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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
169/247

3ー57 呪いの姫君

ランキング表は入学する全生徒の結果が載っています。

ヴァイスターク王国の生徒のランキングではなく受験者全体のランキングです。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<ミズガルズ貴族学園実技試験結果>

 1位 綾井純恋(治癒)

 1位 綾井遥香(攻撃)

 1位 オルガ・テトラ・ノエイデン(防御)

 1位 梶原優人(攻撃)

 1位 九重蒼弥(攻撃)

 1位 小見山紗夜(治癒)

 7位 エニアド・リィ・オルトクラフ(補助)

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 33位 アルメフィア・ユノ・ヴァイスターク(防御)

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……バカじゃねぇの?」


 1位が6人とかマジでバカじゃねぇの?


 別に文句があるわけではないが、それでも一言言いたくもなる。



「そんなことよりもさ、代表挨拶とか無いよね?紗夜そういうのは無理だよ!?」


 1位が6人を『そんなこと』という紗夜。

 両方一位の彼女にしか浮かばない悩みの相談がちょっと……なんというか、天然で言っているのなら、ちょっとうざかった。



 どうだったっけ、と悩んでいると蒼弥が


「生徒の挨拶はないって言ってたろ?」


 と言った。

 それを聞いてあからさまに安心する紗夜。

 そんなに挨拶嫌なのか。



「優人くんの試験はどんな感じだったんですか?」


「まあ……普通に壊しただけだな。あ、お前らが試験で何やったか当ててやるよ。純恋が【浄化】で自傷行為自体をやめさせて、遥香が【インフェルノ】で壊して、蒼弥が強度落としてぶっ壊して、紗夜が自傷するなって命令したんだろ?」


「お、正解!」

「私のも当たってます」

「別に分かって当然って感じだろ」

「なんで分かったの?」


「いやそりゃあお前らのスキル考えたらわかるだろ」




 そんな感じで雑談が続く。


 暫く適当に時間を潰した後、僕らは解散、部屋に戻った。




 忙しいのはここからだ。

 アルトムートに言われた用事が残っている。


 王女アルメフィアとの面談だ。




 ***




 試験の時は暑苦しいのでラフな格好をしていたのだが、王女に会うということで、青と金の模様入りの黒基調の服に着替えた。

 そして純恋と合流。


 部屋を知らないので側仕えの人に聞くと、なぜか側仕えの人にアルメフィアの部屋だけ教えられて2人で行けと言われる。

 いつもなら親切な側仕え達の顔が微妙なのが妙に印象的だった。



 言われた場所は城の本館の3階。

 その角部屋の隣の部屋だった。


 ノックをして名乗ると、側仕えらしき人が内側から扉を開ける。

 その女性側仕えの顔をすれ違いざまにちらりと見る。


 その顔もあまりよろしくなく、中にいる主人をいやに気にしているようだった。



「アルメフィア様は奥におられます。主がお待ちです」


 指示通りに奥に進む。

 扉前にいた側仕えは、これ以上はついてこなかった。



 一度ノックしてから入る。

 中央にソファーと可愛らしい楕円のテーブルがあり、全体的にカーペットと色鮮やかなタペストリーで飾られた女の子らしい部屋だった。



 そのソファーに1人の少女が座っていた。

 初対面の人と会うにはいささか簡素に思えるような簡単な水色のドレスを身に纏った華奢な少女だった。


 その少女が立ち上がって一言。


「出ていきなさい」


 う〜ん、無理☆




 ***




「お父様に何を言われたか知りませんけど、今すぐ出ていきなさい」


「そのお父様に会って来いって言われたんだけど?」


「ーー!?…………座りなさい」




 この様子だと、アルトムートは彼女に僕らが会いに来ることを伝えてないのかもしれない。

 でも、何も聞かずに部屋に入れてくれたあたり、側仕えには共有されているようだった。



 ……いや、あの側仕えは主人(あるじ)が待っている、と言った。


 ということは、アルメフィアは誰かが会いに来ることは知っていたが、誰が来るかは知らなかったのか。


 それはアルトムートの故意か、側仕えの怠慢か。

 まだわからないな。



「アルメフィア様でよろしいですか?」


 確認のため、そう問いかける。

 まあ、間違いがあるわけないが。


「ええ、あっています」


 父親の話を出したからか、いくらか口調が柔らかくなった。


「僕と彼女はアルトムート(ミュトス)の命令で貴女の護衛騎士になりました」


「聞いておりませんわ」


 やっぱりか、と思った。


「僕らは命令されただけなので、詳しいことはミュトスに確認してください」


 アルメフィアが何を言おうが構わない。

 だって僕らは王の命令でここにいる。

 彼女が嫌だろうが、拒否権はない。


 嫌なら彼女がアルトムートに直談判するしかない。



 ……アルトムートの話、適当に聞いたけどもっと真剣にすべきだったかな。


 目の前の少女の表情を見る限り、あの話はだいぶ真剣なものだったようだ。



 側仕えの様子がおかしかったのもアルメフィアの部屋に行くことを告げてからだ。

 間違いなく今回の件が原因だった。



 皆から避けられる王女。

 その異常がどれほどおかしなことか。



 ……その理由がアルメフィアの特異性、か。



 護衛騎士任命後、もう一度僕はアルトムートと会った。

 その時は純恋も一緒にいて、3人ーー実際にはロキエラがいたが、3人で話し合った。


 その時に言われたことこそ、王女アルメフィア特異性。



 正確には、



()()()()()()()()()()()()()()()()



