表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
43/248

2ー28 怪物たち

一昨日思いつきで途中追加したエピソードなので、雰囲気がおかしいところがあるかもです。

見つけたらどうかご指摘を。

<フレーデン領主・フェルテ視点>



勇者が来ていると聞いた時、正直言ってうんざりした。


義兄上(あにうえ)からの連絡で、エルリア王国がロルニタ帝国の侵攻によって滅ぼされたことは聞いていた。

だから、エルリア王都、エラルシアから最も近いこの国の都市であるフレーデンは、勇者が来る可能性が高いと考えていた。


だが、実際に報告を受けると、面倒だと思った。

なぜなら、対応が(わずら)わしいのだ。


勇者を実際に見たことはない。

だが、文献や勇者を見たという者の話を聞いたところ、いい話は聞かなかった。



彼らの世界には魔力が存在しないらしい。

代わりに電気というものが存在し、魔力と同じような扱いを受けていたようだ。


しかし、電気は魔力と違い、自らの身体ではなく物から物へ移動するエネルギーだそうだ。

端的に言えば、電気とは魔力に比べ、汎用性も利便性も劣る物。



そんな世界で生きていた者がこの世界に来ると、多くの場合はその力に溺れる。

不自由がいきなり自由になるのだ。

何も思わない方が珍しい。


しかし、度が過ぎることも多々ある。



例えば勇者赤木。

エルリア王国にて先日召喚され、【魅了(チャーム)無効】という最弱スキルと言って差し支えないスキルを得た者でさえ、調子に乗って尊大な言動が目立ったと聞いている。


それなのに戦争を生き延びた勇者がどれほどの要求を寄せてくるのか想像すれば、憂鬱になるのも仕方のないことだった。




***




「お疲れ様でした、フェルテ様」


そう言って、側仕えが会合を終えた私を迎えた。


「案外面白いものだったぞ、今日来た者たちは」


会合前の憂鬱さと打って変わり、今の気分は存外、良いものだった。

どうやら私は勇者という存在を悪く見すぎていたらしい。


「だが、重要な話があった。すぐに通信の魔術具を用意せよ。王と連絡を取る」


重要な話というのはもちろん、帝国への報復(ほうふく)戦争の話だ。

会合で言った通り、私だけで判断できる代物ではない。


側仕えはすぐさま了承の返事を残して準備に取り掛かった。


やがて私の前に鏡型の通信の魔術具が運ばれてくる。

魔力を注ぐと鏡がぼやけ、やがていつも通りの王の顔が見えるようになる。



「アルトムート、先ほど勇者との会合を行った」


「今見たからな、知っている」


……相変わらず情報量は化け物だな。


「内容も知っているか?」


「ああ。それについてだが……」


しばしの沈黙。

珍しいな。


其方(そなた)は戦力面での不安があると言ったが、正直、戦力については王国騎士団に加えてロキエラとヴァイスと私が迎えばどうにでもなるだろうな」


勇者の軍勢向かって『どうにでもなる』。

努力と才能に裏付けられた力がそこにはあった。


「勇者とは言え、召喚直後の勇者を半数以上逃す程度の(やから)だ。どうにでもなる。ロキエラとヴァイスが前衛で勇者を各個撃破し、他は私と騎士団の人海戦術でどうにでもなる」


そう言うだろうと予想していた。

読みは完璧だな。


()()()()()()()()()()()()()()()


「自信満々だな。まさかとは思うが、ミュトス自身が参加するわけではないだろうな?」


『ミュトス』は王の敬称だ。


この国のミュトス、アルトムートの欠点は天真爛漫な点。

あらゆる物に向く興味のままに、その全てを自分で確かめようとする。


本人は一向に困らない。

困るのはそれを支える側近だ。


今回も自分も出陣しようとしているのだろう。


「安心せよ。私の出陣はやめだ。つまり、騎士団長であるヴァイスと筆頭側仕えであるロキエラの出陣も取りやめだ」


自分がいけない腹いせに、ヴァイスとロキエラの出陣も取りやめた気がするのは気のせいではないだろう。


「私の考えるシナリオ(勇者の使い方)は、ともに戦い、関係を持つことだ。まだ私の方が強いだろうがいずれ奴らが抜いていく。その時に我が国の一員にしておく」


「万が一のためにヴァイスくらいは連れて行ってもいいのではないか?」


「考えておこう。とにかく、ヴァイスターク王国の方針は、勇者に協力し、関係を築き、それを深めていずれ起こる危機に備えるというものだ」


やけに強調して言った『危機』という言葉が引っかかった。


「危機?なんだそれは。帝国は余裕と言っていたではないか」


「……後の話だ。其方が知るのはもっと後でいい」


アルトムートは一度決めたことは絶対に曲げない。

言わないと言ったのだから、私に教えるのは相当後になるだろう。


「とにかく、我々は勇者に協力し、帝国を攻める。先に規則を破ったのはロルニタ帝国だから各国も反対しないだろう。面倒なのはレディプティオだが、そこはミリティア姉上がどうにかする。国同士のことは私に任せよ。其方は他の準備だ。おそらくヴァイスターク王国はフレーデンを中心に戦うからな」


「分かった。準備を進めよう」


話し合うべきことは終わりだ。

これからはこっちで準備をする時だ。


「では切るぞ」


「ああ、戦いが終わり次第王城に(おもむ)こう。ではまた後で、()()()


次話からは優人視点に戻ります。


フェルテはアルトムートの義理の弟です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