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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー58 変化と好転

 月日は流れ、1ヶ月後。


 迫りに迫ったミズガルズ貴族学園入学式。

 僕らは3人でヴァイスターク王国の寮にいた。


 場所はアルメフィアの部屋。

 3人とは言わずもがな、アルメフィア、純恋、それから僕だ。


 ここ暫く蒼弥と紗夜とは会っていない。

 奏とはもっと会っていない。


 今頃何をしているだろうか。



 明日に入学式を控えた夜。


「2人とも明日が入学式ですねっ。楽しみですっ!」


 呪いの姫君の面影はどこにもなく、溌剌(はつらつ)とした1人の少女がそこにいた。


「はい。明日のためにも今日はこれで」


 男である僕が遅くまで女性の部屋にいるのは外聞がよくない。

 別に何かあるわけではないが、疑われることをするのがNGだそう。


 まだ8の鐘も鳴ってないが、僕らはさっさと撤収した。



 日のない夜はアルメフィアの天下だ。

 僕らがいなくても問題ない。


 時間不足で幻獣種には至れてないものの、すでに彼女は真獣種上位。

 日中でも、歩くくらいならば問題ない力を手に入れた。


 追加で、宮原が協力を申し出て、【奇跡煌淵(ラピスメノウ)】によって、吸血鬼が好む【日光耐性】の補助スキルを得た。

 しかも奇跡が起こって取得直後からマックスレベルのLV10。


 それでもステータスの減少率は70%近くに上るが、普段の生活に支障はなくなった。

三頭霊獣(サーベラス)】の出力減少は70%から60%近くまで戻り、活発さを取り戻した。


 アルトムートの任務をきっちりこなせてひとまず安心である。




 アルメフィアの部屋から出た僕らが向かうのはヴァイスターク王国寮で与えられた自室だ。


 この寮へは昨日の昼、馬車で到着した。

 昨夜は寝る前に2人で雑談を交わしたのだが、今日は明日忙しいということで、廊下ですぐに別れて自室に戻った。



 明日は早い。

 入学式自体が早めだからそれに伴って起床時間も早くなる。


 明日は護衛仕事も忙しい。

 早く休もう。



 灯りの魔術具を止めてベッドに横になる。


 幸いなことに、睡魔は早めに訪れた。




 ***




 翌朝、3の鐘の頃。

 およそ8時ごろ。


 すでに僕らはアルメフィアの部屋にいた。

 普段の起床が3の鐘を超過することを考えると、身だしなみも含めて3の鐘は結構な早起きだ。


「私側仕えに加える人たちの候補です。覚えられるだけ覚えてください。おそらく必要になります」


 そう言って一枚の紙をテーブルに置いた。

 反対側のソファーに腰掛けていた僕らは揃って覗き込む。


 普通は護衛仕事中にソファーに座っていることは問題なのだが、立っても座っても護衛に差はないし、常に【空間探知】で警戒しているので大きな問題はない。

 更に、今はまだアルメフィアが幻獣種に近い力を持っていることから、アルメフィア(彼女)が許可を出した。


「出来るだけ覚えます」


 そう言って純恋と2人で記憶を分担。

 僕が6人、純恋が4人覚えることにした。


 それでも、三つの節でできている貴族の名前を家名と爵位まで含めて覚えるのは至難の業。


 時間ギリギリまで暗記に費やした。




 各々別のことをしながらおよそ半の鐘。

 4の鐘に集合なのだが、時間ギリギリもまずいので移動を開始。


 王族の部屋は警備の観点から、寮の入り口から最も遠い。

 早く移動して損はない。




 目的地はミズガルズ貴族学園の大講堂。

 数千人を収容可能な大講堂に全校生徒を集めて校長からの挨拶がある。


 そこに向かってトコトコ歩く。


 大講堂までは各自で移動、講堂に(もう)けられたヴァイスターク王国生徒の場所まで行かなければならない。

 アルメフィアを2人で挟むようにして移動をする。


 こんなに人が集まったこの場所でちょっかいをかける奴はいないと思うが、念のためだ。


「初めまして、異天児の姫君。今日のご体調はいかがですか?寮で休まれなくてもよろしいのですか?」


 なぜこうも見事にフラグが当たるのだろう。

 いくらなんでも大国の姫に初日からちょっかいかける奴がいるとは思わなかった。


 貴族の言い回しは難しくて面倒臭い。


 それでも覚えたから分かる。


『呪いの姫がこんなところで何してんだよ?さっさと帰って寮で1人休んでろよ』

 目の前の黄色の髪の男はそう言った。


 ふむ、害悪だな。

 さっさと退場してもらおう。


 そう考えて空間転移を用意してーー


 さっ、とアルメフィアが手を挙げて待ったをかけた。


「今日はいつもより体調がいいんですよ。今日くらいはわたくしも頑張らなくては」


 そして弱々しい返事を返す。


 ……わざとだな。自信がないわけじゃない。わざと弱く見せてるな。


 数週間を共にしたから分かる。

 彼女はこんなところで弱音は言わない。


 それでも弱音をはいたということはわざとだ。



 男とアルメフィアは適当に言葉を交わした後離れて、各自の国の場所へ向かった。


「優人、純恋っ」


「なんですか?」


「敵を作ってばかりではいけません。うまく受け流す(すべ)も学ばなくては、いつか困ったことになりますよっ」


 そう、悪戯っぽい笑みを見せた。


 今日、一つ学んだ。


 もっと受け流すことを考えよう。


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