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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー48 異天児

もうしばらくアルトムート視点が続きます。

だって今の優人視点面白くないもん。


危機の影さえなく突き進む優人たちの足が止まるのはまだまだ先です。

彼らの足が止まるまでしばらくサブキャラ視点です。

ラフィカノー公国に到着した今日。

私は異天児を拾った。




***




星の間経由でラフィカノー公国入りを果たした我々はすぐに別れて各国に設けられた屋敷に馬車で向かった。


王が再び(まみ)えるのは2日後。

何をするにもとにかく遅いのが貴族共通の特徴である。


連れてきた側仕えに命じて服を着替える。

もちろん隠れて都を巡るための目立たない服だ。


これを着させるように命じるたびに側仕えは心底嫌そうな顔をするが、それにももう慣れた。

側仕えの方も半分諦めている。


着たのは茶色を基調とした粗末な服である。

国の国力具合によって平民の服装も変わってくるのだがこの服はどの国の平民街で着ても目立たない色合いと、粗末さ具合で作られている。

さらに、生地の裏に防御用の魔法陣も敷かれており、万が一の対応もできる。


……とはいえ、天獣種たる私を傷つけられる者がこの程度の魔法陣を突破できないとは思えぬがな。


ないよりはマシだろう。

それに、これがあれば部下たちが僅かに安心するようだ。

その結果、平民街に行きやすくなる。



彼の行動理由は全て『自分のため』に帰結していた。



まあ、部下からしても別にいいのだ。

こういう場面で王あるまじき行動をとるとはいえ、やる時はやる主人(あるじ)だから。


『縛らずに放置、放し飼いした方がアルトムートは力を発揮しそう』そんな謎の空気がアルトムート側近衆には流れていた。



「では行ってくる。留守は任せた」


一言そう告げると、魔法で去年見つけた路地裏あたりに転移する。

そして何食わぬ顔で路地から出てーー


「む?」


誰かの声が聞こえた気がした。

場所は路地のさらに奥のようだ。


うまく聞き取れないが、誰かの怒声とそれに反論する小さな声に聞こえた。


ここから去るべきだ。

人に不用意に関与すると自分の正体がバレる可能性がある。


一刻も早くここから逃げるべきーー




ーーなのだが。


アルトムートは興味を持ってしまった。


『あらゆるものに興味を持ってしまう』

これが彼の悪い癖である。


足跡解釈(ヴァーサイゴ)】という過去改変の力を持つが故に、万が一があっても死ななければどうにかなる。

どうにかなってしまうのだ。


顔を見られても記憶を改変できる。

腹を刺されても刺されてないことにすればいい。


ただただ痕跡が残っていれば、アルトムートの勝ちだ。



だからこそ、ついつい足を進めてしまう。

路地の角を曲がったところに彼らはいた。


大人の男1人と少女が1人。

少女の服装は平民にしてはいいものだから、おそらくどこかの商会の娘だろう。

男の衣服を見た感じ、金をたかっているのだろう。

大の大人が情けない。


……貴族のやり取りよりかは幾分かマシだが。


このまま放置も後味が悪い。

体格差からして、金を取られるのは確実だろう。

ならば、


「いいだろう、貸し一つだ」


頼まれてもないのに勝手に貸しを押し付けた。



「離れろ、男」


そう言ってズカズカ近付く。


魔法は使わない。

平民も魔法は使うが、正式に学んだ私とでは練度の違いは歴然だ。

スキルでどうにでもなるとしても、やめておこう。

誰かにこっそり見られたら証拠を消すのが面倒になる。



「あ?テメェには関係ねェだろうがよ!」


弱者からすれば恐ろしい形相だが、今回ばかりは相手が悪かったな。


「なんか言えやーーー」


気絶させるのがやはり一番効率的だろう。

一応記憶は覗かせてもらうが、スキルを使うまでもなくこいつは私の顔も容姿も大して覚えていない。


「……やはり、覚えてないな」


やはりだった。

ついでにここで起こっていたことも私の想像通りだったようだ。


「おいお前、名前は?」


普段はこんな口調では話さないが、今の私は平民アルトだ。

できるだけ口調はが荒々しくする。


「……」


だが、少女は何も言わない。

さっきのことが怖かったのだろう。

こうなることは想定していた。


早くこの路地から出た方が良いのだが、私のような服装の者とこの少女が共に歩くと目立ってしょうがない。

路地前に放置するのもどうかと思うので、どうにか名前くらいは知りたかったのだ。


だが、言えないのなら仕方ない。


立ち上がるとズカズカと少女の前まで進み、その頭に手を置いた。



慰めるためーーなどでは決してなく、スキルで記憶を読むためである。


記憶は人間が持つ最大の痕跡だ。

これを読み取れば大抵の個人情報は手に入る。


……ふむ、イーグレット商会の娘で三女のレイラか。


髪は長くて純白、目は金色。


見た目はそれなりに美しい。

平民の中ではさぞ人気だろう。


一見すると、ここで何をしているんだと思うが、なるほど。

家を追い出されたようだ。


イーグレット商会は国内最大の商会。

後継問題で邪魔になったらしい。




そんなことよりも。

そんなことよりも重要なことがある。


「其方……()()()か」


驚きすぎて口調が戻ってしまった。


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