2ー25 門に行こう!
この街の作りは面白く、長方形の形に高い城壁が立っており、東西南北の四方向に城門がある。
街の中心にあるのは領主の城で、それを中心に放射状に道が伸びている。
上空から見たらおそらく蜘蛛の巣のように見えるだろう。
例えるならばフランスの首都パリのようだ。
城を中心に街は広がっており、城に最も近い部分には貴族街がある。
それから、貴族街を取り囲むようにもう一重の城壁が張り巡らされていて、その外側に平民の富裕層の住宅街がある。
残りを分けると、商業地区、工業地区、一般の平民の住宅街がある。
これらは城を囲むようにあるのではなく、北と西に一般平民の住宅街、東に商業地区、南に工業地区となっている。
城を囲むように商業地区、工業地区、平民の住宅街ってしたら同じ地区が引き伸ばされて移動が面倒になるから当然っちゃ当然なんだけど。
それに、東西南北で分けたら、来た人がちょっと汚れている平民の住宅街を見なくても良くなるからね。
実に実用的な配置である。
今、僕たちがいるのは東門前。
僕たちの前には30人くらいの商隊っぽい人たちが並んでいて、今の僕らは入街待ちの人々の内の1人である。
勇者なんだから門番にそれを言ったら列になんて並ばなくても入れそうだが、日本人の性なんだろう、列を飛ばして最前列に行くのは周りに迷惑がかかりそうで、できなかった。
5分ほどで検査が終わったようで、商隊が動き出した。
それによって今まで見えなかった門前の様子が見えてくる。
門前には2人の兵士が立っていて、急かすように手にある槍を地面に軽く打ちつけていた。
「鑑定」
これを使ったら目に緑の魔法陣が刻まれるからあんまり使いたくないんだけど、商隊に気を取られている今ならバレない可能性が高い。
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《ステータス》
【ジャード】
種族 原獣種
LV328
HP:1287
MP:33
攻撃:327
防御:542
体力:1173
速度:135
知力:62
精神:116
幸運:446
称号
兵士
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《ステータス》
【ボレル】
種族 原獣種
LV497
HP:1536
MP:29
攻撃:415
防御:673
体力:919
速度:189
知力:132
精神:347
幸運:417
補助スキル
隠蔽無効
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(なるほど……隠蔽無効があるのか。だったら安心できるかもな。……普通の兵士だからレベルの割にステータス値が低いけどな)
勇者であればLV400越えは全ステータス値が1000とか2000とかはあるはずだ。
幸運値はLVとほとんど関係ないから1000以下とかいるんだけどね。
それこそ懐かしのイモータル・キング・ウルフだ。
あんまり覚えてないけどあいつ、真獣種のくせに二桁じゃなかったっけ?
……あれ?
一桁だったっけ?
あいつも初戦の時は苦戦したが、あいつみたいな結構強めの真獣種でも幸運値は1桁だった。
そんな感じで幸運値は真獣種でも低いことがある。
……優人の記憶力は当てにならない。
優人の言う幸運値雑魚真獣種とは名前すら出てきていない31階層の真獣種中位魔物である。
領域構築の虚々籠霄で他の階層のボスとまとめて消し飛ばされたが、この階は領域の展開時に足を踏み入れたのでチラッと見えたステータスが頭に残っていたのである。
因みに、イモータル・キング・ウルフの幸運値は平均やや下の300くらいはあったはずだ
可哀想なキングウルフ……
優人を苦戦させたのに幸運値雑魚と勘違いされてやんの。
そんなどうでも良いことを考えているうちに商隊が城門を潜りきり、兵士から前に詰めるように指示が出た。
「全員ステータスを見せろ」
なんだかんだ言って最後にステータスを見たのはエラティディア戦の直前だ。……多分?
確か魔力量が100万超えてちょっと調子に乗ってたところでエラティディアに出鼻を挫かれたはずだ。
おそらく忘れているであろうみんなのために言うと、エラティディアは迷宮最下層ボスの黒龍のことである。
終始、黒龍と呼んでいたので僕の記憶からも『エラティディア』がだんだん消えてきていた。
あんなに苦戦した強敵なのに。
かわいそっ。
***
「「「ステータス」」」
兵士の指示通りに3人ともステータスを表示させる。
これからはこまめに確認しようかな。
日本にいた頃はこんなもの持ってなかったからたまに忘れるんだよね、あれの存在。
目の前に半透明の板が展開され、文字と数字の羅列が表示される。
兵士2人が確認事項を見る。
何で門でステータスボードを見るのかと言うと、犯罪を犯したり逃走中の人とかは称号に犯罪履歴が載るんだよ。
だから、犯罪犯して現在逃亡中の人じゃないか確認したり、犯罪歴がある人をチェックして、問題が起きないように注意したりする。
ホントにステータスボードって便利だよねぇ。
そんなことを考えていると兵士たちの動きが止まる。
それからギギギ……と音が出そうなくらいにぎこちなく首を回して僕らの顔を見る。
「あの……?」
「「申し訳ありませんでしたぁ!!」」
「え?あの?……」
「勇者様だったとは知らず尊大な態度をとり、本当に申し訳ありませんでした!!すぐに領主様の城にお連れしますっ!!!」
「え?あ、あぁ………わかりました……」
さぞ驚いたと言うような表情と言葉で返事をしつつも計画通りに事が進んだことで内心ニヤニヤしていた優人であった。
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