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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー31 試験開始

もっと激しい戦いが書きたい……

「このコインが床に落ちると同時に試験開始だ」


 そうギルマスから言われ、直後、コインが彼の手から上に放たれる。


 コインは抵抗を受けながらも真上に飛び、3メートルほど飛んだ後ゆっくり下降を始めた。

 徐々に加速を繰り返し、キィンと高い音を立てて石畳の上で跳ねる。


 そして互いに掌と杖を相手に向け、術式を展開する。


「【固形大気】盾・弾丸」「エアーカッター!!」





 余談だが、術式名は言わなくてもいい。


 が、言った方が魔術が安定して出力も心なしか上昇する。

 言ったら攻撃がバレるので一長一短ではあるが、多くの人は技名を言う。


 そもそも魔物は人間と言語が違うので名前を言ってもリスクが無い。

 故に、奇襲の時以外は普通技名を言う。





 技名を言った直後、僕の周りに盾と6つの弾丸、敵の前に半透明の青の斬撃ができて、弾丸と斬撃がぶつかり合う。




 一瞬。


 エアーカッターは襲いかかる弾丸によって破壊されて消滅し、試験官は先の丸まった弾丸によって叩きのめされ、意識を奪われた。


 会場はシーンと静まりかえっている。


 くるりと後ろを振り返り、控えていたギルマスに視線を投げかけると、漸く意識が戻ったようでハッと言って肩をびくりと震わせると、勢いよく手をあげた。


「勝者、梶原優人っ!!」


 声が木霊した直後、会場は一気に熱気に包まれる。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「スゲェ。凄えぞあのガキ!!」


「なんだあの速さ」


「強すぎだろ!?」


「いきなりなんかが浮かび上がったと思ったら、なあ!?、一瞬で倒したぞ!?」


「うちのパーティーに入れようぜ」


「いや、うちがもらう!」


「抜け駆けはだめだぞ!!」




 試験の結果だが、まあ、当然の結果と言える。


 試験前の鑑定は禁止されていたので試験後に倒れた彼を鑑定したが、ステータス値は漸く千前後だった。


 対する僕は数万、数十万である。



 負けるわけがない。


 ……多分、あのカッター、盾無しで当たっても傷一つ付けられなかっただろうなあ。防御力のせいで。なんかかわいそうだな。






 申し訳なさを抱えながらも2回戦目。

 お次は純恋と万が一の時のために待機していたもう1人の魔法使い。


 さっきの人と同じような杖に今度は黒の魔石が輝いている。



 普通に考えたら闇とかだと思うが、なにしろさっきは青の魔石で風だった。



 どうやら青は風らしい。

 だったら黒が闇ではない可能性もあるが……


(考えても仕方ないな。……でも、どうやら魔法について勉強する必要が出てきたようだ)


 そんなことを考えているうちに純恋が勝利する。



 続く遥香戦は遥香の勝利。

 ちなみに相手は鎧を着込んだ冒険者さん。



 僕含め、技術は全然だが彼女らのステータスはそこらの冒険者と比べると高い。

 それに戦闘向きというか偵察向きと支援向きではあるが、スキルもある。


 魔力探知を使えばある程度攻撃の方向が分かるし、浄化には回復効果もある。



 それに今回は相性が良かった。


 黒の魔石は予想通り闇属性。


 そして闇属性の特徴は攻撃時に相手の魔力を吸収すること。

 闇属性の攻撃魔法もあるが、どれも消費魔力の多い大魔法。



 前提条件として相手の魔力を強奪することがあるのだ。

 もちろん強奪無しでも行使はできる。

 だが、消費魔力が多すぎてそこらの冒険者は強奪無しでは使えない。


 それなのに、魔力の強奪は【浄化】にとって、状態異常に分類される。

 よって、魔力の吸収は全無効化され、敵はなすすべなく倒された。



 まあ、相性が最悪だった。

 試験官は運がなかった。






 いきなり始まった飛び級試験は全員合格という最良の結果を残して終了した。


「優人くん、魔物を売るのは今日からOKですけど、冒険者カードの発行は明日らしいです。ギルドマスターさんが言ってました」


「わかった。あと、おめでとう」


 少し、恥ずかしかった。


 日本では女子との関わりがなかったのでこんなふうに誰かを褒めることもなかった。

 というか、褒めるようなやつがいなかった。


 朝は恥ずかしいことを言った覚えがなんとなくあるが、あれは朝の寝ぼけた脳から出た寝言みたいなものだ。

 朝の件を見た人なら、何女子慣れしてんだコイツ。ふざけんな。って思ったかもしれないが、全然女子慣れなんてしていない。


 女子慣れなんて僕から1番遠い言葉だ。

 数日間一緒に行動して少し2人には慣れたが、それでも緊張するものは緊張する。


「えっ、あっ、あ、ありがとう、ございます」


 だからこういうおどおどした返事にも恥ずかしさを覚えるわけで。



 まあ、なんだ。

 今日まで過ごした相手がこの2人でよかった。




 ……裏切られなきゃいいんだけど。


 はるか昔のドス黒い記憶。

 誰にも言うつもりはない昔の記憶。


 知っているのは蓮斗と蒼弥だけ。

 蒼弥も口外はしないように言ってあるから僕が言わなきゃもう誰も知ることのない古い傷。



 (くら)い、(くろ)い、古い記憶。

 思い出した記憶の景色の中ではみんな笑っていた。



 みんな笑顔を浮かべていた。



 歪んだ笑顔を浮かべていた。



 人を貶めることしかできないクズどもが。


 ああ、純恋と遥香(こいつら)があのクズどもみたいにならないといいんだけど。






「優人くん?」


 ハッと我にかえる。


「おい、大丈夫か!?顔色が尋常じゃねえぞ!?」


 黙れ、と言いそうになって慌てて口を噤む。

 彼女らは信用できる。

 ……否、信用したい。


 この2人ならばもしかしたら……


「ちょっとぼーっとしてた」


「そんなふうには見えませんでしたけど……」


「……そういうことにしといてくれ」




 今は大丈夫。

 頼れる人たちがいる。



 胸を軽く抑え、動悸を抑える。

 そして、黒い記憶に蓋をして今度はガッチリ鍵をかける。


 おそらくこれを忘れることはない。

 でも、いつかこの記憶から離れることはできる。……多分。


 だから今は、少しでも今の関係を大切にしよう。


過去編は第3章の前半に組み込んでいます。

まだしばらく先ですね。


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