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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー12 モノリス

 闇が晴れる。


 部屋の中央にいる生物の影が浮かび上がる。


 黒龍。

 その『幻獣種・人工変異種』




 ステータス欄に浮かび上がる二重の意味で嫌な文字。




『人工変異種』という文字。

 身体中に取り付けられた機械。

 全身をまるで木に巻きつく蔦のように締め付ける金属の管。

 悲痛な鳴き声

 それから、称号『悲の体現者』





 全てを察した。

 人工的に改造された魔物。

 おそらく人間の何らかの目的のために。




 龍が口を開く。

 口から覗く金属の管。

 管が赤く染まり、その先に紅蓮の炎が収束される。

 その光景を見て我に帰る。


「幻獣種はマズいっ!」


 咄嗟に横に飛び退く。術式を発動する時間なんてなかった。


 頭だはなく、本能が死を予言していた。



 直後、今までいた場所に火球が飛び、地面を抉る。


 ガシャ!

 機械音が部屋に響く。

 見ると、足の部分に左右2門ずつ機械が飛び出している。

 同じように光が集まる。


最高統治者(スプリームルーラー)っ!」


 咄嗟にイルテンクロムを展開。そのまま形を盾にして約20枚重ねにして構え、さらに宙の箱庭の発動準備を進める。

 盾だけでは耐えきれないことは分かっていた。

 おそらく盾は貫通される。



 重苦しい声が響く。壊れた変声機で流したようなノイズ混じりの耳障りな声。


 でも何故か聞き取れた。



『【インフェルノ】』



 再び砲門に火が灯り、魔力が収縮される。


 一斉に繰り出される攻撃。

 今度は火球ではなくレーザー砲。




 次の瞬間、盾は粉々に砕けた。1秒も保たなかった。まるでナイフが突き刺さった豆腐のように一瞬で貫かれた。

 宙の箱庭なんて使えない。



「飛ばせ!」



 咄嗟に目の前の空間を無理やり膨張させてその勢いで横に身体を吹き飛ばす。

 追い討ちのように飛んできたレーザーの風圧によって指を数本飛ばされる。

 爆風によって顔が潰れたようにひしゃげ、視界が真っ赤に染まる。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!!!



 痛いのに、それでも悲鳴なんて出せない。

 出したら悲鳴に意識を削がれた瞬間に殺られる。

 そう感じた。



 万が一で持っていた吸血鬼の血をイルテンクロムの腕を使って一気飲みして、更に、飲みながら背後に1000を超える弾丸を生成する。


「行け!」


 最低限の命令で発射。

 そして飛んだ直後から新たな弾丸を作り出して絶え間なく攻撃する。



 だが、

 弾丸をその身に受け止める直前、黒龍がいきなり、広げていた翼を仕舞って、その後その身を包んでいた漆黒の鱗がカタカタと音を立てて、まるでドミノの様に、タイルがひっくり返るように回転し、その裏から機械が顔を覗かせる。

 そして頭頂部にあった魔石が淡い緑の奇しい光を帯び、光が鱗から鱗に伝播して全身を包み込む。



 擬似的な電磁シールドを作った黒龍の身体に当たった弾丸は突然勢いを失い、身体に傷一つ付けることも叶わず撃墜される。


 だが、そんな事では驚かない。

 ここに来てからとうに常識なんてかなぐり捨てた。


 逆に、これは好機と捉える。


「【領域構築・虚々籠霄】!それから……並列術式【宙の共鳴】っ!」


 結界が構築され、景色が海と空に移り変わり、焦って波だった心を鎮めていく。

 背後には宙の共鳴が8つ生成されていて、それによって生じた空間の歪みで背後の景色はもう見えない。



 黒龍はいきなりの景色の変化に周りをキョロキョロさせると、僕を見つけて再び魔力を砲に集める。



「最後に」


 自分を落ち着かせる様にゆっくりと読み上げる。



()()()()・モノリス」






 合成術式なんて用意してなかった。

 でも今ならできると直感が言っていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 モノリス



 空間同士の圧力を操作してあらゆる攻撃を逸らさせる。

 消費魔力が莫大だが、基本的に、空間操作系のスキルまたは魔法を使えないと干渉できない。

 自身の身体を再構築する

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 頭上には一本の漆黒の石柱が立っている。


「来い」


 後ろに待機させていた宙の共鳴の内二つを呼び寄せて自分の手に纏う。

 手が押しつぶされる様な不快な痛みが走るがそんな事を言っている暇はない。



「行けっ」


 宙の共鳴を放ち、順次生成し直していく。



 黒龍はすぐに電磁シールドを展開するもこれは盾では防げない防御不能で絶対不可避の攻撃。

 黒龍も例外ではなく破裂音と共に吹き飛ばされていく。


「【空間転移】」


 黒龍の着地点の下に転移すると腕を振りかぶって力一杯殴る。


『ガアアアアアアアァァァ』


 悲痛な叫びが部屋に響いた


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