 異天児、アルメフィア。

 別名、呪いの姫君、アルメフィア。






 彼女は信じられないほど病弱だった。


 スキルという神の天稟(てんぴん)を一身に受け、祝福の子として迎えられるはずだった。

 才能ある稀代の王女として皆から認められた存在になるはずだった。

 人が集まり、()えある異天児として衆目(しゅうもく)を集めるはずだった。


 だが、未来は1人の幼女の未来を粉々に砕いた。


 彼女の存在を。

 彼女の才能を。


 真っ向から否定した。



 世界は、そのスキルは日の(もと)を歩く者としてのその存在を否定した。


 スキル【三頭霊獣(サーベラス)】。


 自身の弱体化を織り込んだ異色のスキル。


 そのスキルが持つただ一つの弱体効果。


 その名も【闇を歩む者】。


 その効果は日の光にさらされた時、自身のステータス、スキルの出力を低下させること。


 ()()()()()()()()()6()0()%()


 その上スキル出力は30%の低下を強いられる。



 代わりに得たのは夜間の圧倒的な力。

 その体に日が照っていない時、真価を発揮した彼女は原獣種である今でさえ、スキル無しで幻獣種下位を難なく倒す。


 上乗せされる【三頭霊獣(サーベラス)】。

 スキルを使った夜間、彼女の力は幻獣種たる優人に届く。


 反論の余地を許さない夜の覇者。




 ーーその代償に、彼女は日の下を歩むことを否定された。


 昼間に外に出ようものなら1分経たずに倒れ伏すような圧倒的弱さ。

 日光の届かない部屋の中にいても、アルメフィアは10歳以下程度の力しか持つことを許されない。


 いつしか人々はその力を不治の呪いとし、呪いの姫君と呼ぶようになった。



 ならば強くなればいい。

 そうなのだが、民の模範となるべき王族に夜間の迷宮行きは許されない。


 隠れていけばいいのだが、呪いの姫君の名が広まっているアルメフィアは平民からも嫌われている。

 迷宮の門番に見つかって言いふらされることが目に見えていた。

 一度迷宮行きが見つかれば、王家の名声は一気に失墜する。


 いくら子を大切にする王夫妻でも、軽々しくこの案件を処理できなかった。




 しかしアルトムートは奇跡を感じた。

 それが2人の勇者の存在。


 勇者、綾井純恋。

 そして勇者、宮守加那。


 浄化と奇跡を冠する勇者。


 アルトムートは2人の力で弱体化効果を打ち消すことを考えた。


 結果、宮守は失敗。


 なぜならスキルは基本的にスキルの効果に干渉できない。

 奇跡という不安定なものを操る【奇跡煌淵(ラピスメノウ)】は尚更その傾向が強かった。


 残りの綱は一本だけというわけだ。



 だから呼ばれた純恋。

 根本的な解決にはならずとも、少なくともレベルアップの手助けを頼みたかった。

 呪いの効果は打ち消せないがある程度の中和ならできる可能性があった。


 優人は純恋を同行させる許可を欲したが、アルトムートは元から純恋を呼ぶつもりだった。


 そして、優人を呼んだ理由。

 それは護衛の他に、アルメフィアのレベルアップイベントの主導。


 別にアルトムートは純恋が弱いと思っていたわけではない。

 自分より弱いとは思っているが、人間の中では強い部類に入ると考えている。


 だが、獣種一つ分以上弱くなるアルメフィアが最低限身につける必要があるのは幻獣種の位。

 それでも昼間は真獣種下位になるわけだから、幻獣種が最低ラインだった。


 そのためには幻獣種討伐が必須。

 時間をかけられない以上、幻獣種なりたての純恋1人に任せるにはやや心配があった。




 更に、呪いの姫君という事実無根の噂のせいでアルメフィアはたびたび嫌がらせを受けてきた。


 学園でどんな噂が流れるか分からない以上、万全にしておきたいのだそう。



 兄であるオルテノートはうまくミズガルズで立場を築いたが、アルメフィアはそうはいかないだろう。

 呪いの噂のある令嬢には、たとえそれが王女でも近づかないものだ。


 時には被呪者であるという理由だけで危害を加えようとする輩もいる。

 真昼間から襲いかかってくる彼らに対抗するために僕らを護衛に加えた。


 そして代わりに僕らは王女の護衛騎士という名誉を得た。

 アルメフィアの名誉が回復した時、その称号は最大級の光を放つ。


 アルトムートは本当にいい取引をした。


 さあ結論をどうぞ。

 できることなら、護衛させてほしい。



「分かりましたわ。貴方たちを護衛騎士と認め、父であるミュトス・ヴァイスタークの命に従います」


「「よろしくお願いします」」



 斯くて1人の不幸な姫君の元に2人の勇者が集まった。

 神に祝われ、呪われた3人の行く末がどこに続いていつのかを知る者はまだいない。


紗夜が呼ばれなかったのは、絶対の命令は結界をでたら解除されるからです。

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