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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第一章 ようこそ、異世界へ
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1ー3 説明とこれから

王様……名前どうしよっかな……まぁいっか。どうせ大して登場しないし名無しでいいだろ。

 三十分近くかけ、全員のスキル判定が終わったところで国王が前に進み出た。


「ふむ、ひと段落したようだな。……それではこれから我が娘から詳しいことを説明させてもらう」


 そう言うと、王の隣にいた女性が立ち上がった。


 ……この人王妃じゃなかったんだ。そこそこな年齢に見えたから、てっきり王妃かと思ったよ。それに王の隣に座ってるから。紛らわしいなあ。


「それではまず、レベルと種族名について説明させていただきますわ。皆様、ステータスボードの上部に、おそらく原獣種と書かれているかと思います」


「そんなことどうでもいいから、早く日本に返してよ」


 その一つの言葉は驚くほど部屋に響いた。

 部屋がシンと静まり返る。


「そうだ!なんで勝手に呼ばれて戦わなきゃいけねえんだよ!さっさと日本に返せ!!」


 そう、誰かが続いた。

 それを皮切りに、何人もが帰らせてと言い出す。

 ようやく異世界に来たという実感が湧き、奥底にあった心細さが爆発したのだ。


「残念ですが」


 突然、そんな声が響き渡った。

 王女の声だった。

 おそらく拡声か何かの魔法が使われており、冷静な声色にも関わらず、騒ぎを両断する強さがあった。


 言葉が続く。


「今まで勇者様が元の世界に戻られた記録はありません。召喚の魔法陣を人に授けた虹の女神フェデリティアは魔王に奪われ、皆様を帰したくても帰せないのです」


 再び批判の声が上がった。

 しかし王女は声を被せてこれを封じ込めた。


「ですが、ここは皆様にとっても素晴らしい国。危険とはかけ離れた豊かな生活を確約致しましょう」


 ……やけに自信満々だな。そこまで思わせるものがあるのか?


 剣を身につけた騎士が当たり前に存在し王政が敷かれている時点で、怪しいところだ。

 だが、だからこそそこまではっきり言わせる根拠に、優人は違和感に近い興味を抱いた。


 帰してくれと言い出したクラスメイトは、王女のはっきりした物言いに気勢を削がれたらしく、眉間に皺を寄せて黙った。

 それに続くように、他の人も順に静かになっていく。

 喋るものがいなくなったのを確認し、満足げに頷いた後、王女は再び話を始めた。


「種族名は5種類あり、下位から順に、原獣種、真獣種、幻獣種、天獣種、神獣種となっております。レベルは上限が999となっており、それを超えると種族がひとつ上位のものに昇華し、レベルが1にリセットされます」


「え〜、だったら飛び級とかなし?」


 場の空気に不似合いな、軽口が飛んだ。

 声の主の長利は、心底楽しそうな表情で王女を見ていた。


「レベルとはそういうものです。ですが、レベルが高い者にはより良い待遇を用意しましょう」


 話を中断され、若干の不機嫌さを表情に出しながら王女が言う。


「異世界召喚の勇者って言えば最強じゃねえのか」

「ちょー強いやつ倒したら一気に行けるんじゃね?」

「初手ドラゴンとか」

「西田とか長利ならワンチャンあるんじゃね?」

「他の奴らでもドラゴン行けるやついるだろ」

「長利のスキルめっちゃかっこいいよな〜」

「厨二病みたいな名前じゃん」


 みんなが一斉に喋り出す。

 その顔にはうっすらと恐怖に近いものが浮かんでいた。

 重苦しく、締め付けられるような空気を変えようという考えが見て取れた。



 ガン!



 その音が響いた途端、一気に静寂が戻る。

 兵士の1人が槍の石突で床を叩いたらしい。


 そのやり方に苦い顔を浮かべながら、優人は冷静に現状を分析した。

 特に、先ほどの王女の言葉について。


『ですが、レベルが高い者にはより良い待遇を用意しましょう』


 全ての勇者に日本より良い待遇を確約しておきながら当たり前のように待遇に差異をつけようとしている。

 現状のスキル内容からして勇者内で強さに差が出るのは当然で、この対応は間違いなく劣等感や反発を招くはずだ。


 矛盾ではない……が。

 何か裏があるかもしれないな。


「……あまり信用しすぎないほうが良さそうか」


 そう、ポツリと呟いた。


「続いて、この国について話させていただきますね」


 王女様の話が再開する。

 優しい微笑みが、今は少しだけ作り物のように感じられた。




 ***




 説明が一通り終わり、解散となる。

 勇者には2人で1部屋が割り当てられた。

 そして、部屋でのスキル行使は固く禁じられた。

 まあ、つい先ほどの破裂音から察するに、すでに誰かが破ったようだが。


 召喚されたあの部屋から移動する直前、国から鑑定の魔術具をもらった。

 これがあれば品質とか物の名前とか分かるとのこと。

 見た目は小さい箱の上部に透明な玉が嵌ったような感じで良さげだが、有り余ってるとでも言うような雑な扱いをされていたから、多分品質は良くないんだと思う。


 それからもう一つ、ギフト的なものも貰った。

 勇者特典とでも呼べそうな、スターターセットのようなものだ。

 皮袋に入っているが、中身はみんな別々らしい。


「僕のセットは……」


 部屋に戻ってから、期待を込めて袋を開け、中身をベッドにぶち撒けた。

 着替えの衣服が数セットと、護身用とおぼしき簡素な短剣。

 魔術師用なのか、魔法陣の描かれたローブが一着。

 あとは小銭が数枚と……。


「……なんだこれ?」


 コロリと転がってきたのは、無色透明な丸い玉だった。

 良く分からなかったので、玉を一旦放置し、ナイフをじっくりと観察する。

 普段鑑定する習慣などない優人は、鑑定の魔術具の存在など綺麗さっぱり忘れ去っていた。


 王女の話では、明日から戦闘訓練が始まるらしい。

 早くレベルアップするには迷宮に行くべきなようだが、ナイフを振り回したことすらない勇者をいきなり実践投入するのは、例え相手が最弱級の魔物でも危険ということだろう。


 ベッドの上で軽く短剣を振るうが、見た目に反してずっしりとした金属の重さがあり、これがロングソードなら、と考えると先が思いやられた。


「何だかすでに安全が脅かされてる気がするけど……どうなんだろ。表面取り繕うために嘘ついてんのかな?何か会話が噛み合わないというか、そういう違和感があるんだよなあ」


 壁に寄りかかりながら思案する。


 こういう時に蓮斗がいれば相談するんだけどな。

 今は他の人の意見が欲しいところ。


「ま、これ以上は考えても無駄かな。とりあえず力をつければ何とかなるんだろうし。それに、国もせっかく呼んだ勇者に下手な扱いはしないだろ」


 そう考えることで少し気分が楽になった。



長利くんの【竜王の加護】はそれなりに良いスキルです。

攻撃◯

防御◯

汎用性◯

って感じです。

器用貧乏感が否めませんが……

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