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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー54 ミュトスの願い

 翌日から騎士団の訓練にタイミングよく現れてヴァイスと戦おうと思っていたら、邪魔になるから行くなとアルトムートから釘を刺された。


 いや違う。

 杭を刺された。

 それも超巨大なやつを。


 言い出しっぺが禁止をかけてきたことに思わず反論すると、どうやら僕専用の禁止命令らしい。

 なんでも、僕が戦うと訓練場が使えなくなるからだそうだ。



 どうやらアルトムートはディアーナに行く途中の森ーー正体不明の敵と戦った場所が酷い有様になっていることを全部僕がやったと思っているらしい。


 正確には敵9.9割壊して残りを4人で壊したんだから責任も4分割のはずなのだが。


「何で僕だけなんだ?」


「アホなこと抜かしてないで試験勉強しろよ」


 共犯の蒼弥(おまえ)はそう言うのか。

 クソォ〜



 僕の部屋には蒼弥に加え純恋と遥香、紗夜がいて、5人で受験勉強に勤しんでいる。

 あと1年半の猶予があったはずの受験がまさかの一ヶ月後に迫ってきているのだ。



 数学は簡単なのだが、歴史と神様関連の事情がとにかく複雑なのだ。

 ラフィカノー公国にある学園に9ヶ国ーー今は7ヶ国の生徒が集まるせいで、自国の歴史だけでなく7ヶ国分の歴史を覚える必要がある。

 高校の世界史でもここまでの知識量は求められないだろう。


 しかも普通は10年かけて覚える内容を2ヶ月で覚えろという暴挙。

 しかも自分で選んだことであるがために拒否権は無し。


【進化】がなければ詰んでいた。



「優人はスキル補正で記憶早いんだからさっさと覚えて俺らを助けろよ」


「純恋優先だけど?」


「うぜぇ」「死ね」


 遥香の一言に心が抉られる。


 コイツは事あるごとに僕の心に大鉈を叩き込んでくるのだ。

 理由は言うまでもない。


「彼女優先は当然でしょ」


「は?」「リア充になって調子乗りやがって」


「……」


 やめて!僕のハートはもうゼロよ!


「ありがとうございます、優人くん。分からないところがあれば教えてもらいますね」


 うん、やっぱり純恋は天使だ。

 そう言われると頑張らないわけにはいかない。


 割と単純な優人である。




 ……えーと、神には序列があって、ラツィエルは本当に3位か。光の眷属の1位が奇跡の女神で2位が運命の女神か。


 僕に加護を与えている星の神は少々特殊な立場にいるようだ。

 光の女神と闇の神共通の眷属であり、他の主神を束ねる立場にある。

 主神でないにも関わらず、光と闇を除く主神を超えるような力を持っている神だ。


 ……何で星の神の加護持ってるんだっけ?


 祝福の儀の時ではなかったはずだ。


 あれは確か……熾星終晶刀を得た時。

 あの神器が星の神をイメージして作られてんだっけ?

 だからなのか?


 だったら天野竜聖様様だな。




 星の神の加護は誰もが欲しいと言う加護だ。


 闇と光の眷属で、他の主神を纏めるという立場から、星の神の加護があれば全ての属性の魔法が少なくとも一定基準以上では扱える。

 つまり多才なのだ。


 その上で魔力増幅効果のある祝福付きだ。

 欲しくならないわけがない。



 ……勉強に戻ろ。進まねえ。



 神は神能が使えて、それが分たれたものがスキルなのか。

 確かラツィエルの神能が【神秘を司る者】だったはず。

 あれの一部をスキルとしてあげてるってわけね。


 それから、世界には1人ずつ神がいて、その神が世界を管理しているって感じか。

 この世界はラツィエルがその管理をする神ということだろう。


 そんな感じで休憩しつつ勉強すること7時間。

 本日の勉強会は解散となった。


 まだまだ不足感は(いな)めないが、スキル持ちは実技でその力を見せればいい。

 非戦闘系はそうもいかないが、僕の場合は関係ない。



 貴族の学校に異天児なら特別入学できるシステムがある。

 僕らにはそのルールが適用されるため、座学で多少悪くても何とかなるのだ。


 一生懸命勉強しているであろう貴族の子女には申し訳ないが。




 廊下で純恋と別れて部屋の扉を開く。


 中にいる男と視線が交差する。


 僕は何も言わずに扉を閉じた。

 嫌な予感しかしなかったから。


 踵を返して元きた道を戻ろうとした時に自室のドアが勢いよく開いて、男が出てきた。


「……何でいるんですか、アルトムート様」


 ため息を隠さずそう言った。




 ***




 なぜか僕の部屋にいたアルトムート。

 そして彼に付き従う側仕えロキエラ。


 ……ここ僕の部屋なんだけど。


「其方に折り入って頼みが「いやです」ある……」


「碌でもなくないミュトスのお願いなんてありませんよ」



『ミュトス』は王の敬称だ。

 アルトムート王と呼ぶ代わりにミュトス・アルトムートと呼ぶ。

 これを短縮して単にミュトスと呼ぶこともある。

 随分と前にサディークに多分教えられていて、2週間ぶりに今日思い出した。



「話を聞くだけでもできぬか?」


 ちょっとだけ興味を持った。

 アルトムートにここまで下手に出させるその『お願い』がどれほどのものなのか気になった。


 それに拒否権は自分にある。

 話を聞くくらいならば良いだろう。


「話は聞きます。お願いって何ですか?」


「我が娘、アルメフィアが其方らと共に学園に入学する」


「はい」


 嫌な予感しかしない。


「アルメフィアの護衛騎士になる気は「ありません」ないか……」


 即答だった。




 ***




 アルトムートはゴネた。

 王あるまじき言葉をつらつらと並べてゴネにゴネた。

 ゴネて懇願してーー






「条件付きで護衛をします」


 ちゃんと結果を残していた。


「条件とは?」


「純恋が望んだら純恋も護衛に加えて「許可する」ありがとうございます」


 こっちも即答だった。


「本人に聞かなくて良いんですか?」


「なに、アルメフィアが心配で私が勝手にやっているだけのことだ」


 世間は彼を親バカという。



「いいでしょう。護衛をします」


 期間は最大で一生。


 ただし、無理ならやめて構わないらしい。

 ならば貸しを作っても損はないだろう。


 そういう感じだ。


「其方の配慮に感謝する」




 ***




 純恋も交えた話し合いの(のち)に、僕と純恋が2人揃って顔すら覚えてない王女アルメフィアの護衛に就くことが正式に決まった。


天野竜聖は熾星終晶刀の作成者です。

忘れてるかもしれないので一応書いておきました。

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