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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー17 声

「へ?……え?え、ええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


「どうしたんだ?そんな声出して」


「え?え?いや、なんですか?このアイテムは?れっ、レベルがおかしいですよ!?」



 ああ、なるほどね。そっかこんなランク見たことないのか。

 僕はイルテンクロムの件でもう慣れたんだけどね。


 いやもうあの時は驚いた。大陸に数個?とか言ってたEXがいきなり出てきたからねえ。

 驚きすぎて声も出なかった。


「なんでお前驚いてないんだよ!EX?フェニックスだけど!?」


「いやまあ、驚いたんだけど前もこんなの見たことあるから……」


「え?え?いつ見たの?」


「あ〜なんか勇者のスターターセットみたいなの貰ったじゃん?」


「ああ、あれですね。微妙に嬉しかったやつですね」


「あれに入ってた」


「はあ!?なんだそれ!?」


「2人はなんだった?」


「私は…え〜……ああ、これ。絶対壊れない剣と簡単な魔法がついてる服で……姉さんのはなんだっけ?」


「私は魔力回復の指輪と身体強化の腕輪です。梶原くんのはなんなんですか。私も強いのがよかったです」


 拗ねたように顔を背ける純恋。

 怒っているつもりのようだが全然怖くない。




 見せて欲しいと頼まれたので腕からイルテンクロムを少しだけ出して効果を軽く説明してやる。


「へえ〜便利ですね。初めにたくさん魔力がいるんだったらアイテムを使えずに私は死んでいたかもしれませんけど……」


 そう言いながら遠い目をする。

 僕と会う前に何かあったようだ。


「他には何かあったんですか?もしかしてそれが強いので一つだけだったとか?」


 ここで一つミスをする。


「いいや?簡単な魔法陣付きの服と熾星……なんでもない。魔法付きの服だけだったよ」


「……そうなんですか」


 熾星終晶刀は訓練後に別個でもらったもの。

 そもそもスターターセットとは関係ない。


 とは言え、間違えて言ってしまったんだから誤魔化(ごまか)さなければならない。

 しかしそれも失敗。


 納得していたが明らかに誤魔化(ごまか)したことがバレている。

 まあ、その辺りを追求してこないあたりが優しさなんだろうけど。



「……隠し事はいけませんよ?めっ、です」


「……」


 残念ながら僕の目に可愛さ補正なるものはついていなかった。




 ***




「それで、これから何をするんですか?」


 そう!それ。

 それが話したかったんだよ。

 誰が可愛いとかどうでもいいんだよ。


 適当なことを考えて頭から色々追い出してから返答をする。


「とりあえず……先に続くドアがあるから先に進んで、最後まで行ってから戻ろうかと思ってるんだけど」


「だったら私もついていきます。1人で夜の森なんて行きたくないですし」


「姉さんが行くなら私も」


 みたいな感じで予定が決まる。


 それから各々の荷物を持ってからドアを開ける。


 ……荷物なんてマジックバックだけなんだけど。マジでマジックバック様様だな。


 重厚(じゅうこう)な音が響いて金縁扉がゆっくりと開く。

 奥にはおそらく魔法で作られた綺麗で清潔そうな真っ白な階段の手摺(てす)りが見える。


(螺旋(らせん)階段?今までは真っ直ぐの長い階段だったんだけどな…)


 コツコツと3人の不規則な足音が木霊(こだま)する。


「それにしても長いですね。かれこれ20分近くは歩いているんじゃないですか?」


「う〜んこれ以上続くんだったら【空間転移】も考えるけど、知らない場所に転移するのってできないんだよな。転移するとしてもここから見える下の方の螺旋階段までだな……」


 そう言いながら階段の中央の空洞部分に顔を出して下を見る。


「ん?あれ地面か?」


 10メートルほど下に土が見えたような気がした。


「本当ですか!?よかったです!そろそろ足がきつかったんです!」



 すぐに階段は終わり、視界が開ける。


その時。


『……………』


何かが聞こえたような気がした。



「「「えっ?」」」



 3人の声が重なる


 確かに何かが聞こえた。

 ほとんど聞き取れなかったけど感情のない平べったい声だった。

 能面をつけた奴が喋っているような抑揚のない声。


 なのにそこには誰もいない。


 今まで誰かがいた気配もない。


(どこかに潜んでいるのか?)



 小さな穴でもあるのだろうか。



『私は はるか 奥深く

そこから 声を 与えるのみ』


 再び声が聞こえる。


(もしかして念話ってやつか?)


『念話 それは 人の力

私は 心に 語りかける』


 もしかして読まれた?心を?


『私は ラツィエル

皆さんを お待ちしておりました』


 言葉が(つむ)がれる。

 話しかけるのとはまた違う。

 語りかけるように(さと)すように穏やかに優しく声を届ける。


『私はずっと 待っています

どうかここまで きてください』


 不思議なリズムで言葉が切れる。

 それなのにイライラはしない。

 むしろ心の波が静まっていくような、落ち着く静かな語りかけ。




 暫くしてからふと、声が聞こえなくなっていることに気付く。

 隣にいた2人も今気付いたようで周りをキョロキョロ見回すと互いに顔を見合わせる。


「……行くしかないでしょ」


 みんなが考えていたことを遥香が代弁すると、純恋がゆっくりとこくりと一つ頷いて、先にある不自然に綺麗な白の扉を押し開けた。

第零章の謎の声が登場です。

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