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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー7 再戦

 部屋に靄が立ち上り、薄い膜を作って部屋を覆い尽くしその後、生物の影が見えてくる。



「グアァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!」



 数日前に聞いたあの咆哮を再び上げながら。風圧で靄を四方に霧散させる。


 そしてそこに懐かしのイモータル・キング・ウルフが登場する



「あれ?何でこいついるんだ?」


 優人は未だに自分が1日半も寝ていたことを知らない。

 だがまあ、その程度で彼が出遅れるはずもなく、


「まあいっか」


 いきなり登壇したボスをただの一言で完結させる。




 自分が滞在しているボス部屋がいきなり退出不能になり、ボスが召喚されるなど普通なら悪夢そのものだが、今の優人は慌てない。


 それは何体ものボスを倒して力をつけて自信をつけた証左でもあり、実際に実力をつけてできたステータスの自信でもあり、新たに手に入れたイルテンクロムの強力さからくる自信でもある。




最高統治者(スプリームルーラー)


 迷うまでもなくイルテンクロムを展開し、周囲に剣を召喚。


「行け!」


 号令と共にイルテンクロム製の鎖で僕と繋がっている10本の剣が射出され、イモータルウルフに突き刺さる。


 イルテンクロムのいいところはまず、魔力をほとんど消費しない。数時間使い続けても1000も魔力が減らない。だから無駄打ちできるし、軌道修正なんて面倒なことをしなくてもダメージを加えられる。


 それから、精神力を削る速度も遅い。鎖で接続しているので僕の思考をそのまま形に反映させ、ほぼフルオートで稼働してくれる。




 だからこんなこともできる。



「【宙の共鳴】」


 操作系アイテムの使用と並行してのスキルの使用。



 瞬間、周囲の空間が歪んで、更に突き出した僕の手のひらの前に水色の球体が生成される。

 球体は祝福の残滓のような美しい光を放っており、部屋を明るく照らした。


 「初使用だ。威力確認のために反応は分かりやすくな」


 その言葉と共に球体は飛ぶ。

 そしてそのまま導かれるようにしてウルフの口内に侵入し、



 一瞬、部屋から音が消える。



 直後。



ドガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン



 爆音と共にウルフの頭が風船のように弾け飛び、爆発の反動で残された体が後方に吹き飛んで壁に激突する。



 最高級の硬度を誇る迷宮の壁は見るも無惨に破壊され、ガラガラと音を立てて崩れてきている。



 身体をそのまま迷宮の壁にめり込ませたウルフは仰向けの状態で暫く四肢をバタバタとさせるとクルリと体を回転させると呻き声を上げながら苦しそうに立ち上がる。



 目はあの時と同じ紅蓮に染まり、口を自らの血で真っ赤に染め上げて赤の雫を滴らせながらこちらを爛々とした憤怒の光を帯びた目で睨みつける。



「グルルルル……」



 そして…そのまま身体を横に傾けると倒れ、動かなくなる。


 対する僕は油断なく目を光らせつつも初めて使ったあの技について分析する。


「なるほどね……」





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【宙の共鳴】


 スキル宙の技の一つ。

 周囲の空間を歪め、空間を一点に収束、圧縮させてできた光球を放つ。

 対象に当たるとエネルギーの発散を起こして高火力の超広範囲爆発を行う。

 空間の破壊はできないため、普通は術者以外による技の強制終了はできない。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ここで豆知識。


 空間というものは基本的に破壊できない。

 空間破壊専用のスキルや魔法が発見されれば話は別だが、普通は不可能とされている。


 空間の特徴は

 1、破壊、消滅、異空間への収納ができない。

 2、専用のスキルや魔法がある場合を除いて操作も不可能。


 となっている。

 絶対で空間を操る僕の【宙】を持ってしても、1の特徴は破れない。



 因みに2は専用スキルの『宙』があるので僕はできる。


 が、それでも強引に行なったもの。

 操作は自由とは程遠い。



 宙の共鳴は指定範囲の空間を圧縮して放ち、対象に当て、圧縮を解いた時の衝撃波で攻撃する。

 元の形に戻った空間は周囲に衝撃の波を死にはしないものの、大ダメージは免れないレベルで伝播させる。



 しかも衝撃波は防御不能の絶対不可避。

 高度な結界でさえも空間の一部と指定され、存在を無視されることで貫通される。



 凶悪に凶悪を重ねたような攻撃。


 対象者の選択肢は逃走、もしくは盾を使った物理的な防御のみ。




 唯一影響を受けないのは僕と僕が指定した対象、僕と触れている者のみ。


 最大伝播範囲は半径300メートルの爆発地点を中心とした円内。

 離れれば離れるほど衝撃は減るものの、範囲から逃げることは至難の業だ。


 範囲を絞ることで威力の底上げもでき、さっきの攻撃では半径500メートル分の衝撃が半径5メートルに圧縮されていた。



 宙の共鳴は攻撃対象を指定できない。

 先ほど述べた例外を除く全てに攻撃を加える。


 絶対に迷宮が崩壊しないように範囲を絞って最大出力で発射する。



 そしてその攻撃をゼロ距離で受けたイモータル・キング・ウルフは首が弾け飛んでなお、その超生命力により一瞬死に抗ったものの、大きすぎるダメージを受けた身体は耐え切ることができず、一瞬にして絶命した。




 あの時に爛々とした光を放っていた目はすっかり濁っていて、強い眼力も既に消え去っていた。


【宙の共鳴】はスマブラのネスの通常必殺技をイメージしてください。

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