2ー13 インフェルノ
現在、作者・星宮燦は150話先を執筆中です。
既に第三章突入済みです。
『ガアアアアアアアァァァ』
悲痛な叫びが部屋に響いた。
だが、攻撃はやめない。
これは命の奪い合いだ。
気を抜けば殺られるのは自分。
容赦なんて要らない。
形なんて、見てくれだって、やり方だって自由。
ここはルールのない無秩序であり、秩序ある自由な空間。
下腹の扉が開いて火球が飛んでくるがモノリスによって軌道を変えられ背後の岩壁に穴を開ける。
マズいと思ったのか、背中に光が迸り衝撃波となって僕を襲う。モノリスが防ぐと分かっていても咄嗟に腕を上げて防御の姿勢をとった隙をついて巨大な翼が叩きつけられて後方に飛ばされる。
この攻撃も本来なら防げた。
理論上、モノリスはベクトルをずらす防御術式。
物理であれ、魔法であれ、防げるはずだ。
でも作ったばかりの馴染まぬ力は幻獣種と戦うには不足していた。
「来いっ!イルテンクロム!」
イルテンクロムは意思のある石。
僕の意志を読んで背中から蜘蛛の足の様な棒を突き出すと、それを地面に固定して一気に勢いを殺す。
反動で息が詰まるが些細な問題だ。
今は黒龍と距離を空ける方がまずい。
空間転移をしようと魔力を貯めて、次の瞬間飛んできた炎のうねりをモノリスが2つに両断する。
『インフェルノ』
万死の獄炎のうねりは時間が経つごとに強くなり、さらに赫く輝く。
直感がマズいと言った。
「固形大気っ!」
今までで1番焦った。
本当に目の前に死が迫っていることがわかった。
大気の壁で一瞬炎の流れが途切れる。
無理やり魔力を集めて強引に転移をして、不利になると分かっているのに距離を取る。
黒一色だったモノリスには今やヒビが入り、隙間からは炎が吹いて赤黒く、不気味に光っていた。
一瞬、炎が強くなる。
カシャンと嫌な音が響き、モノリスが粉々に砕ける。
「チッ……クソッ!」
一つ舌打ちをして顔を上げる。
黒龍は今炎を全身に纏っている。そして、その炎が徐々に薄まりーー否、背中に集まっていき……鱗が一段と強く輝く。
『ゴガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
長く力強い咆哮が木霊す。
そして、背中から強烈な熱光線が放たれる。
光線は弱まることを知らず、どこまでも強くなる。
スキル【インフェルノ】
幻獣種でありながら人工変異種になったことで使えるようになった異色のスキル。
その効果は『時間の経過と共に出力が上昇する』こと。
そして、上昇の幅は無限である。
よって、破壊が困難な構築領域も
カシャァン
破壊できる。
嫌な音が響く。青空が無惨に砕け散り、元の洞窟の姿に戻る。
インフェルノは未だ止まることを知らず、迷宮に突き刺さる。
ピシッ パラパラッーー
ヒビが入る。
そして、
ーードガアアアアアアアアアアアアアアアアアンっ!!
穴が開く。
一度崩れるともう止まらない。
威力をそのままに、ものの数秒で2階層目を消し飛ばすと次々と上の階を壊して僅か十数秒で青空が見えて部屋に光が差し込んだ。
ボーッとしている時間はない。
もう既に無茶をしてるんだ。
今更躊躇うことなんかない。
「宙の共鳴……二重奏」
宙の共鳴を再び腕に纏う。
インフェルノは際限なしに強くなる。このまま続けば間違いなく負ける。
そんなことは分かっていた。
炎が一段と強くなる。
それを見て腹を括る。
「っう!宙の共鳴っ…三重奏っ!……いや、…四重奏っ!」
脳が破裂しそうなくらいに痛い。
頭がクラクラする。
景色が朦朧とする。
いよいよやばいな……あと保って1分くらいか…数十秒もないかもな……。
もうこれ以上はできない。
全力で地を駆ける。全身に魔力が巡って心地よい。
いつもよりも身体が軽く、動きやすい。
全力で拳を振り抜く。
ボッと音がして炎が消え、圧縮された大気の破裂によって黒龍が迷宮の壁に突っ込んだ。
身体中から炎を出して周りの土塊を溶かすと炎を纏ったままの尻尾を僕に向かって振る。
二つが交差する。攻撃は強烈だった。
しかし、インフェルノの力をもってしても宙の共鳴の重ねがけは防げない。
尻尾が消し飛ぶ。
しかし、痛みを出すことなく口に炎を帰還させ、最後の一撃を放つ。
2つの本気の一撃は部屋を風圧のみで安易と破壊し、襲いかかる大気の衝撃波によっていくつもの階層を無にする。
両雄が近づく。
そして彼は告げた。
「発散」
轟音が大気を揺らす。
刹那、4の大気の圧縮砲は一斉に放たれーー
ーー後に残ったのは赫く変色した数枚の黒龍の鱗だけだった。
現在、作者・星宮燦は150話先を執筆中。
もう第三章に突入済みです。
まあ、ほぼ間違いなく100話の毎日投稿は完遂できますね。
次話は『ポンコツ天使』です。
ようやくメシアが回帰します。