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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー28 盗聴防止の魔術具

「これ何ですか?」


 純恋が来たのは補助魔法系の魔術具が置かれている棚だった。

 使い方が限定されるものの、種類が豊富な補助魔法系の魔術具は貴族や一部の裕福な平民が重宝する。


 魔術具は攻撃系、防御系、補助系、生活系の4つに大きく分けられる。

 貴族は日常的に携帯しているのが防御系で、自身も貴族である側仕えの人は防御系にプラスで生活系の魔術具も携帯する。

 主の世話に最低限必要な物は常に持っておくものらしい。


「これが隠蔽の魔術具でこっちが盗聴防止の魔術具。それでこのあたりは結界系の魔術具じゃ。で、この辺りが身体強化の魔術具。ここらが魔法発動の補助の魔術具」


 日常的に頻繁には使わないが、持っていると何かと便利なものの詰め合わせが補助系の魔術具のようだ。


「さっきの補助スキルを『考える』なんて言えるんならアンタらの家は裕福なんだろう?だったら持っておいて損はない。身分が低いワシら平民には必要ないもんなんじゃがな」


 別に裕福な家じゃないんだけど。

 むしろ自分の家がない借り暮らしの申し訳ない身の上なんだけど。


 それよりも、僕らのこと裕福とか言ってるけどさ、この人貴族に対してもこんな口調なのか?それって大丈夫?

 心配だな。

 不敬だとか言われて斬り殺されないかな。



「これは何ですか?これも盗聴防止ですか?」


「このあたりは状態異常系統じゃ。これが毒耐性でこれが呪いだな」


 呪いと言えば、ここ暫くラツィエルのところに行ってないな。

 元気にしてるかな。

 あんな広々とした場所で1人きりだから寂し過ぎて死んでなきゃいいんだけど。


 ……いや、三日前のことをついさっきとか言ってたんだからそもそも時間感覚が僕らとは違うのか?神様だしな。僕らといろいろ違っててもおかしくない。



 まあいっか。

 今関係ないし。




 ***




 状態異常系統の魔術具も結局スルーした。


 状態異常完全無効を持つ純恋にとって状態異常系統の魔術具はただのガラクタでしかない。

 僕にとっても、大体純恋が横にいるのでそこまで意味はない。

 もし毒にかかっても純恋がどうにかするし、自分でも状態異常解除はできないが、治癒と再生はできる。


 つまり、純恋はもちろん、僕にも大して需要がない。



「貴族家でよく使うのはこの辺りじゃな。盗聴防止は特に人気じゃ。なにしろ貴族は嘘と秘密で出来ておるからなあ」


 ガッハッハと威勢よく豪快に笑うバルトに苦笑いが漏れる。


 僕らがその貴族だったらどうすんだよ。

 絶対殺されるぞ。


 しかも僕実際に貴族だし。


 でも、そうだな。

 盗聴防止は案外ーー


「……いいですね、盗聴防止」


「僕も同じこと思った」



 僕らの心は繋がっているらしい。


 やったね、って言いたいとこだけど、そりゃそうか。

 秘密の話し合いを結構するんだから、盗聴防止純恋だって盗聴防止が欲しいだろうな。



 それにしても、貴族は嘘と秘密の塊か。

 こういう物を所望する僕らもいずれはモノホンの貴族みたいになるのかな。

 アルトムートとかフェルテって平民になんて思われてるんだろ。

 聞いた話だと慕われてるらしいけど。

 ま、貴族全体で言えば嘘と秘密が正解だわな。

 バルトの言っていた、貴族は嘘と秘密の塊発言はむしろ正鵠を射ている。

 でなければ貴族特有の婉曲で回りくどい、オブラートに包み損ねたような悪口なんて言えない。



 それに、僕らだって偶に他に聞かれたくない話だってする。

 今までは奏と遥香が結界を張って何とかしていたが、2人のいない場所ではできないようでは意味がない。

 ーー否、意味はあるだろうが、不便だ。


「いくらですか?」


「これは少し魔石の品質が悪いせいで中銀貨5枚。おすすめのこっちは大銀貨一枚だ」


 おすすめの方の盗聴防止の魔術具は主に伯爵家以上で使われるらしい。

 これより更に良いやつもあるらしいが、そこまでの極秘情報を扱う予定はないので、これで十分だという結論に至った。


 尤も、安いとは言ってもその基準は先ほど目にした補助スキルの宝玉のため、魔術具自体は安くない。

 むしろ、一度手を引くレベルに高い。


 概算だと大銀貨1枚は10万円。

 中銀貨5枚は5万円だと算出される。

 これが異世界の高校生の払う額かあ……召喚前に前払いでこのお金欲しかったなあ。

 そんなことを考えつつ。


「これ買います。ください」


 需要と金額の釣り合っている物が無いのなら仕方ない。

 ケチってばかりもいられないしな。

 どうせいつか役にたつ。


「僕が出すから」「私が払います」


 声が重なった。

 それから2人で顔を見合わせて笑ってしまう。


「初めてのデートだし、これ多分みんなで使うようになるからさ、僕に払わせて」


「分かりました。じゃあお願いします」


 少し拍子抜けだった。

 純恋ならもう少し自分が支払う、と主張すると思っていた。

 自分が手に取ったのだから自分が支払わないわけにはいかない、などと言うと思っていた。


 そのことを純恋に尋ねると、私が引くまで優人くんも引かないでしょう?と微笑まれた。

 よく分かってくれている。

 そういう気遣いにも感謝だな。


 暫し呆けていた僕を見てクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げる純恋に向かって微笑みかけた。


恋愛……むずい。経験が無いのがキツい。処女作のくせに600話超えしそうなこの作品がそもそも重すぎた。まあ、完結はさせるけど。

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