2ー22 宿屋にて
「遥香に何かしたら?」
「ぶっ潰す」
おお怖。
冗談なんだから冗談で返せよこの野郎。
ステータス差があるんだから潰せるはずないんだけど、あの勢いで潰されたらマジで潰れそうな気がして怖い。
「っていうか、そもそも!何で姉さんと私のこと純恋とか遥香って呼び捨てにしてんだよ!私は梶原の彼女じゃねーぞ!」
「いや、俺もお前を彼女だなんて思ったこと一度もねーし、貧乳クソガキを彼女にしたいとも思わんし」
「うるさい!姉さぁ〜ん梶原がいじめるぅ〜」
「梶原君は私たちだとどちらが好きですか?」
別に好きじゃ無いけどお前ら2人で比べちゃダメだろ。
こんな質問、答えなんて言うまでもない。
「純恋。それ以外の選択肢あった?」
「おい貴様ァ!」
「はっ、お前は論外だな」
「………」
もう言い返す気も失せた遥香であった。
***
さっきから口喧嘩を繰り広げている僕らだが、まだ宿に着いてない。
「……結局、一緒でいいんだよね?」
やめた方がいいと思うんだけどなぁ。
「いいですよ」
「知らないっ」
2人がいいならいっか。
別に好き好んで野宿したいわけでもないし。
「すみません。この辺りで安くていい宿ってありますか?」
……やっぱり適当に選ぶことはできなかった。
見てもどれがいい宿かわからなかったので近くにいたおばさんにとりあえず話しかけてみる。
「んあ?あんた冒険者かい?」
「ええ、まあそんな感じです。初めて来た街でお金もそれほどないのでいい宿があれば知りたいと思って」
「へ〜、最近はこんな若い子でも冒険者になるんだねえ……えぇと…ああ、宿だったね。いい宿は憩いの森亭っていうのがあるよ。ほら、すぐそこにある」
視線の先には大木を模った木製の看板に憩いの森と書かれたものが店先に吊るされていた。
「ああ、あれですね」
「結構安くていい宿だから新人冒険者には人気なんだよ」
「そういうことですか。ありがろうございます」
「いいよいいよ。教えたお礼に、また今度そこの店に食事に来てくれよ。それを今回のお礼にしてやるから。そこの店はアタシがやってるんだよ」
「じゃあ機会があればぜひ行きますね」
無難な答えを返してから憩いの森と書かれた看板目指して歩き出した。
そんなこんなで着きました、憩いの森亭。
早速ドアを開いて中に入るとからんからんと木の鐘が心地よい音を響かせる。
「あらぁ〜新しいお客さん?初めましてぇ。私がこの店をやってるファーリーよぉ」
「初めまして。部屋を一部屋借りたいのですが」
「一部屋ぁ?……うふふっわかったわぁ。仲良く過ごしてねぇ?」
……ああ、絶対勘違いされたな。うん、間違いなく勘違いされた。
まあ、年頃の男女が一部屋に泊まるとか、勘違いされても仕方ないんだろうけども。
考えてもしょうがないかぁ……
「はぁい。これは部屋の鍵よぉ。2階の1番奥の部屋ねぇ。」
「ありがとうございます」
鍵には金属輪で2ー6と書かれた質素な札がぶら下がっていた
この人との会話が面倒になって足早に行こうとすると一度、呼び止められる。
「今日の食事の時間は終わったんだけどぉ、明日の食事はどうするぅ?」
「食事はなしでお願いします」
「わかったわぁ。じゃあおやすみなさいねぇ」
「「「おやすみなさい」」」
正直いうと食事はとりたかった。
だが!
僕らにはお金がないのだ!
こればかりはどうしようもない。
明日はギルドとかで倒した魔物の素材でも売るかなぁ……
魔物の素材の相場なんて知らないからわからないけど真獣種や幻獣種の素材が安いわけないだろう。
未来は心配するほど暗くはない。
……もういいや。
今日は疲れた。
面倒なお金のことは一旦忘れてとりあえず部屋で休みたい。
そんなことを考えながらゆっくりで階段を登っていった。
星をお願いしますっ!!
何卒!何卒っ!!