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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー40 戦闘訓練

「じゃ、僕が投げたコインが床に落ちたらスタートね」


 そう言いつつ腰の袋から小銅貨を取り出して天井近くまで投げ上げる。勢いよく上がったそれは天井スレスレで一瞬止まると、すぐに落下運動を開始する。


 くるくると勢いよく回転しながら落下したそれは音もなく床の土に着地した。


 瞬間、テスカと僕の姿が掻き消える。


 技の発動前にまず1発。

 互いに同じことを考えていたようで同じように互いに接近し、拳を握る。テスカの爪が顔面に迫り、咄嗟に拳を緩めて防御の姿勢になり、腕に魔力を集中させて防御力を上げる。


 が、


 爪が触れた瞬間、魔力が乱れ、いとも簡単に腕を傷つけられる。

 爪痕が残るくらいで終わり、腕が折れたりしなかったのは意思を汲んだイルテンクロムが爪と腕の間に強引に割り込んだから。



 硬いはずのイルテンクロムは簡単砕かれ、霧のようにその場で霧散する。


「梶原っ!?」


「速すぎませんか!?」



 ……これで手加減してるのか!?ウソだろ!?


「……【宙の箱庭】、【宙の共鳴】・4層(クアトロ)




 宙の箱庭は長時間展開できない。

 精神力が高ければなんとかなるのだが、仕組み上、空間をルービックキューブのようにこねくり回す必要がある。

 必要がある、というかそういう術式だ。



 空間という想像(イメージ)が難しいものを長時間こねくり回すとどうなるか。



 脳がショートする。

 運が悪ければ脳が物理的にパンクする。

 イモータルキングウルフ戦ではちょっとパンクの予感がした。


 あの時はやばかった。



 今回は短期決戦になるだろう。というかコイツと長期戦なんてやってられない。


 【エネルギー操作】の効力はおそらく、指定の場所に触れたエネルギーを自在に操るとかいうもの、だと思う。

 そうじゃなかったらほとんど不死身だ。


 エネルギーだから衝撃とかのエネルギーとかも操れるはず。

 そうなれば魔法もスキルも物理攻撃も通じない最強の個体が生まれる。


 それはもはや天獣種の括りに収まる魔物じゃない。

 たとえ幼獣だとしても、神獣種に十二分入る魔物だ。




 もちろん、『エネルギー干渉できる部位が決まっている』というのはただの予想でしかなく、違う可能性もある。

 エネルギー量や時間的縛り、発動までの時差、干渉の自由度など。



 だが、エネルギー量だとしても試す時間はないし、魔力の無駄遣いはできない。

 時間的なものだとしても今は時間不足。

 自由度は……わからない。

 でもそれを検証する時間はない。


 今回は宙の共鳴を光球として発射することにした。僕の背後に四つの歪みが生まれる。



「遥香。土の結界は?」


「できたよ。いつでも出せる」


「じゃあ行くよ」


 掛け声と共に砲弾は発射され、避けようとするテスカを追尾する。

 同時に僕は走り出し、新しく術を発動。


「【固形大気】剣、弾丸」


 掌にすっぽりと剣が収まり、背後に無数の弾丸が召喚され、一斉に飛び立つ。

 そして横を天魔反鉾が通過する。




 対するテスカは今必死に避けながら二つの光球を破壊したところだった。

 本来なら膨張して衝撃波を放つ光球もキラキラと光る霧となり、金粉を周囲に振り撒いた。


 そんなテスカを襲う鉾。

 一直線に飛ぶ鉾。


 しかし、脇腹に刺さりそうになった瞬間テスカの体に変化が起きる。

 一瞬、バチっと青白い稲妻が走り抜けると鉾がその場に固定される。


 そのままテスカを追いかけていた宙の共鳴がテスカの命令に従うかのように進路を変え、こちらに飛来する。


「【モノリス】っ!!」


 3人の頭上に展開する黒の石柱。

 こちらに飛んできた衝撃波が岩にぶつかった波のように、二つに分かれて完璧に受け流される。





 【モノリス】の効果は一定範囲内のベクトル操作。



 【宙の箱庭】で直接攻撃が当たらないようにしているが、【宙の共鳴】は空間を異常に振動させて波を起こす、不可避で防御貫通の衝撃波の攻撃。


 【宙の箱庭】では防げない。


 一応、遥香と純恋の周りには結界があるが、あくまで物理攻撃対応。

 【宙の共鳴】は結界も貫通して大気を揺らす。




 周囲に土煙が立ち込める。

 結界の応用で煙を片付けると、奥にエネルギーシールドで全身を覆ったテスカが見えた。




 状況はかなりまずい。


 反射される【宙の共鳴】は使えない。



 結果、使えるのは物理攻撃のみ。

 火力が足りない気がするが、仕方ない。


最高統治者(スプリームルーラー)



 銀色の触手が生成される。

 先端には長い刃が付いており、周囲の松明の光を反射して赫く輝く。



 シュッという鋭い音を立てながら刃を伸ばす。

 しかし、テスカから電流のようなものが放出され、刃が固定される。

 同時に前足を大きく振り上げ、子犬のような小さな体躯が勢いよく地面を叩く。



 おそらくその衝撃を操ったのだろう。

 テスカの周囲に波が起こり、硬直状態だった鋼の刃を押し戻す。


 無限の質量というイルテンクロムの特性を利用してどんどん刃を増やす。



 その数およそ100本。


 それでも防がれる。



 天魔反鉾も攻撃に加わるがそれでも足りない。




 遥香と純恋の【インフェルノ】。


 しかし、放出されている電気のようなものは質量があるらしく、攻撃対象は電流に吸われ、簡単に防がれる。





 そこで再び脳内に声が響く。


『もうちょっとギアを上げるのである』



 3人に絶望の風が吹いた。


【宙の箱庭】は空間を断つのではなく、入れ替えているだけです。そのため、範囲攻撃は防げません。

テスカのパンチが飛んでこないのは【宙の箱庭】のお陰なので役に立っているのは事実ですが、それ以上にテスカが強すぎます。

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