3ー75 ひみつごと
星、ブクマをお願いします!
ディアーナの迷宮崩壊終了後、僕は崩壊を起こして迷宮の調査を単独で行った。
結果、7階層までのボス部屋の扉が壊れていた。
迷宮崩壊が起こると、1階層から順にボス部屋の扉が壊れる。
つまり、8階層のボス部屋前までの魔物が全て押し寄せてきたわけだ。
ただ、5階層までの魔物はボスでさえ真獣種上位。
間違っても幻獣種があんなに迷宮崩壊で排出されることはない。
「……やっぱり仕組まれてるな」
この災害は意図的なもの。
今回分かったのはそれだけだった。
その後は念話で届いた命令に従って王城へ赴き、側仕えに連れられてアルトムートの前で全てを話した。
詠唱について隠そうかと思ったが、【星の記憶】でアルトムートのスキルを知った。
どうせ調べれば分かるのだから、隠す意味はないと思って全部話した。
そして2時間ほどの話の後、お金と陞爵の報酬を約束されて帰路についた。
事情の説明はアルトムートが全て請け負ってくれるらしい。
正確にはアルトムートの文官が請け負ってくれるらしい。
***
8の鐘が鳴るか鳴らないかの時にミズガルズに帰還。
洗浄魔法で体を簡単に洗浄すると、そのまま純恋の部屋に直行した。
違和感はなかった。
純恋の部屋に行くことに、もはや抵抗はほとんどなかった。
ドアをノックすると遥香が顔を出した。
別に驚きはしない。
案の定って感じだ。
「何?……義兄さん」
「………」
「……何?」
「ゾワッといきなり鳥肌が……」
「殴るよ?」
一体何を思ったのか。
別に、いつもみたいに梶原って呼べばいいのに。
純恋に何か言われたかな?
「入っていい?」
「好きにして」
入っていいって言えばいいのに。
部屋にはソファーでスタッドをいじる純恋がいた。
「一応姉さんも私も杖は完成してる。けど、まだ納得できないってさっきから頑張ってる」
さすが純恋。
「純恋ただいま」
「あっ!お帰りなさい。ディアーナの戦いお疲れ様でした。行けなくてごめんなさい」
「純恋には早く杖作って欲しかったから。それに、いつでも呼べるのに呼ばなかったのは僕だし」
1人でどうにもならなかったらみんなを呼ぶさ。
それに、純恋が杖をさっさと作れたらデートとかもできるかもだし。
顔を上げて笑顔を振りまいた純恋は、立ち上がって僕の手を引くと、ソファーに連れて行く。
「遥香からちょっとだけ重要な話があります」
「知ってる。彼氏ができないって話だろ?」
「今すぐ出ていけ!!!」
安心しろ。
分かってるって。
遥香の恋愛が重要な話なわけがない。
「それで、何の話?」
「私から話す」
対面のソファーに座った遥香が腕を組んで話し始める。
「話は私のスキルについて」
***
……なるほど。
疑う気はないからわざわざ詠唱してまで【星の記憶】を使う気はないが、そうか。
そういうことか。
ようやく合点がいった。
だからか。
なるほど。
となると、いつから純恋は知っていたのだろうか。
シスコンが最愛の姉に秘密を作るとは考えにくい。
早い段階で秘密を共有しているはずだ。
「純恋はいつから知ってたんだ?」
「優人くんと迷宮で会う……7、8日前くらいでしょうか。ボスを倒す時に教えてくれたんです」
なるほど。
「『私と姉さんの秘密』と言っていたので優人くんといえど、言うのを躊躇っていたのですけど……」
「私が言っていいって言ったから」
なるほど。
よく分かった。
「その話については分かった。……信用してるけど、蒼弥と紗夜にも一応黙っとこうか?」
「じゃあお願い」
「これで話は終わりです。ちょっとこの杖みてくださいよ。優人くんの杖みたいにツタをつけてみたんですけど、どうでしょうか。ちなみに花言葉は『永遠の愛』と『結婚』なんですよ?もしかして優人くんも意識してましたか?」
「いや、知らなかった」
っていうかツタに花言葉なんてあるんだな。
あれって花なのか。
私たちにぴったりですね。
そう言って純恋が微笑む。
でもごめん、ツタって束縛とか拘束みたいな悪い意味だと思ってた。
愛で言うなら束縛愛的な?
「でもまあ、悪い意味じゃなくてよかった。結婚、早くできるといいな」
「何で他人事なんですか。私はあなたと結婚するんですよ。私はいつでも結婚オーケーですよ?」
「まだ僕の心が……」
嘘だ。
僕だって結婚したい。
けど、高校生で結婚っていうのがなんか嫌だし、この世界の基準でもこの歳での結婚はなかなかない。
婚約はそこまで珍しくはないのだが。
「まあいいです。私は待つので心が決まれば教えてくださいね」
「早めに言うよ」
できれば4年以内。
いや、3年以内。
日本じゃないんだから、高校卒業直後の結婚もいいだろう。
脳裏に描いた未来の図は、確かな形を作っていた。
アイビーの花言葉は『死んでも離れない』なので、束縛愛とか執着心とかの悪い意味も間違いではありません。ですが、一般的には『永遠の愛』と『結婚』ですし、純恋はポジティブなので、悪い意味の花言葉なんて覚えません。すぐ忘れます。