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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー67 心酔

 数十秒後、コンコンとノックの音が聞こえてきた。


 アルメフィアが返事をすると、4人の人が入ってくる。


 4人はそのままアルメフィアの前まで来ると片膝をついて礼をする。

 両手を胸元で重ねて頭を下げる、貴族の礼だ。


「勇者歓迎の式以来ですね、アルメフィア様。お元気なようで何よりです」


 先頭にいる男、おそらくヴィユノークが代表して挨拶を交わす。



 ヴィユノークは第一印象、チャラそうな男だった。

 言葉自体はきちんとしていて、礼儀も様になっているのだが、どこか浮いている感じがする。

 キラキラ光る若葉色の髪が一層その雰囲気を掻き立てていた。


 とはいえメフィアが選んだ側近。

 今は口出しすまい。

 疑問は後だ。


 彼の左後ろにいるのがルーナだ。

 彼女が僕を覚えているかは知らないが、僕の方は記憶の端の端になんとか残っていた。


 一応小さく笑いかけてみると、相手も笑い返してきた。

 どうやら覚えていたらしい。

 記憶力のよろしいことで。



「優人、純恋。先頭にいるのがヴィユノークで、後ろにいるのが左からルーナ、ミーア、レインミルですわ。ルーナはわたくしの従姉妹ですの」


 フェルテがアルトムートの義弟だもんな。


 その後新しく側近入りした4人に僕らのことを伝える。


「これで側近の紹介は終わりですが……何かしておきたいことはありますか?」


 とくに話すことはない。

 他のメンバーも同じのようで、首を振っている。


「では本日から側近としてよろしくお願いします。場合によっては増減するかもしれませんが、その時は上手く対応して下さいませ」


 怠けていると追い出すぞ、と釘を刺す。


「ですがわたくしが初めに声をかけたということは、あなた方の力を見込んでのことです。皆の活躍を期待しております」


 それから信頼している、と笑顔で告げる。

 アメとムチ作戦である。


 それに対して


「誠心誠意、お仕えします」


 4人は再び礼をした。


「優人、純恋。ヴィユノークは見た目がアレですけど、実力は本物です。特に優人は同性として仲良くしてくださいね」


「分かりました」


「見た目がアレってなんですか。ひどいですね、私はいたって真面目なのですが」


 衝撃。

 西田が人助けをしているところを目撃した時くらいの衝撃。


「私は感激しているのです。ひどい蔑称で蔑まれてきたアルメフィア様がこれほどまでのご回復を見せ、堂々としておられる。以前、勇者歓迎の席で目にした時、私は悲しかったのです。神に祝福されたはずの方がこうもひどい扱いを受けて心を閉ざしてしまわれたことに!それが今はどうでしょうか!学園に仕組まれた圧倒的な不利な交流試合、勝っても偶然だと言われ、負けるとさらにひどい罵詈雑言を浴びせられることが決まっているアルメフィア様見せた堂々とした御立(おたち)!これが感激せずにいられるでしょうか!」


 全員引いていた。

 褒められているはずのアルメフィアでさえ引いていた。

 こういうやつだとは思わなかった。


 ドン引きである。


「ならよかった。共にアルメフィア様を支えよう」


 恍惚(こうこつ)とした表情で滔々(とうとう)と語るヴィユノークにとりあえず無難な言葉を返してやる。


 もれなく僕も、引いていた。


「なぜ皆様は私のように思わないのでしょう。私が問いたいです。神に祝福された印であるスキル、多くの貴族による陰口に屈しない強いお心、才能と多大な努力に裏付けられた膨大な知識、そして魔法の才能!これほどまでに神に愛された者が他にいるのでしょうか!」


 まだまだ終わらない。

 ヴィユノークはさらにヒートアップする。


「私は今年4年生、つまり今年で卒業です。そんな年、貴女様はご入学を果たされた。これこそ奇跡!奇跡の女神アルカナのもたらした最大の奇跡!私はーー」


「ヴィユノーク様はしばらく1人で語っておいてください。アルメフィア様、側近同士顔合わせはこれで終わりでしょうか?」


 誰も止めないこの混沌(カオス)を前にルーナがとうとう口を挟む。


「ええ、一応。それから皆に伝えます。ヴィユノークも聞きなさい」


 ぴたりと音が消える。

 どれだけヴィユノークの声がうるさかったのかよくわかる。


「まず、側近同士の様付けの禁止です。身分に差こそありますが、側近の中で序列を作るつもりはありません。全員様付けはやめなさい」


「仰せのままに」


 ヴィユノークが即座に応じる。

 続いて僕を含めた残りのメンバーが同じように了解の返事を伝える。



「それから、優人と純恋は勇者ですが、この場では一学生であり、一側近です。ですから特別扱いは不必要です。これが2人の意思ですので、他の皆も了承ていただきたいです」


「アルメフィア様のご命令とあらば!」


「わたくしではなく、2人の意思です」


「どちらにせよ私は了承します」


「わたくし達も同じくです」


 全員の了承を経て、ただのアルメフィアの側近として扱われることに決定した。


「最後に、もし誰の側近にもなっておらず、新たに側近に加えるべき人員が見つかった場合はわたくしに伝えてください。他の貴方達の意見を聞きながら考慮します」


 全員の返事が返る。


「では側近の顔合わせは同じです。本日、わたくしはずっとこの部屋にいるつもりですので、これから貴方達で仕事の割り振りや必要なことについて決めてください。その後はできるだけこの部屋でできることを各自してください。ここで勉強しても構いません。ああ、出て行くのならば、ルーナとミーアはどちらか1人残っておいてください。流石に側仕えに同時に抜けられるのは困ります。では」


 顔合わせが終わり、各自の行動が始まった。

星をください!ブクマ頼んます!

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