だったかのように夢中で服を選んでいる。


 初めの方は適当に意見を言ってみたり感想を言ってみたりしていた優人だが二人が自分の世界に入り込んだ後は暇になって新技の開発を行っている。

 まあ、そう簡単にできるものでも無いから気長に魔力をこねくり回すしか無い。


「……ん」


 最後に作った技は確か【モノリス】だった気がする。

 確かエラティディアに負けそうになって咄嗟に作ったんだよな。

 奇跡とかはあんまり信じない(たち)だがあの時ばかりは奇跡を信じた。


「ゆ……ん」


 あれは【宙の共鳴】と【宙の箱庭】の合成術式だったはずだ。

 空間を捻じ曲げ圧縮する【宙の共鳴】と別の空間同士を直接繋げる【宙の箱庭(そらのはこにわ)】を合わせた結果できたのが【モノリス】。

 簡単に言うとベクトル操作。

 空間を歪めて力の向きを変えることで最小限の力であらゆる攻撃を受け流す防御特化の技。

 しかも力の向きに干渉するから、衝撃波のような全方位攻撃にも対応できる。


「ゆう……くん」


 あれさえあれば敵味方の見境なく攻撃してしまう【宙の共鳴】をどこでも使えるようn………


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」


「うわあああああっ!!」


 突然耳元で声が響いた。

 別にそこまで大きな声じゃ無い。

 それでも結構びびった。

 心臓の動悸がおさまる気配がない。



 情けなく尻餅をついた状態で横に視線を向けると悪戯っぽく唇を釣り上げる遥香が。

 女子に耳元で囁かれたというのに、ただただ顔がうざい。


 もう一度いう。

 殴りたいくらいに顔がウザい。


「おっ、おまえっ……何してんだっ!」


「息上がってるよぉ〜そんなんで帝国に行けるのかな〜」


「知らね。もう魔物からも守ってやんねぇ」


「ちょっ、ちょっと待って。ごめん、すまん。メンゴ」


「許さねぇ」


 よくもあんな醜態を。


「優人くんごめんなさい。優人くん、声かけても一向に気付いてくれないので……」


「……ごめん。気付かなかったのは悪かった」


 でもまあ純恋が言うなら許してやらんこともない。


「なんでだよっ!私の謝罪を返せっ!」


 あれ……謝罪だったのか。

 知らなかった。




 ***




「どうですか?この服」


「似合ってる。完璧だ」



 どうやら試着をしたらしい。

 純恋が選んだのは若葉色のワンピースタイプの衣装。

 見た感じ、大きな商会の娘といったところだ。


 露出は少なく、袖も長め。

 今の気温は春なので今の季節にぴったりの服だろう。

 色合いが穏やかで『清楚』という感じが純恋自身の雰囲気にぴったりだ。



 因みに、季節は日本と同じように回っているらしい。

 ここの気候はちょうど日本と同じく、四季が周っている。

 どうでもいいことだが、体調は崩しにくいだろう。


 崩したところで【浄化】があるから、だからどうしたといった感じなのだが。



 顎に手を当てて少し考え、近くにあった水色っぽい色のワンピースを純恋に当てて雰囲気を見る。

 似合っている。


「て言うか、どれ着ても似合うか」


「え?いや、これ買います」


「いいのか?他の見なくて」


「そろそろ優人くんも飽きてきたでしょう?」


 まあ、スキルに思いを馳せるくらいには。


「次は優人くんの服です。あちらのようですよ」


「一着だけだと困るだろ」


「いえ、優人くんが見ていない間にもう何着か買いました。置く場所がマジックボックスしかないのでそんなにたくさんは買えませんでしたが。……って言うか全然見てくれてないじゃないですか!女の子とのお出かけで相手の女の子の事以外のことは考えちゃダメなんですよっ!」


「すまん。スキルについて考えてた」


 ついた瞬間からスキルを(いじ)ってた。


「はあ……優人くんにはこれから着せ替え人形になってもらいますからね」


「ははは………何なりと」


優人の今回のお出かけにおける自分の役割認識は荷物持ちです。

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