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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー24 害悪と興味

 

「う〜ん……大丈夫ですよ?私は梶原……優人くんの…………友達?……親友ですから」




 瞬間、遥香が凍る。

 興味本位でつついてみても全く反応がない。


 いつもなら蹴られるくらいはされるのになあ。


 脳がショートしてからたっぷり10秒後。


「姉さん!?」


 やっと遥香が再起動した。



「だっ、だから!……これからは…優人くんって呼んでも、いい、ですか?」


 上目遣いにこちらに期待の眼差しを送ってくる。


 ……ダメって言ったらどうなるんだろ?


 ラノベでこういう展開はありきたりなものだが、この流れで断る展開は見たことがない。


 ちょっと意地悪したくなった。


「いいよ。僕も純恋って名前で呼んでるし」


 意地悪したいのは山々だが、それで距離が離れるのも困る。

 興味と理性が大バトル。


 勝ったのは理性だった。



「よかったです!ダメって言われてたら今頃落ち込んで倒れてたかもしれませんね。……因みに、名前で呼ぶ男の子はかじわ……優人くんがはじめてですよ?」


「嬉しいな。今なら死んでも後悔しないかも」


「え?いっ、いやいや!?死んだらダメですからね!?私が後悔しますから!?」



 中学生の時から女子との思い出に良いものはない。

 というか近くに女子はいなかった。


 さらに言えば、近づく女子は自分で排除していた。

 だって邪魔だから。


 女子という分類に入る生き物が僕に良い影響を及ぼした覚えなど一度もない。

 彼女らは常に害悪だった。




 だからこうやって誰かに名前で呼ばれるのはなおさら新鮮だった。

 そして、自分がそれを許容したことが意外であり、綾井純恋という人間に興味を持っている自分に驚いた。




「……私は名前なんかで呼ばないからな!」


「聞いてねぇよ」


 対抗するように遥香が声を上げた。




 ***




「それからこれからなんだけど、僕らって昨日、勇者って知られないようにワープして街に入ったけど、やっぱり今日もう一度街に入り直そうと思ってるんだけど……どう思う?」


「何で心変わりしたんだ?」


「今、帝国って周りの国全部を敵に回してるんだけど……多分ね?……周りの国はまだ帝国を攻めようとはしてないんだよ。ここからは予想なんだけど、多分、勝てないと思ってるんだよね。帝国には複数人の勇者がいて、何でか知らないけど帝国の命令に従って他の国を攻めてるんだよねぇ……。勇者ってみんな強い力を持ってるから、勇者が暴れて自分達を召喚した帝国を潰したりもできるはずなのになぜか」




 そうなのだ。そもそも僕らのクラスメイトも相応に強いスキルを持っていたはずだ。

 それなのにあんな唐突に城を攻められて何人も殺されることが異常だ。

 仮に敵のスキルが僕らのそれよりも強かったとしてもあそこまで一方的にはならない。



 それに、だ。


 何で帝国の勇者は侵略に従ってるんだ?




 スキル持ちの勇者と一般兵士ではそもそも地力に差がある。

 だから、例えスキルを封じられても同レベルの一般兵士と勇者が戦うとよっぽどのことがない限り、勇者が勝つ。


 召喚されて数日の僕が騎士団長と手加減があったとしても、何とか戦えたのだ。

 いくら優秀な兵士でも勇者は倒せないだろう。



 訓練の時はいざ知らず、あの時の勇者はスキルを使えたんだ。万が一にも勇者は負けない。


 と、なると。



 敵にはちょー強い勇者か、複数人の勇者か、あるいはその両方かがいたはずだ。




 だったら、勇者が国を乗っ取ってしまうことも考えられる。


 奴らは他国を侵略する勇者だ。

 自国を滅ぼすことも精神面は問題なくできるだろう。



 でもそれをしない。




 だったら可能性は4つ


 1、勇者は正常で自国を滅ぼすなんて危険な思想はなく、勇者が納得するような大義名分があっただけだという線。


 2、勇者には国を運営できない何らかの理由があり、その上で侵略の大義名分があったという線。


 3、思想云々に関係なく、勇者は何者かに操作、もしくは洗脳されている線。


 4、僕らが知らないだけで帝国は既に勇者に乗っ取られている線。











 どちらにせよ、


 どれが当たってたとしても、



 帝国を攻めるには、まだ圧倒的に戦力が足りてない。


 『勇者を殺せるのは勇者か相当高位な魔物のみ』




 ならば、


 僕たちエルリア王国勇者が集まる必要がある。


 だったら僕らがその目印になれば良い。


 僕らがここで名乗りを上げて、残りの勇者がここに集まるようにすれば良い。



 ここの領主はちゃんとした賢い領主らしいから、勇者がいるとわかればそれを王都に伝えて勇者を集合させることくらいするだろう。





「ってことで、もう一回門を潜って旗印になろうかと思う」



「……良いんじゃない?」


「はい。門から正式に入ったら堂々と動けますしね……」


 そうなのだ。

 それに、今の僕らは宿さえ満足にとれない貧乏勇者。

 だから魔物の素材を得る必要があるのだが、素材を売れるのは冒険者ギルドに登録済みの冒険者のみ。


 それから、冒険者になるには身分証明が必要。



 結局そこでバレるのだ。


 それに、もしその時点でこっそり侵入したことがバレでもしたら勇者どころではなく、即行豚箱行きだ。



 豚箱勇者なんて恥ずかしすぎる。



 最後に、もし勇者と分かれば大きな屋敷で楽な生活が送れるかもしれない。



 むふふ……例え勇者と判明してもタダでは終わらんぞ。


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