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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第一章 ようこそ、異世界へ
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1ー2 スキル判定

初日の今日は4話投稿で、明日からは1日1話の投稿です。

「では、誰からでもいいのでこちらに来て、魔術具に手をのせてください」


 四角い箱のような魔術具を持ってきた少女が声をかける。

 運んでいる魔術具は……怪しい占い師が持ってそうな、水晶っぽい球体がはまった豪奢なものだった。


 ワゴンみたいなものに乗せてその魔術具を運んできた少女が声を上げる。

 だが誰も前に出ず、お互いに視線を交わし合う気まずい沈黙が起こる。


「おい、お前からいけよ」


「いやでも、出席番号順に行った方が……」


「私は最後でいいかな〜」


「誰かさっさといけよ!」


「でも…」


 ガヤガヤと皆が口々に喋り始めた。

 ちなみに目が覚めた時あまりにもみんなが落ち着いていたのは、一度皆で騒いだ後だったかららしい。

 僕は少し離れたところからその様子を眺めていて、ふと気になって国王の方に視線を向けると、その国王がそばに控えていた兵士に何かを伝えているのが視界に映った。


 こっそり伝言か……それもしかめ面で……。

 ろくなもんじゃないだろうな。


 蓮斗ともう一人の親友である蒼弥が、伝言を受けた兵士から遠いのを確認して、優人も数歩下がって距離を空ける。

 万が一というやつだ。

 勇者召喚というものは、大体どのラノベでも胡散臭いものだ。

 経験から語ると7割以上の確率で召喚国は悪者だからな。


 だから万が一。

 まぁどうせ当たらな───



 パチッ。


 何かの音が微かに響く。

 焚き火にくべた木が割れて、火が爆ぜるような音。

 線香花火みたいな小さな火花の音。


 それは静電気が走った時のような、その気にならなければ聞こえないようなもので。

 しかし兵士の挙動を注視していた優人が聞き取るのには十分な音だった。




 火花が舞う。

 そしてゴウッと部屋に火柱が立った。




 顔に熱波が吹きつけ、皆がその光景に目を見開く。

 今までの喧騒はなかったかのように静かになり、部屋に響くのは炎が燃える轟ッという音だけだった。


「我々も暇ではないのだ。早く終わらせてくれないだろうか?」


 そう言ったのは壇上で佇む王だった。


 なんてフラグ回収の早いこって。


 静寂の戻った部屋に声が響くとみんな我先へと魔術具の前に列を作った。

 文句を言う者は誰もいなかった。

 あの西田でさえ青ざめた顔で小刻みに震えていた。



『逆らうことはできない』


 このことに誰もが気付く。

 本能でも、理性でも。


 ここは日本ではない。

 同じヒトの姿形をしているから、誰もが理解しているようで出来ていなかった。

 この世界の住民は、殺人に地球人ほどの躊躇いはない。

 ようやくクラスの全員がそれを理解した。


 1番初めに測定したのは赤木だった。

 まあ察しの通り、五十音順である。

 魔術具に手をのせると魔術具が光り、魔術具を持ってきた少女が声を上げた。


「【魅了チャーム無効】です!」


 部屋に沈黙が訪れる。


 絶妙に微妙なスキルを引いたな、かわいそうに。

 耐性じゃなくて無効だった分まだマシか?

 王の横の王妃っぽい人にも可哀想な人を見る目で見られてんじゃん。


 ところどころで小さな笑いが起きる。

 でも僕は何も言わない。

 だって僕のスキルが悲惨だったら不遇仲間になるんだからね。




 それからも順に判定が行われて、ついに僕の番が来た。


 魔術具に手をかざすと他の人と同じように光が迸り、横にある別の魔術具に文字が浮かび上がる。


『【進化】』


 少女がスキル名を叫ぶと周りに集まっていた兵士から困惑の声が上がった。



「進化……?」


「なんだそれは?」


「聞いたことがないな」


「いや、だが、名前を見る限り悪くはないようだが……」


「今時、未発見のスキルがあるとはな」


 ……これは……いいのか?


