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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー3 後悔と再起

 噴水のように噴き上がる血飛沫

 飛び散る肉片

 血を浴びて真っ赤に染まった僕

 そして死体




















 あの時の光景が蘇る。


「あ、あ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


 ()しくもあの時と殆ど同じ光景だった。





「あっ、あっ、あああああああっ、ぁぁぁぁぁぁ」




 思い出さないようにしていた。

 辛くなるから。



 考えないようにしていた。

 涙が止まらなくなるから。



 無意識に頭から追い出していた。

 それ以外何も考えられなくなるから。






 考えてはいけないと、直感が告げていた。




 何か大切なモノを失うと思った。





 だから忘れていた。

 否ーーわざと忘れたフリをしていた。



 あの日ーー決意を固めた日も、目を背けていた。

 蓮斗が死んだのに。

 そのことから目を背けた。



 決意だって?

 笑わせるなよ。

 親友が死んだのに、そんなことより決意とか、巫山戯る(ふざける)な。





 思い出したくなかった。



 信じたくなかった。


 夢だと思いたかった。

 だから、幻だと頭に叩き込んだ。




 でも今になって思い出した。

 現実だと認識した。

 忘れられるわけがなかった。

 逃げれるわけがなかった。

 あんなこと。



 嗚咽が、

 涙が止まらない。




 あの時の、

 無慈悲に、一瞬にして命を刈り取られたアイツを思い出す。



 笑っていた。直前まで。

 話してた。僕と。他愛もない話を。

 信じていた。今までと同じような、大変だけど、充実していて、いつまでも笑い合える日々が続くと。



 でもそうはならなかった。

 今まで歩んできた幸せの道は砕かれた。

 今の僕は糸の切れた凧。




 意味も、意義も、目的も、何一つ見つからないのにみっともなく足掻いている。

 何の役にも立たないのに。

 アイツを救えなかったのに。


 涙が、止まらない。























 顔を上げた。

 涙を拭う。


 そして立ち上がる。



 拳を握る。爪が食い込んで血が滲む。それでもまだ力を込める。

 強く、強く握りしめる。



 もう何も失わないという決意をするかのように。



 唇も噛み切ったようで口の中が鉄のような不愉快な味で満たされる。

 でも、痛みは感じなかった。


 怒りのままに拳を握りしめーーふっ、と力を(にが)す。




「それじゃダメだろ」



 苦笑が漏れる。


 多くの友を失った。

 でもそれと同じくらいの多くの友が残っている。



 助けられなかった人がいる。

 でも、助けられた人もいる。




『ありがとう』と言ってくれた人がいる。




 意味が無いなんて言ってはいけない。

 まだやるべきことは残っている。



『自分が代わりに死ねばよかった』なんて言葉は言わない。

 そんな言葉は失礼だ。


 それは僕らに後を託して死んだ人たちへの最大の侮辱だ。



 もう逃げない。

 もう迷わない。

 もう負けない。

 もう何も失わない。

 もう誰も死なせない。



 闘う。



 これ以上誰かが傷つくことがないように。

 もう誰も理不尽で何かを失わないように。

 もう誰も不条理によって涙しないように。






 決意する。


「僕はみんなを守る。みんなの幸せのために全力を尽くす。僕はもう誰も悲しませない。もう誰も失望させない」



それは歪んだ夢。


何かを失い、何かを得て。

その果てに手に取った誰かの願い。


自分ではない。

他人のいつかの願い。


それを知って尚、彼は歩みを緩めない。


だってーー


「ーーだってアイツの願いだからね」


彼はそう口にした。

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