2ー41 成長
まず最初に倒れたのは純恋だった。
いきなり【宙の箱庭】の操作が難しくなったかと思うと、次の瞬間には破壊されていた。
おそらくスキルで魔力操作に干渉して壊したんだろう。
そして、天魔反鉾の操作には結構な魔力が必要になる。
魔力が少なくなり、鉾の操作が鈍ったことを看破され、『ギアを上げる宣言』の直後にダウンした。
単純に殴られてダウンした。
結界なんてちょっと触れただけで壊され、鉾の上からパンチを喰らってぶっ飛ばされた。
そのパンチを放ったのはチワワサイズの魔物なんだけど。
そんなことよりも、当然、横にいた遥香もやばいわけで。
結界を形成して一撃なんとか防いだものの、直後の衝撃波でダウン。
【魔力超速再生】の補助スキルがある分純恋より長く保った。
最後に僕。
特段、白熱した戦いがあるわけでもなく、3回くらい防いだ後、ぶっ飛ばされた。
いや、自分より遥かに小さい子犬サイズの可愛いやつにありえんくらい勢いよくぶっ飛ばされた僕の気持ちよ。
落ち込むわ……
まあ、負けることも織り込み済みではあったんだけど。
『経験値を得ました。レベルが上がりました』
聞きなれたメッセージが脳内で再生される。
レベルアップ具合を確かめようと思って朦朧とする頭で言葉を紡ぐ。
……ああ……気絶する
そう思いながらゆっくりと意識を手放した。
「……知らない天井だ……ここはどこだ?」
「……それ、言いたかっただけだろ。ここがどこかもどうせわかってんだろ」
隣にいるのは遥香。
彼女を挟んで向かい側には純恋が寝ているのが見える。
寝起きに一言、言うことがある。
首を90度回して遥香の顔を見て一言。
「なんで膝枕じゃないんだよ」
「するわけないでしょ?バカか?お前に膝枕してくれる女子がいると思う?」
「うぐぅ……」
その通りなんだろうけど。
その通りではあるんだけど!
目が覚めたらクラスの女子の膝枕って異世界召喚の定番テンプレだろっ!!
「ああ……テンプレが……」
そう考えて一つ思い出す。
「あ、僕前、純恋に……」
「うるさぁあああああいっ!!」
「いやでも、膝枕……」
「うあぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ」
「うるせえうるせえうるせえうるせえ!」
『膝枕してもらったことある』って言い切る前に遮られる。
ちなみにエラティディア戦の直後のことだ。
「んっ……うぅ…ん〜…………ふぇ?……………………あ、れ?寝てました、か?」
「おはよう姉さん。梶原には何もされてないよ。私が守ったから」
「おい、それ僕が何かする前提みたいじゃんか」
「梶原が姉さんに悪いことしようとしてたけど、私が守った。頑張ったよ」
「嘘つけえぇえええええ!!」
アホなやりとりをテスカは興味津々の顔でずっと見ていた。
***
「ステータスを見ようか」
暫くしてからその話を始める。
2人も結構レベルアップしているはずだ。
僕よりレベルが低いんだから僕よりもレベルアップしているはず。
「いっせーのーでっ「「ステータス」」」
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《ステータス》
【梶原 優人】
種族 幻獣種
LV29
HP:22222
MP:180556
攻撃:17203
防御:18232
体力:25364
速度:15875
知力:192
精神:20228
幸運:73
スキル……進化【宙】
補助スキル
格上耐性LV2
領域構築補助
自己治癒強化
従魔
テスカ(天)
称号
星神の加護 狂戦士 不屈の精神 反逆者 復讐者 殲滅魔法の使い手 世界の作り手 ボスをボコボコ
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いや、どういうHPしてんの?
スーパーゾロ目じゃん。
めっちゃ縁起良さそう。
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《ステータス》
【綾井 純恋】
種族 真獣種
LV208
HP:10872
MP:27065
攻撃:6619
防御:7193
体力:10872
速度:7248
知力:233
精神:6040
幸運:52
スキル…浄化
補助スキル
格上耐性
攻撃耐性
インフェルノ
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《ステータス》
【綾井 遥香】
種族 真獣種
LV211
HP:11290
MP:27811
攻撃:6292
防御:6699
体力:11028
速度:7487
知力:210
精神:6017
幸運:0.05
スキル……魔力探知
補助スキル
インフェルノ
創造
魔力超速再生
スキル範囲強化
称号
クソガキ
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これだけレベルアップして1にならん幸運って何なんだ?
最早、幸運値じゃなくて不運値だろ。
「結構上がったな」
遥香の幸運値以外は。
「そうですね。もうLV200越えですよ。城にいた頃では考えられないくらい速いです」
「負けたからそこまで一気には増えなかったけどな。それから【進化】のせいだと思うけど僕よりもレベルアップが遅いな」
レベルアップの条件は一定量以上の経験値を獲得すること。
そして、その経験値の取得方法は主に戦闘とされている。
戦闘を行うとその時の敵の強さによって得られる経験値量が変動するものの、確実に経験値を得られる。
負けても勝っても経験値はもらえる。
無論、死んだらそこで終わりだが。
敵によって経験値量が異なると言ったが、それだけではない。
勝敗によっても変化する。
勝ったら多いし、負けたら少ない。
今回は負けたため、もらえる経験値は少ないものの、姉妹はレベルが低かったのでそこまで少なくはない。
それなりにレベルアップした。
「それなりに成長したんだからいいじゃないですか」
苦笑と共に純恋がそう言った時、懐かしのラツィエルの声が響いた。
経験値は散歩とかでも溜まります。そのため赤ちゃんとかでもレベルアップします。ただし、大した経験値ではないので、優人たちはもう関係ありません。
ちなみに、生まれた時のレベルは1ですが、その時のステータス値は生まれた時の身体能力値を基準とするので、厳密には優人のステータス値と他の人のステータス値は同レベルでも異なります。
勇者の1レベ時のステータス値は召喚時のそれぞれの身体能力を数値化したものです。つまり、この世界の人間とは同レベルでもちょっと違います。まあ、レベルが上がるたびにそのくらいの差は埋まっていくので、真獣種になる頃には誤差の範囲になるんですけど。