2ー9 領域構築
「あ〜〜まあ予想通りっちゃ予想通りか?」
イモータル・キング・ウルフは一度倒している魔物だ。
一応ステータス上では格上だが、スキルとアイテムによって戦力的な差はなく、むしろ僕の方が強いとも言える。
だからレベルの上昇が鈍いのは分かっていた。
いじめっ子なる称号は不満ではあるがまあいい。
……新しい技が増えるとはなあ。
嬉しい誤算である。しかも世界構築という強力なものだ。これさえあれば街中でも殲滅魔法でも破壊系の大技でも行使できるから、狭所での戦闘の幅が大きく広がる。
「クククククっ」
ちょっとキモイ笑い声が漏れる。
だが、問題点もある。
そもそも、世界構築は難易度の高い技術だ。
発動と維持に相応の魔力と精神力を削るから例え勇者であっても乱発はもっての外だし。
おそらく、今の僕では構築と維持が精一杯だ。
並行して他の技を発動したりはできない。
多分、イルテンクロム主体で戦うことになるな。
……いや、数発ならいけるか?
「だったら何か大技を作りたいんだけどな……」
どうせ世界構築によって強固な無限の空間が出来るのならばそこでぶっ放せる技を持っておきたい。
最悪、世界構築せずに範囲を最小限にした宙の共鳴をブッパして殺せばいいが、最小限にしても迷宮の崩壊の可能性が拭えない。
それに今から更に階層が深くなるのだ。
上層でなら大丈夫な攻撃でも下層で放つと階層が崩れかねない。
逃げるのは簡単だができればここの魔物は全部倒してレベルアップに有効活用したいし。
そんなことを考えながら僕はこの日1日を使って新しい技を組み上げたのだった。
僕は今魔物に周囲を囲まれている。
何でそんなことになっているのかというと…
約2分前。
今僕は鉱石地帯を抜け、魔物と戦っている。
ゴブリンエンペラーというゴブリンの最上位種が多く生息していて、一体一体の強さが真獣種並みである。
まあ、大体が宙穿つ弾丸に一撃で殺られているのでそこまで大変ではないし、レベルの上昇も早いのでどちらかというと助かっているのだが、いかんせん数が多いので魔力の減りが半端ない。
ところで、皇帝がこんなにゴロゴロと居て大丈夫なのだろうか?どうでもいいけど。
そんなことを考えていると正面に赤と青のボタンが付いた灰色の扉があった。
多分、どちらか正解を押すと扉が開き、間違えると罰ゲーム的なアレだろう。
ふふふ。僕がこんな初歩的な罠に掛かると思うなよ?
危険な方は赤。と思わせて反対の青を危険なボタンにしている…
と考えて赤を押す奴らを罠に嵌めるので……
赤が危険で青が安全だ!
そう考えて青を押して……今に至る。
無駄に裏を読んだ結果、部屋にあいた無数に穴や開いた扉からわらわらと無数の魔物が出てきた。
失敗したぜ。
あんな深読みしなきゃよかった。
でもまあ、これはボス戦前の世界構築の訓練にもなるわけで。
実を言うと僕は未だ世界構築の練習をしていない。
イルテンクロムの剣を先行させて進んでいるからここらの敵は僕が来た時には大体死体になっている。
使う機会が無かったのだ。
だから今回の件は僕的にも嬉しいわけで、
僕は唇を釣り上げてニヤリと笑って魔力を集めた。
「さあ、僕の糧になってくれよ?」
「世界構築…いや……領域展開…いや、領域構築」
召喚前、とある漫画にハマっていた。
その中で領域展開という技があったのだが、物語をそのままパクるのもなにか負けた気がする。
今の僕は宙なんて言う強い術式を持っているんだ。発動文句くらい自分でつけたい。
だから世界構築と領域展開を合わせて『領域構築』
安直な気もするがそれでいい。
僕が考えた僕の技。
結界に組み込む付与術式は宙の箱庭。
領域内でのスキルの使用はまだできないが、付与するだけなら今でもできる。
それから僕だけの世界を冠する名前。
スッと頭に浮かんだ文字を並べていく。
「領域構築・虚々籠霄」
虚々籠霄。
作者的にはネーミングのダサさはこの作品で1、2を争います。