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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー76 魔球作成

 翌日は新しい授業が始まる。

 杖を使った魔法の発動についての授業である。


 ちなみに、スタッド作成の授業は2回だけである。

 できていない人がまだいたとしても、それ以上の授業は行われない。


 できてない人はどうするのかって?

 もちろん退学ーーっていうのは嘘で、補習だ。


 授業後、強制的に招集されて先生の前でできるまでさせられるらしい。

 身分に関係なく、出来るまで、である。


 例え相手が王族であっても、できなかったら監視の魔術具を傍に、徹夜も考慮している。


 まあ、ハイレベルな教育を受けている上級貴族は普通は授業内で何とかする。

 補習なんて上級貴族にとっては家の恥である。

 本人が許しても家が許さない。


 そのため、失敗したら勘当覚悟で死ぬ気で頑張る。


 その点、教育と、生まれながらのスペックで劣る中級と下級の貴族たちはのんびりしすぎて失敗する。

 そして補修を受ける。


 放課後招集されるのはもっぱら下級貴族である。




 ***




 さて、そんなことはどうでもよくて、重要なのは今日純恋も揃って合格をもぎ取り、明日デートに出ることだ。


 貴族学園の休日は7日おきにくるが、合格したら残った日は休んでいい。

 そして街に出て遊んでもいい。


 ようは休日が増えるのだ。



 これの何がいいかというと、ミズガルズの休日は街に人が多い。

 理由は当然、学園の生徒のほとんどが街に出ていくからだ。


 しかし、平日は人通りが少ない。

 あくまで休日と比べれば、だが、それでもデートをするなら平日がいい。





「本日は魔球の発現を目標として授業を行う!戦闘でも、普段の生活でも使うことはあまりないが、それぞれの属性魔法の基本となる技術だ。これができなければ貴族になれぬとこころえ、本気で挑むように」


 前回の授業も取り仕切っていた大柄な男性教師ーー名前をアジュールというらしい彼が今回の授業も主導で行うようだ。


 アジュール……アジュール先生の髪色はオレンジ。

 おそらく土と火の属性が強いんだろう。

 スタイルからくるイメージと、扱う属性の種類がちゃんと合致していて、ちょっと面白かった。




 ***




 魔球とは魔力だけで出来た球体。

 光の玉としか表現できない見た目をしていて、魔力で自在に操作できる。

 そしてその作り方は、魔力を集めてそれを体外に放出して、それを丸くまとめるだけらしい。


 思ったより簡単そうだった。

 だって魔力を集めて放出するだけだよ?出来るでしょ。




 まずは魔力を集める。


 この時、属性は一切関係ない。

 というか、今日の授業の進行に属性の違いは一切関係ない。


 ならばなぜアジュール先生が属性の話を挟んだのかというと、僕の手のひらに乗っている球体、僕の持っているものは中で相性の悪い闇の黒と氷の白が反発し合う危なっかしいものだが、その色だ。


 僕の持つ魔力属性の中で最も影響が強いのは闇属性の貴色である黒と、氷属性の白だ。

 僕の髪の色である。


 魔球を作った人の魔力属性によって、出来上がった魔球の色は異なる。


 ただし、制作にかかる労力は変わらない。


 強いていうなら反発し合う闇と氷だが、ほら僕はできた。

 ほんのちょっと難しいだけで、出来ないわけでは全然ない。



 ……っていうかマジでもう終わったんだけど。


 ぐるりと見回すと周りでは奮闘を続ける同級生たちの姿が。


 ……もしかして僕だけ違うもの作ったか?いやでもアジュール先生の持ってる魔球と見た目同じだしなぁ。



 どうせ聞いたら分かることだから、さっさと席を立って壇上の教卓へ魔球を持っていく。


「できました。確認してください、アジュール先生」


 2色にくっきりと分かれた魔球を見て、アジュールはわずかに目を見開いた。


「早いな。さすがは勇者と言ったところか。だが、贔屓はせんぞ?」


 そう言って魔力の塊をじっと見つめる。


「……よくできているな。それにしても闇と氷の2色か。それも割合が同じ」


「何か珍しかったりするんですか?」


「いや、君の髪色から見て、君に加護を与えている存在がかなり上位の神格ということは知っていた。だが、同じ割合というのは珍しいからな。なにしろ位階も力も全く同じという神はなかなかいない」


 神には位階がある。

 例えばラツィエルは第3神だ。


 だが、光の女神の第3神であるラツィエルと、例えば火の神の第3神である精霊の神トレヴィエーテ。

 彼らの力量差は当然ある。

 言うまでもなく、負けているのはラツィエルだ。


 魔球の色、特に反発し合う黒と白は得ている加護の量が全く同じでないと色が半々に分かれない。

 そして、全く同じ実力がある神でなければ全く同じ量の加護は与えられない。

 とどのつまり、僕に闇属性と氷属性の加護を与えたのは実力が全く同じの神ということ。


 まあ当然だ。

 加護を与えているのは主神なんだから。



「……まさか……いや、まさかな」


「どうしましたか?」


 アジュールが苦笑いを浮かべた。


「……いや、何でもない。とにかく、本日の授業は完了だ。とりあえず魔球を消せ。あとの時間は自由だから、寮に帰るなり、他の人を見るなり好きにするように」


「では、好きにさせてもらいます」


 よくわからないが、とりあえず合格なようだからいいだろう。

 魔球を消すと、踵を返す。


 その背にアジュールの声が届いた。


「優人、アルカナに愛されし者の誕生、おめでとう」


「……?ありがとうございます」


 よくわからないが、とりあえず無難な返事を返す。

 貴族特有の婉曲な表現だが、まだすぐには理解できない。

 申し訳ないが、lアジュールの言葉の意味は分からなかった。


 ……まあいっか。


 理解できてなくても今は大きな問題になりはしないだろう。


 そう考えてアジュールに背を向けた。


『主神の加護の取得しているのか!素晴らしいじゃないか!』という意味のアジュールの言葉を優人が理解することは終ぞなかった。


優人が主神の加護持ちだということにアジュール、気付きました。

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