表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
46/248

2ー30 飛び級試験

 ギルドマスター……通称ギルマスが2人の男を連れて戻ってきた。

 おそらく今回の相手の2人だろう。


 大柄な筋骨隆々の男と細身で頭から小豆色のローブをガッポリと被った男。


 大柄な男は背中に大剣を背負っていて、その下に銀色の全身鎧を着込んでいる。

 それから傍に同じく銀色の兜も挟んでいる。



 どう見ても近接特化の戦士だ。


 ……魔法使うのかな?それとも近接の剣だけ?使うとしたら身体強化系の魔法かな?それとも斬撃を飛ばす感じ?


 この世界では平民も魔法を使える。

 ほとんどの平民は学校に通えないため独学になるが、できないことはない。

 もしかしたら身体強化とかは使うのかもしれない。



 それからもう1人、

 魔法使いっぽいおじさんはおそらく防護の魔法陣が刻まれているであろうローブで全身をすっぽりと覆っており、右手にはおそらく金属でできた杖。


 おそらくと言ったのは、魔法では木を金属に似せることができたり、木材の見た目をした金属があったりするからだ。




 杖の先には純青の魔石。

 木の根のように複雑に絡み合った細い金属棒に閉じ込められるようにして一つの青く輝く魔石が納められていた。



 魔法にはあまり詳しく無いが、青の魔石は水魔法が使いやすくなるということだろう。………多分?


 根拠はない。

 青いから水かと思っただけだ。




 僕らが今いるのは円形の闘技場。

 レンガっぽい素材で作られていて左右に選手の入場口が設けられている。

 天井は吹き抜けで今も青空が顔を覗かせている。



 ……多分っていうか、絶対レンガの壁は嘘だけどね。十中八九、魔法でレンガに偽装してるでしょ



 当たり前だが、レンガが魔法に耐えられるわけがない。

 故に、レンガの壁は偽装魔法の賜物のはずなのだが、


「なんでこんなことに余計な魔力を使うかなあ……」



 その通りである。


 なぜわざわざ偽装なんてしたんだろう?


「でも流石に本物のレンガってわけじゃ無いと思うし……」



 防護魔法が施されている可能性もないわけでは無いが、もしそうなら相当高位な魔法が使われている。


 もしくは相当高位な魔法使いが術をかけている。




 魔法使いに攻撃を当てるには彼のローブにかかる防護魔法を破壊するしか無い。


 当然、その防護魔法を破壊できるレベルの攻撃を行うと、魔法のレベルがほぼ同じだった場合、建物の防護魔法も壊れて、建物が壊れかねない。



 だから偽装だと思ったのだが、



 ……まあ、別にいいんだけど。僕には関係ないし。




 ***




 コロッセオみたいな円形闘技場で、周囲を取り囲むように数多くの客席が設けられている。

 流石に試験場なので席は少なく、3段で、円周も短い。


 がそれでもとても迫力がある。



 円周は東京ドームの三分の一くらいの長さはあるだろう。



 まあ、東京ドーム見たことも長さ測ったこともないからただの、根拠の欠片も無い憶測でしかないのだが。




 いや東京ドーム行ったことない人ならわかるよね。

 東京ドーム何個分の広さ……とか言われてもあんまわかんないよね。

 つまりどのくらい?ってなるよね?



 小学校の社会の資料集に東京ドームが何個分だ、あーだこーだって書かれてたけど意味わかんなかったもん。

 こいつ何言ってんだって思ったもん。




 閑話休題




 今はちらほらと人あまばらだが、ギルマスは受付では試験のことを大々的に公表したらしく、だんだんと人が集まってきている。




 満員にはならなくても1段目くらいは埋まるんじゃ無いか?


 ……そう思った僕がバカだった。










 嘘でした。

 1段目どころか3段目まで埋まって立ち見の人もいる。



「飛び級はなかなか無いからねぇ。前の飛び級は20年くらい前だったかな?今のパールランクの冒険者だよ。やっぱこういう珍しいものがあったらみんな見にこようとするよ。滅多に見れないものだもん」


「別にいいんですけど……まあ、いいんですけどぉ……」


「だったらいいじゃないか。勇者なら勝てる!」


「根拠のない自信やめてもらえます?」





「あの……あの方達はどのくらいの冒険者さんなんですか?」


「ああ、彼らはエメラルド級だよ。飛び級でも最高でエメラルドまでしか飛べないんだ。強くても経験がなければ役に立たないからね」


 なるほど。



 確かにステータス上ではスキル有りなら召喚直後に原獣種中位くらいなら倒せる僕たち勇者でも実際に戦闘になると多くは恐怖で動けないだろう。


 経験というものは自分たちが感じている以上に大切なのだ。



 勇者なんてたいそうな肩書を持っているが、僕らはまだほとんど誰かを殺したことがない子供なのだ。


 今の僕だって、魔物を殺すのには少し耐性ができたかもしれないが、人を殺すのは難しい。



 ……あ〜やめだ。こんな話。人を殺すとか殺されるとか。今は試験に受かればいいんだ。



 帝国に攻め入るとなればいやでも対人戦が増えるだろう。


 対人は対魔物とは勝手が違う。


 特に知性という面で。



 だからこれからは対人訓練もしなければならないのだが、今はそんなことは考えたくない。

 せっかくもう一度勇者が集まろうとしてるんだ。

 後に控える戦闘よりも、今は感動の再会の方を考えていたい。





 さて、今回の僕の相手となる試験官(冒険者)は魔法使い。


 相手の方に向き直って、気持ちを切り替えるために深呼吸を一つ。




 今後のことを考えて少し憂鬱になっていた気持ちに蓋をして、ゆっくりと拳を構えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