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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー70 もう一つの、至高

<元勇者・天野竜聖視点>




 エルリア王国からお気に入りの神器を回収したあと、あてもなくふらふらと歩いた。


 目的地などない放浪の旅だ。

 神器を全て回収した今、エルリア王国に用はない。

 とは言え、ロルニタ帝国に行くつもりもない。


 最も近いルーンゼイト神聖国は【拒絶】を忌み嫌うだろう。

 普通は街まで鑑定されることはないのだが、かの国は国境に検問がある。

 そして検問がないところには結界がある。


 スキルを使えば抜けるのは容易だが、それをすると侵入がバレる。

 騎士団との鬼ごっこをしながらのレベルアップは面白くない。

 騎士団を殺しても大した経験値にはならないだろうし、(じき)に異天児が送られてきて僕を捕まえるだろう。


 異天児と戦うのはおいしくない。

 タイマンならなんとかなっても2人いれば負ける。


 まだ僕は弱い。


【創造】なら難なく勝てただろう。

 だが、【拒絶】そうもいかない。


 まだもう少し息を潜めよう。




 ***




 エルリア王国王都・エラルシアを離れておよそ1ヶ月。

 国境を目に捉えた。



「着いたか……モスターサ」



 大陸北端・モスターサ王国である。




 この国は寒い。

 北端なのだから当然だ。


 しかし、だからと言って貧しいわけではない。


 この国には大迷宮が存在していた。


 大陸最大級の迷宮。

 発見されている階層は既に100層を超える。

 原獣種から始まり、地下洞窟の先には既に天獣種までもが見つかっている。



 ここにきた理由はもちろん、レベルアップだ。

 天獣種をとりあえずの目標として、僕はこの地で力を蓄えることにした。




 ***




「いい物みっけ」


 それから5日後、迷宮都市メメントモリに到着。

 そこでいいものを見つけた。


「これを金にしよっか」


 それはマジックバック。

 どこにあったかと言うと、当然ながら知らない冒険者の腰だ。


 汚れた服装から見て、迷宮から帰ってきた奴らだと思ってスってみたんだ。



 彼がなぜ犯罪ごとにも通じているのか。


 別に犯罪に加担したことはない。

 少なくとも日本では、ない。


 それならなぜできるのか。

 だって天才だから。



 理不尽なまでの才能。

 出原奏を優に超える才能の塊。

『才能』の2文字が全てを可能に変えていく。


 天野竜聖はそんな人間だった。





 思った通り、数個の魔石とお金が入っていた。

 中銀貨一枚分(1万円)あるかどうかという量だけど、ないよりマシだね。



 その金で食べ物でも買おうかな。


 1ヶ月間、魔物の肉と川の水で凌いできたからそろそろ食べ物にありつきたかった。



 次の日に冒険者カードを作り、体力を回復。


 翌日には迷宮に入った。



「弱いねぇ」


 勘で進んだら目の前にボス部屋。

 中のボスを1秒足らずで瞬殺。

 そのまま第二階層に進む。


 迷宮入場から2階層進出までたったの300秒。



 そのまま2階層目を駆け抜けてボスを討伐。

 その秒数は驚異の500秒。



 前の階層と同じように、ボスは瞬殺。

 神器もスキルも必要ない。


 原獣種上位に到達している僕を下位の魔物が止められるはずもない。


 その道筋には血の跡が途切れることなく続いていた。





 大体3時間。

 疲れを知らずに走り続けた肉体にそろそろ限界が見え始めた頃。

【痛覚麻痺】のスキルのせいで天野竜聖の限界は本当に死の間際の限界である。



 そんな時、彼はボス部屋にいた。


「こいつ倒してひとまず終わりかな」


 そんなことを呟きながら、盗んだマジックバックの口を僅かに緩める。


 ああ、この感覚だよ。

 久しぶりだ、懐かしい。




「ただいま、『神去(かむさり)』」



 神をも殺す至高の神器。

 それは難解複雑な魔力回路と、数多の魔法の結晶体であった。


 天才ゆえの思考なのか、彼は条件付きの物が好きであった。

 戦うならば罠で戦う。


 多くの罠を張って、その奥で自分は悠々と待つ。

 その戦闘スタイルが好きであった。


 そして、難解な条件術式を用いた高度な魔法が好きだった。



 神器『神去』。

 これはその条件術式を限界まで詰め込んだ、魔法の結晶である。



 さあ、200年ぶりの舞台だ。

 派手にやろう。



「来い」


 魔物にそう言い放ち、『神去』という名の大鎌を掲げた。



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