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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー37 放任主義

「お疲れ様です、優人くん」


 そう言って、倒れた僕を抱き起こしてくれているのは純恋だろう。

 視界がぼやけて誰かはわからないが、その声色も、匂いも彼女のソレだった。


「ありがとう、純恋」


 彼女がいればもう大丈夫。

 そんな無条件の信頼がそこにはあった。

 彼女は浄化と呟くと、身体は何やら温かい光に包み込まれ、だんだんと傷口が小さくなっていく。

 見えないが、そんな感じがする。

 何せ、自分の体だ。

 そのくらい分かる。



 かっこよかったです、と僕にしか聞こえないような小さな呟きが聞こえた。

 今彼女の顔が見れたらどれほど良かっただろうと思う。


 それと同時に今の僕らの光景が周りの人にどんな風に映っているのか気になった。


 純恋は僕らの関係を発表することにしたんだろうか。

 まあ、さっき僕を抱きしめた時点で発表も何も、もう伝わっているとは思うが。


 どちらにしても、悪いことではない。

 あまり好きではないが、クラスのカーストにおいてほぼ最上位にいる純恋と僕が付き合っているのを知った周囲への対処が面倒だと思っただけで、ぶっちゃけ全部僕の我儘だ。


 ……いや、そうでもないのか?


 今まで自分の立ち位置を真ん中あたりと認識していたが、ここは異世界。

 親の力も今までの学力も大した価値を持たない場所。


 今現在頭ひとつ飛び出たレベルとスキルを持つ僕はクラスカーストならぬ勇者カーストにおいては最上位と考えて差し支えないのかもしれない。


 まあ、そんなこと純恋に言ったら怒られるだろうけど。



 僕も純恋も互いが好きで付き合っている。

 勿論、結婚前提で。


 それなのに僕がカーストなどというくだらないものを気にしていたら純恋は良く思わないだろう。

 だって、僕らは互いの立場に惹かれたわけじゃないから。

 僕らが惹かれ合ったのは、互いの存在そのものだから。


 多分、例え僕の立場が弱くても、純恋は僕を捨てはしないだろう。

 これは奢りではない。



 どっちでもいいか、と結論を出して一度閉じていた目を開けると、今度ははっきりと純恋の顔が見えた。

 何があったのか知らないがとても花が咲かんばかりの眩しい笑顔を浮かべている。



「ありがとう」


 笑顔の意味は後ほど聞くことにして、とりあえず感謝。

 純恋がいなかったら倒れて病院行き……にはならずに普通に対処できたとは思うが、【自星の燈(エトワール)】を使わずに残せたのは大きい。

 いつか会うであろう謎の強敵のために用意した、再使用期間が長すぎる技なので、純恋には感謝だ。

 それから、腹の穴というなかなかイカれた重症を完治させてくれたことにも感謝だ。

 放置すれば死んでいただろうから、命の恩人と言っても差し支えないだろう。




「意識が戻られたようですのでこれからのことを説明いたします」


 戦闘直後にも関わらず、息ひとつ乱さずにロキエラが説明を始める。

 その声で、僕の周りに集まって何か言いたそうにしていたクラスメイトたちはロキエラの方に向き直った。



「ではこれからディアーナの迷宮に向かいます。一緒に行くのも面倒ですので、ディアーナへの地図を渡し、それに従って各々ディアーナに向かっていただきます」


 制限時間を過ぎたらロキエラが魔法で強制徴収するらしい。


 ……毎度思うけどさ、魔法って便利だよねぇ。強制徴収できるんでしょ?




 ***




「こちらが地図でございます。それから、こちらの魔術具を使用すると私に連絡が届きますので、緊急時にお使いください」


 ワゴンに乗った地図と車のキーのような形の魔術具を渡される。


「早めにディアーナにお着きになられた方も私にこの魔術具でお知らせください。その後は自由行動とさせていただきます。できる限り、単独で来られることをお勧めいたします。複数人で協力されても構いませんが、我々としては訓練にもなりますので、単独で来ていただきたいです」



 そしてさっさとロキエラとサディークは訓練場を後にする。

 後に残された僕らは互いに顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。




 ***




 さてどうしよう、と思ったところでふと榊のことを思い出した。

 そしてキョロキョロと視線を動かすも、彼がどこにもいない。


 もう行ったようだ。



 榊のスキルは【瞬間転移】。

 ノータイムで転移する力で、転移距離に制限はない。


 結界に容易く阻まれるという欠点があるのだが、街の外を飛び回るのに不都合はない。


 おそらく今頃もうディアーナに着いているだろう。



 別に頼る気はなかったが、少し気になったのだ。


「さて、どうしようかな」


【空間転移】の転移距離は肉眼ではっきり見えている範囲と行ったことがある場所の2つ。


 よってディアーナへの直通ルートは持ってない。


 ついでに言うと、戦闘直後のせいで魔力がすっからかんなため、スキルはほとんど使えない。


「イルテンクロム……しかないかぁ……」


 悪いのは自分だが、あの時戦わなければと思わずにはいられない。


 そして次の瞬間、僕は森の中にいた。



恋愛のパートの時ダダ下がりだったPV数が徐々に戻ってきました。あれ?そんなに僕って恋愛書くの下手クソでしたか?えーマジぃ?しょうがないので人気のラノベ読んで出直してきます。ちなみに次話は第二回登場人物紹介です。

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