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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー71 迷宮崩壊

 基本的に、ミズガルズ貴族学園の授業は『できない奴が受ける』という方針だ。


 初っ端の授業でいきなりテスト。

 予習必須のマジのテストをいきなり行い、そこで合格したら授業は免除で、時間は自由に使っていいという形だ。

 ちなみに、試験合格したのに授業を受けるのもありだ。


 とは言え、入試と違ってスキルの使用が禁じられたこのテストで合格するのは簡単なことではないらしい。

 まだテストは実施されていないが、時間があるときにちびちび予習しとこうと思う。




 杖の作成まで終わった僕は今日の授業を欠席できる。


 だが、今日は休みたいから自室に籠る。

 と周りには言って、転移で抜け出す。



 目的地はディアーナである。




 ***




 当然のように国を跨いで街に出る。

 鑑定される機会はおそらくないので門には行かずに街を歩く。



 目的地はロキエラと純恋の3人で行った、上級迷宮。

 ここで今日一日レベルアップをするつもりだ。


 目標は幻獣種LV600。

 熾星終晶刀の能力解放を目指して今日も頑張ろう。





 異変が起こったのはそんなときだった。



 ガァァアアアアアアアアアアアアン!!


 ディアーナの鐘が鳴る。


 その音は以前教えてもらった、緊急時になる鐘とそっくりでーー



「迷宮崩壊だ!!魔物が溢れたぞっ!!!」

「逃げろ!冒険者は戦え!」

「そんなことより騎士団に連絡だ!」

「早く騎士団に!領主様に連絡を……」




 迷宮崩壊。


 ディアーナ存亡をかけた戦争の幕開けである。







「迷宮崩壊って……こんなレベルなのか!?」


 ロキエラの話と違う。



『迷宮崩壊は災害です。魔物は迷宮の魔力によって復活するのですが、倒される数が少ないと、迷宮が生み出す魔力が魔物の復活による消費魔力量を上回り、余剰魔力が溢れてその魔力を無理やり放出しようとします。それが迷宮崩壊です。しかし迷宮の魔力は魔物を生み出すことにしか使えません。ですから』


「話が違うだろ……」


『排出される魔物は多くても200体。その中で原獣種が7割を占めます』



 眼下には1000体を優に超える数の魔物の影が蠢いていた。




 ***




「手当たり次第殺ししかない」


 ここに来てしまった以上、放置して帰るわけにもいくまい。

 ここで、【固形大気】で生み出したこの足場から、固定砲台として狩りをしよう。


「予定変更。700だ」


 ついでに予定も1日巻こう。




 魔力を集めてイメージ。

 するとその手のひらには一つの杖が。


 僕のスタッドの初披露だ。


 初撃は派手に。


「【超新星(スーパーノヴァ)】!」


 星の放つ超火力。

 魔力の光がスタッドの先端に収束しバチバチと放電のような音を立てる。


 そして発射。


 次の瞬間には地面が抉れ、土埃が辺りを満たし、爆風が弱い魔物を吹き飛ばす。

 城門に風がぶつかり、轟音が響き渡る。



「魔物だっ!魔物がそこまで来てるぞ!!」

「いや、まだ来てない!何かが爆発した風が当たっただけだ!」

「冒険者は街を守れ!」


 そんな声が聞こえた。


「【宙の共鳴】」


 何もない空間に衝撃波を放って土煙を散らす。



 ーー数百の魔物の死体が転がっていた。



 それを見て悪寒が走る。



 そんなバカな。


 だってーーー



「ーー【超新星(スーパーノヴァ)】は真獣種を一撃で殺せるんだぞ……」


 元からそんなバグみたいな威力。

 それなのに数百の魔物しか殺せてない。


 スタッドのバフで今の出力は上がっている。

 それなのに……。


 ロキエラは7割が原獣種と言った。

 だったら真獣種も含めればもっと多く死ぬはずだ。


 なのに半分。

 当たって生きている奴が半分もいる。



 冷や汗が止まらない。

 500体の幻獣種?

 ーーそんなバカな……。





 門が開き、中から冒険者らしき人物が出てくる。


 数はおよそ100人。


 他の都市と比べれば多いのだろうがこの戦いにおいては足手纏いが増えただけだ。



「チッっ【空間転移】」


 今出てこられると大技が使えない。


 傲慢かもしれないが、僕が殺せない魔物を冒険者が倒せるとも思えない。

 大人しく街にいてくれた方がありがたい。



「来い、テスカ!」


 正直、テスカがいたところでどうにかなる戦況ではない。

 だが強いのは確か。


「主!これはどういうことーー」


「いいから戦え!」


 問答の時間などない。

 今はとにかく時間を稼ぐ。


 強い仲間が来るまでの時間をーー






 ーー『条件、【命の危機】を満たしました。【星】の詠唱、【進化】の第一詠唱を開放します』



 声が、響いた。




 ***




 戦場を俯瞰できる高地にある廃墟の上に二つの人影があった。


 1人は男、もう1人は女。


「本当は騎士団と共に来た異天児のスキルを()るつもりだったのですが……どうしましょうか。わたくしの目的は邪魔者の排除とそれを可能にするだけの力の収集ですので、正直申し上げますと、梶原優人はどうでもいいのですよ。盗るにしても、制御できずに暴走させてしまいそうですし」


 掌の上で灰色の半透明の板をくるくると回しながらそう呟く。


「邪魔だろ、梶原優人。面倒になる前にさっさと殺せよ。暇か?」


「失礼な。それに、これだけの迷宮崩壊を起こしましたから。いくらなんでも彼1人でどうにかできる量ではありません。冒険者が足手纏いなこの戦い、従魔を含め2人では限界があります」


 ふん、とつまらなさそうに男が息を漏らす。


「それに異天児が来なくても愛斗に任せれば今後の戦いにこの軍勢を流用できますから、無駄にはなりません。戦いたいのでしたらご自分でどうぞ。死んでも知りませんけど」


「めんどい」


「まさか負けますか?その時はお墓くらいは作ってあげましょう」


 男はひらひらと手を振り、遠慮することを告げる。



「ま、俺もしばらくはじっとしてるさ。のんびりのんびりレベルアップかな」


「でしたら文句を言わずに動きなさい」


「うざ。母親か」


 男が消え、カノア1人が取り残された。


 少女は両の指を顔の前で重ね合わせる。

 そして視線を遠くへ向け、


「さて、梶原優人。貴方にわたくしの邪魔はさせません。ですが、せっかくの数少ないわたくしと対等に戦えそうな勇者です。今は雑魚ですが……せいぜい(まみ)える日まで死なないように」


 そう呟いた。



作者は第四章に入りました!本作で最も暗くて苦しい第四章です!この作品って全体的にそんな明るくないですけど、次章は暗さマックスです。そんな空気の中面白い話になるように頑張ってます。


だからポイントください。


もう一度言います。ポイントください(最重要)。

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