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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー36 移動中のあれこれ

 空間が僅かに歪み、直後、遥香が現れる。


 そして、それと同時に彼女の背後でぐちゃぐちゃとまるで子供の粘土遊びのように歪な形だった石片が球体を形づくり、こちらに飛来する。おそらく、いきなり現れた僕を敵と勘違いしたんだろう。



 空間転移は傍目から見ると単純に(単純ではないが)指定された対象が空間ごと移動しているように見えるが、実際に飛ぶ人から見ると自分ではなく、自分以外の世界が自分に合わせて飛んだかのように見える。


 だから彼女の目には自分が転移したのではなく、僕らが転移したかのように見えていたはずだ。




 勢いよく飛来する石球。

 合計で5個だが、一個一個がバスケットボールくらいのサイズでさらに材質は石。一個でも当たれば即死級。




 ()()()()



 スキルは強力。それがたとえ補助スキルであっても。

 しかし、あの石も本来ならかなりの威力だが、あいにく僕らにはまだまだレベルに隔たりがある。


 だからあれが当たっても痛くも痒くも……は言い過ぎだが怪我の恐れは無いのだが、それでも防ぎたくなるのが日本人……否、地球人の(さが)


「【空間固定】」


 懐かしき初めてのイモータルウルフ戦以来の空間固定を行使する。

 僕より弱い遥香が放った石はその場に固定され、それを見た遥香が我にかえって目を見開く。



「えっ……え!?梶原!?なんで?……いや、ごめん。すまん。間違えた」


「気にしなくていいぞ?もし当たってても弱すぎて痛くもなかっただろうし」


「なんかムカつくな、お前。事実だけど」


「今回強くなるんだからいいだろ。少なくとも真獣種にはなってもらうよ?2人とも」


 そう。

 今回の目標は最低でも2人が真獣種に達すること。そしてあわよくば僕が幻獣種になること。






 迷宮のボスは5日ごとに復活する。

 だから一度エラティディアを倒してしまうと5日待つ必要がある。そのため、一回で幻獣種になれなければ幻獣種入りは次の機会になる。




 ……他の迷宮も行ったほうがいいかもな。こっちの迷宮に来れない時のために。




 始まりの迷宮はボス復活が5日おきだけど、多くの迷宮はボス部屋から挑戦者が出た瞬間、再び復活する。

 一般的には5日おきというのは長すぎるのだ。



 5日おきに、しかもひと組しかボス報酬がもらえないのならばボスの討伐権の奪い合いになるだろうし、そもそも冒険者なんて職業は成り立たない。




 そんなことを考えながらも3人の遠足は順調に進む。




 それからも数十回の魔物と戦い、あの忌まわしきモンスター部屋にも遥香の持ち前の幸運値雑魚さを発揮して入り、全員空間固定で固めて2人に倒させ、約2、3時間で次の階層にたどり着いた。


 本来なら1階層進むのにももっと時間がかかる。

 多分4、5時間。下手したら6、7時間くらい。



 だが今回、僕らは魔物のいない場所をほとんど飛ばした。




 魔物がいない場所というのは少ないのだが、いくつか迷路っぽい場所や断崖絶壁など、ただただ危険で、通るのに時間がかかる場所というのもいくらかある。




 多くの人が足止めを喰らうであろうそのあたりを飛ばし、さらに何もないただの道も飛ばしてショートカット。体力の減少を極限まで下げて強行軍を実行した。


 何度か鉾が危ない時もあったがあいにく僕は同じ轍は踏まない主義だ。


 その都度危険な人を転移して、難なく回避した。




 本当なら【モノリス】を使いたい。


 あらかじめモノリスを展開して攻撃を受け流したい。

 エラティディア戦で一度破壊されたモノリスだが、基本的にアレの素材……というかあの術式は壊れるようなもんじゃあない。



 基本的に【これ(モノリス)】に干渉できるのは時空間系統のスキルと魔法または時空間系統の神々の加護を得た者のみ……らしい。

 そのはず。



 既に一度壊されているので、はずもらしいもクソもないのだが。


 話を戻して、しかし、天魔反戈はスキルも解除しにかかる。

 そのため【モノリス】は簡単に消されてしまう。


 本当に面倒な効果である。





 そこから約20分。

 僕らは第一の目的地に到着する。

 目の前にあるのは懐かしき、今では微かな愛着すら抱く扉。空間把握で部屋の中に予想通りの存在がいることを確認してゆっくりと扉を押し開く。


 扉が開くと同時に部屋を取り囲むように設置された巨大な燭台に火が灯り、煌々と輝く。



「【空間固定】」



 部屋に押し入ると同時に理不尽を強要する。


 中のイモータルキングウルフは金縛りにでもあったかのように、立ちあがろうとした瞬間の不恰好な状態で拘束される。


「あっ、あのっ!……この魔物を倒すんですか!?手伝ってくれるんですよね!?いくらなんでも無茶ですよ!レベルが段違いです!」


 もう手伝ってるんだけどなぁ。


「気にするな。ちゃんと準備してきた。それで……どっちが倒す?【インフェルノ】の補助スキルあるし、俺がスキルでアイツ止めとくから安全だけど?」


「姉さんからで」「遥香が先にやったら?」



 視線が交錯して小さな火花が散る。

 お願いだからここで僕を見るのはやめてくれ。




「昨日姉さんからって決めたし」


「じゃあ純恋から」



 と言いつつも、今日の詳しい予定は今日決めたし、昨日の部屋でそんな話は聞いていないのでそれが嘘ということはわかっている。

 でも、姉妹の口論を聞く義理はない。

 こういう時はさっさと僕が勝手に決める。



「いいですけど……もうっ!……いいですけど!」


 色良い返事があったので早速魔石を渡して【インフェルノ】の補助スキルを獲得させる。


 魔力が移し替えられると同時に一瞬体に黄色の線が血管のように浮かび上がり、魔力の感じが若干、濃く変化する。



 両手を2、3回にぎにぎした純恋がこちらを見て一つ頷く。





 戦闘開始の(ゴング)が鳴った。



 ……まあ、相手は動かないのだから、これから起こるのは2対1のいじめなのだが。


もうすぐ話が動くので、どうかこれからも本作をよろしくお願いします!!

閲覧者が減って、切実なんです!

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