 いや、冷笑よりはマシだろうさ。

 だけど何も言われないのもそれはそれで悲しいわけよ。

『まあまあいいんじゃね』とか言ってくれたら助かるんだけど。


 異世界在住の兵士たちが困惑するものだからクラスメイトも困惑する。

 煽ればいいのか褒めればいいのか分からず、とりあえず納得した感じの雰囲気出しとこうぜみたいな空気になった。

 それはそれで悲しいけど。


「勇者様、ステータスボードにスキルの効果が記されております。『ステータス』と唱えてくださいませ」


 さっきの王妃様の声が壇上からとんできた。


「ステータス」


 僕が呟くと目の前に青みがかった半透明の板が現れる。

 ステータスボードは自分にしか見えないようで他の人が『ステータス』と唱えても何も見えなかった。


 とりあえずまずは……


「……当たり判定はないか」


 まずはとりあえず叩いてみた。

 ボードの内容を見るより先にまずは殴る。


 だが残念ながら硬い感触はなく、空気のように貫通してしまった。

 あるあるの、ステータスボードでガードするのは無理らしい。


 優人にとっては内容よりこっちが優先。

 ため息を吐く王女には心の中で謝っといた。



 それで、僕のステータスは……


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 《ステータス》

 【梶原 優人】


 種族 原獣種


 LV1


 HP:9

 MP:36

 攻撃:7

 防御:8

 体力:11

 速度:6

 知力:6

 精神:8

 幸運:4



 スキル……進化【天候操作】

 効果

 進化条件を満たすことでサブスキルがさらに上位のものへ変質する

 サブスキルの進化の系統は初期に入手したサブスキルの系統となる


 【天候操作】

 天候を自由に変化させることができる

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ……なんか弱っちいな。

 いやまあ、今から進化するんなら弱くて当然なのか?


 多分、MPってのがイコール魔力ってことだろう。

 魔力だけ飛び抜けて高いな。

 平均どれくらいだろ。


 視線は下へ。


 スキルは【進化】で、サブスキルっていうのが【天候操作】ってことだな。

 スキルはともかくサブスキル弱そうだな。

 言葉通り受け取るんだったら、ここから天気関連の上位互換サブスキルが貰えるっぽいけどどうなんだろな。

 スキル実質2個持ちだから弱いってことはないんだろうけど……


 視線が上がると、他の生徒のスキル判定をしていた少女と目が合った。

 僕はここぞとばかりに表情で困ってますよアピールを繰り出した。


「それでは次の方」


 いや、無視すんなや。

 なんか反応してくれよ。



「ぉぉぉおおおおお!!」


 その時、一際大きな歓声が上がり、各々のステータスを見ていた生徒達が魔術具の方に目を向ける。

 見ると、西田がこちらを小馬鹿にするような目で見ながら、腕を掲げてダサいポーズをとっていた。


「なんだったんだ?」


「西田が強いやつを引いたらしいぞ。【破壊】ってやつらしい」


 いや、なんだよ。

 名前からしてもう強いじゃん。

 スキルに期待しすぎた分だけ僕のメンタルボロボロなんだけど。


 そして───


「宮原拓人、スキル【再演】」


 くううぅぅぅぅぅぅ

 なんだそれええええええええ!!



 効果は他の人のスキルを何度も見て、時間をかけて解析することで、解析したスキルを再現できるらしい。

 つまりスキルのコピー。

 つまり正しくチート。



 いいなぁ。

 スキル内容の解読がいるようなめんどくさいスキルじゃなくて単純なスキルは良かったなあ。


 羨むのは良くないとわかっていても羨ましいものは羨ましかった。

西田は噛ませ犬ではありません。(今のところ)

スキルは噛ませ犬っぽいけど。


ついでの情報として、【魅了チャーム無効】は最弱候補のスキルです。

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