2ー48 神殿
受付嬢に神殿の場所を聞くと、待ってましたとばかりに丁寧に教えてくれた。
ギルドであんな質問せずにさっさと出て行けと言うふうに外まで案内された。
……まあ、この世界では子供でも知っている一般常識を聞こうとした僕が悪いとも言うんだけど。
外に出てからギルドで説明通りに道を歩く。
とは言っても道を歩くだけでなにかの異世界イベントが起きるわけもなくそれから、道に迷うこともなく神殿に着いた。
さすが第三都市というべきか、区画整理が完璧でわかりやすかった。
ここの道はパリのように放射状に伸びている。
その中心にあるのが城である。
そして神殿の位置はといえば、平民の住宅街と貴族街の間である。
ちょうど二つの住宅街を仕切る城壁にめり込む形で作られており、平民も貴族も立ち入れるようになっている。
ただ、やはり平民に差別意識を持っている貴族もそれなりにいるので、貴族達の来訪は多くないようだ。
(まあ、異世界ファンタジーの小説読んでも平民に差別意識を持ってない貴族なんてかなり稀だからね)
やはり、この世界でも平民に差別意識の少ないフェルテは異色の貴族だ。
そんなことを考えているうちに神殿に到着する。
イベントがなかったのでものの10分で到着した。
「チッ。もうあと5行くらい行数稼ぎたかったな」
「作者の声みたいなのを漏らすんじゃねえ」
こういう時にツッコミを入れてくれるからいいよね。
遥香いなかったら泣いてたかも。
神殿はとにかく白一色だった。
壁面も、扉も、階段もとにかく真っ白。
汚れひとつないからおそらく洗浄の魔法でもかかっているのかもしれない。
正面には長い階段があり、入り口は3階くらいの高さにある。
面倒だったので全部空間転移で飛ばした。
見た目は完全に神殿。
ザ・神殿みたいな感じ。
……まあ、神殿なんだからそうじゃなきゃ問題なんだけど。
ここの写真をとって地球で見せて100人に聞いたら99人が神殿と即答するだろう。
残りの一人は城と答える。
扉を開けると中では一人の男が奥の祭壇で祈りを捧げているようだった。
……これって祈りの時間だから祈ってるのか?それとも一日中祈ってる?一日中だったらヤバくない?そんなにここって暇なの?
疑問に思った聞いてはいけない気がして心に留めておく。
「今日はどうしましたか、皆さん」
柔和な笑みを浮かべて神父が歩いてくる。
彼に要件を伝えるとすぐに頷いて別室に案内された。
「適性を測りたいとおっしゃられる方は多いのですよ。適正の数によって冒険者に中でも役割が変わってきますからね」
例えば魔法をほとんど使わない戦士や盾者、その真逆の魔術師、ヒーラー、付与術師などだ。
適性が少ない人が魔法役職についても力にはなれない。
こういうのがあるので神殿の適性検査は重宝されるらしい。
指示に従って透明な円盤状の魔術具に手を置く。
すると円盤がいくつかの色に染まり、円グラフのようなものを描く。
神父はそれを一瞥したあと、純恋と遥香にも同じように指示を出す。
最後に何かを書き込むと
「適正の検査はできましたが結果はどうしますか?自動で適性を更新する魔術具もありますし、普通の鉄の板に結果を刻むこともできますよ」
ここは3人とも魔術具を選んだ。
少し金額が高かったがさっき換金してもらった僕らにとっては普通に払える額だった。
それを聞いた神父がどこからか魔術具を取り出してそれに魔法陣を重ねてから詠唱すると銀色の板に文字が刻まれていく。
3枚ともに文字を刻み終えると僕らに向かって丁寧に差し出す。
「御三方とも素晴らしいですよ。ここまで適性が多いのは久しぶりです」
なんかさっきも似たようなことを言われたな。
板に視線を向ける。
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【梶原 優人】
空
空間
再生
成長
秩序
記憶
守護
癒し
氷
闇
星
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【綾井 純恋】
光
情熱
成長
水
導き
空
慈愛
花
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【綾井 遥香】
夜
変化
生命
雷
遠見
霧
創造
芽吹き
子授け
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適正の数は加護の数。
加護があるとその神が司る事象への干渉力が高くなる。
また、追加で効果を得られる。
星神に加護に魔力の増加速度上昇があったように。
神父によると主神の加護持ちは滅多にいないらしい。
まあ、ここに3人もいるんだけど。
僕たち3人にあるってことはおそらく勇者はなにかしら主神の加護を得られるのだろう。
ちなみに、主神の加護があればその眷属神は全員加護をくれる。
だから実際の加護の数は表記よりもだいぶ多い。
ここで加護が多いことがわかるのは幸先がいい。
時刻はすでに夕方。
明日は休養。
明日のことに思いを馳せながら帰路に着いた。
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スキル・【進化】の進化条件を一つ満たしました。
進化条件『闇の神の加護を得る』
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『本好きの下剋上』を読んだことのある人はちょっと分かりやすいかもしれません。神様の設定は本好きの下剋上に割と似ています。なぜなら作者が本好きのファンだからです。