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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第一章 ようこそ、異世界へ
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1ー1 ようこそ、異世界へ

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 梶原優人かじわらゆうと

 これと言った特徴のない、青林高校の一年だ。

 強いて言えば、趣味が読書のインドア派のくせに、先日あった体力テストで学年3位を叩き出したことくらいか。

 これは、ささやかな自慢だ。



 僕は当たり前というものが好きだった。

 当たり前の日々。

 いつもの通学路を歩く。

 靴底に吸い付くアスファルトの感触、挨拶を交わした友人の笑い声、放課後、窓の外の茜色を横目にページをめくる紙の匂い。

 その一つ一つが、僕にとっての愛おしい群青色だった。



 決して友人が多いわけではない。

 でも数人の仲の良い友人と2人の親友。

 それだけで僕の日常は確かな彩りを含んでいた。


 苦労が無いわけではない。

 それでも、充実した毎日の『当たり前』がこの上なく大好きだった。




 そしてその日々が終わりを告げたのが、今日という日だった。


 今は終礼直後の放課後、まだほとんどの生徒が教室に残っている。

 教室に変化が起こったのはそんな時だった。




 それは一瞬のことだった。


 一瞬にして眩い閃光が教室を照らす。

 同時に、床に青い謎の紋様が浮かび上がる。

 クラスメイトの悲鳴が聞こえ、何人かが教室の外へ逃げるのが見えた。


 それを見て、自分も逃げようと駆け出す。

 しかし、それよりも早く、紋様から放たれた光が僕を呑み込んだ。


「優人っ!!」


 親友の声が聞こえた。


 声の方向から必死に伸ばされる手があった。

 閃光の中で、必死の形相の親友の顔がわずかに見える。

 同じように親友の名を呼び返し、差し出された手に向かって腕を伸ばす。


 しかし、その手が触れ合うことはなく、閃光はあっという間に僕の意識を刈り取った。




 ***




「…………!!」


「………」


「………」


「───!」


「───ではないのか!?」


 誰かの声が聞こえる。

 多分、知ってる人の声。


 なんだか体が冷たいな。

 そういえば何してたんだっけ?

 よくわからないことを考えているうちにだんだんと意識が浮上してきて───



「……は?」


 それだけが、口から小さく漏れ出した。


 どこだここは!?

 その言葉が脳内を支配する。

 徐々に顔から血の気が引くのを感じた。


 夢であって欲しいと思い、頬に触れて軽く引っ掻く。

 しかし、痛みはちゃんとあった。


 全身が石の冷たさを訴えている。

 身体中が痛い。

 その痛みが、僕を現実に引き戻す。



 心臓が煩い。

 落ち着けと何度も呼吸を整えながら、まずは自分と同じように立つクラスメイトたちに視線を向けた。

 彼らの不機嫌そうな表情の先に、豪華なマントと王冠を戴いた、いかにも王然とした人物が立っていた。


 足元を見る。

 床は、磨き上げられた白い石のような物でできている。

 円形の部屋で、床の中心にはいわゆる魔法陣と言われる、不思議な紋様の図形があった。

 その荘厳な異世界の美しさが、自分が確かに『普通ではない場所』に来たことを叩きつけてきた。


 さらに視線を動かすと、仲の良い友人の姿が見えた。

 僕は立ち上がり、友人の元へ歩いていった。


「蓮斗」


 呼びかけると、蓮斗は勢いよく振り返った。


「ああ、やっと起きたのか。いつまでも起きないから、そろそろ起こそうかと思ってたんだぞ」

「何があったんだ?」


 そう言うと、蓮斗は困ったような表情をして、その後、何か言おうと口を開きかける。

 しかし、結局言葉にはならない。


「……よく分かんねぇな」


 結局、それだけ言って首を傾げた。


「とりあえずアイツらの話聞いてみろよ」


 蓮斗が指し示す向こうでは我らがクラス委員長、宮原拓人の姿があり、中央の壇上に佇む誰かと何か話していた。



「つまり、僕たちはこのエルリア王国に勇者召喚で呼びだされたんですか?」

「うむ、その通りだ。これが、其方たち異世界人が言うところの、異世界召喚とやらであろう」

「そしてあなたたちは僕たちにスキルを与える代わり勇者として働いてほしい、と?」

「我々は勇者に魔王や悪魔を倒して欲しいわけではない。勇者は万が一の有事への備えだ。普段は大陸全体の治安維持の一部を担ってもらうことになる」


 ……有事だって?


 優人はその言葉が引っかかった。

 魔王を倒したいわけでは無い。

 治安維持でも無い。

 だったらその有事はなんだ?

 

 優人は反射的に口を開きかけたが、まだ委員長と王の会話が続いており、聞く機会を失ってしまう。


「ですがもし僕たち勇者が……」


 その時、横槍が入った。


「めんどくせぇなぁ!スキルは!?あるんだろ?どうせみんなそっちの方が気になるんだから先にそっちをやってくれよな、王様!」


 宮原と国王の会話に口を挟んだのは不良、西田翔吾にしだしょうご

 場の空気が一瞬凍りついた。

 しかし直後、「そうだ!」「当然だろ!」と同意の声があちこちで上がった。


 優人は『有事』に関する言及は無理だと考えて、再び口を閉じる。


 ぐるりと部屋全体を見渡した王は、小さく息をつき、そして笑った。


「ハハハッ、うむ、それもそうだな。話は後にして先にスキル判定をやろうではないか。アレをここにもってこい」



 国王の機嫌を気にしていた宮原も安堵の息を吐く。

 そして部屋の隅にいた人たちが四角い何かが乗っている台を押してきて、魔術具?と言うのだろうか、そんな見た目をしたものを僕らの前で静かに止めた。

ようこそ、異世界へ

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