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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー47 貴族の醜さ、浅ましさ

久しぶりのアルトムート視点です。

<ヴァイスターク王国国王・アルトムート視点>




 ラフィカノーの学園行きが決定している勇者達がディアーナにて迷宮攻略を始めた頃、ヴァイスターク王国王都、ゼトロノームにいた国王アルトムートにも動きがあった。


「やっとこの日になったか。遅すぎて忘れるところだったぞ」


 面倒くさそうにそうぼやくのはアルトムート。


「忘れるのだけは勘弁してくれ。国の恥だ。恥をかくなら自分1人で楽しんでくれ」


 そしてそれを嗜める宰相、メイドルファス。


 大回廊の紺色のカーペットを踏みしめながら2人は並んで歩く。

 立場はアルトムートの方が当然上だが、兄弟である2人の纏う空気は軽い。



 だが、この後に待つ予定を思い出すたびに王の気分は稀に見る急降下を起こしていた。


 何があるのかと言えば、九王会議。

 大陸にある9ヶ国ーー今回は2ヶ国が消えているので7ヶ国が一同に集まり、大いなる議題について協議を交わす会を開くのである。



 ただ、大いなる議題と謳っているものの、実際に重要な議題が上がることは滅多になく、彼が王になってから今日という日までに重大な議題が話し合われたことはなかった。


 その実態は貴族達の浅ましい権力争い。

 各国の重鎮が集まる場を利用した、国家を跨いだ権力抗争である。


 醜い以外の表現が見つからない。


 だが、今日の会議は充実したものになるだろう。


 なんせ、此度(こたび)は議題に勇者の扱いがある。

 帝国勇者の処遇も含め、決めておきたいところだ。



 迷うことなく城一階の大広間に入り、それと同時に中に控えていた側仕えがすぐさま手のひらサイズで直方体の魔術具を起動する。


 起動されたのは通信の魔術具だ。

 これで会議が行われるラフィカノー公国に転移の通達が届く。

 因みに、これを忘れると転移直後にあちらで待機している騎士の尋問を受ける羽目になる。

 万が一にも何者かが王の集団に変装しているということがないようにするためだ。


 先ほどの魔術具は特別製で、ラフィカノー公国が各国に配布しているものである。

 何が特別なのかというと、私が許可を与えたものしか発動ができないという点。

 しかも許可はわずか数分で取り消されるため、万が一にも変装した偽物が転移する可能性を抑えている。


 ここ数十年で一番の発明品と言えるだろう。




 ***




 側仕えが魔術具を起動したのを確認した直後、私は自室のさらに奥の扉を押し開け、中に入った。

 メイドルファスと3人の騎士が同乗する。


 全員が乗ったことを確認したメイドルファスが手を挙げると部屋に残っていた側仕えの1人が魔力を転移陣に注ぎ、その直後、慣れない浮遊感と共に視界が入れ替わった。




 ***




「お久しぶりにございます。遅いご到着でしたな、アルトムート様。大国の王という身分が板についてきたようで何よりです」


 召喚の間に到着直後、真っ先に声をかけてきたのはモスターサ王国の公爵の……さて、彼は誰だったか。


 まあいい。

 後で確認しよう。


 とある公爵に話しかけられた。


 本来このような形で公爵ごときが王に直接話しかけるのは無礼に当たる。

 しかも、この者はモスターサの貴族。

 我が国と同程度に富んでいるとはいえ、土地自体は狭い弱小国家だ。

 わが国より広いレディプティオ帝国の公爵ならいざ知らず、弱小国家の公爵にこのように話しかけられる筋合いはない。

 大方、私が即位から時間がそれほど立っていないため舐めているのだろう。



 まあ良い。

 今回は何も言うまい。

 この場で何かを言っても仕方がない。


 後日改めてモスターサ国王に苦情を入れておこう。




 さて、彼の言葉についてだが、普通ならば褒め言葉なのだ。


 だがここは貴族の社交場。

 言葉の奥の真意を読まなければならない。


 この場合は『久しぶりだな。来るのが遅かったな、アルトムート。大国の王になって調子に乗ってるんじゃないか?』となる。


 調子に乗って私に話しかけたのは貴様だがな。





 この場に来るたびに思う。

 子供は素晴らしい、と。


 無垢で純粋。

 言葉の裏を読む必要がない。

 嘘はどれも可愛らしいものばかりだ。


 既に学園入学を済ませたオルテノートともなると貴族の教養として婉曲な言い回しも学び、そうも言えなくなるが、それでもこの騙し合いの場と比べると可愛らしいものだ。


「ああ、貴公も息災なようで何よりだ。それから、私も貴公のように早く来れれば良いのだが生憎(あいにく)忙しくてな。心に留めておくことにしよう」


 訳すると『まだ死んでなかったんだな。それから、私は貴様のように暇ではないのだ。暇な奴はいいよな』となる。



 互いに挨拶を交わしたところで全員が揃ったようで、移動を始める。


 再度言うが、ここは神代の間。

 勇者が召喚された部屋であり、国同士を繋ぐただの中継地点だ。

 まだラフィカノー公国には到着していない。



 これからラフィカノー公国貴族に従ってラフィカノー公国の星の間を通過して公国入りをする。

 行程が面倒だが、こうすることで防犯面を最高水準に保ったまま、2週間近くの日程を短縮できるのだ。


 ラフィカノーと国境が隣接している我々でさえ2週間の短縮ができるのだ。

 モスターサやルーンゼイト、ベルーガ、レディプティオはさらに助かっているのだろう。


 星の間は正しく歩けばほんの数十秒で抜ける。

 すぐに我々は目的地に着くだろう。


 私はそれなりに今日を楽しみにしていたのだ。

 なぜなら部下の目が少ないため、勝手な行動がしやすいから。


 ラフィカノーを治める公爵と魔術具越しに話したことはあるが、実際に行って会うのは一年ぶりだ。

 さっさと会って会議を済ませて観光に移るとしよう。




 やる気ダダ下がり真っ最中の今のアルトムートの頭はお花畑でできていた。

各国の城から星の間という名の迷路が続き、それが神代の間に接続されています。

つまり、星の間は各国に一つずつあります。そこを通って神代の間に行き、王が合流してから今度はラフィカノー公国の星の間を全員で通ってラフィカノー公国に行きます。

ついでの情報ですが、勇者召喚が行われるのは神代の間なので、書いてはいませんが勇者は星の間を一度通ってます。

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