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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー26 魔術具店

 デート中の動きは大して……というか全く決めてないが、場所は決まっている。

『決まっている』というよりそこしか無い。


 場所はゼトロノーム城の周りに広がる城下町。

 そこにある店々を見て回ろうと思っている。



 フレーデンの街も定住する場所が決まっておらず、持てる量に限りがある僕らが買いたいと思うものは少なかったものの、街自体はそれなりの発展を見せていた。


 だが王都は違った。

 流石王都と言うべきか、活気の面でも数の面でも品質の面でも何もかもがフレーデンを上回っている。

 今僕らがいるのは魔術具を売っている店だが、そこで売っている物の品質はフレーデンにある店の中で言えばトップクラスだろう。

 そんな店がいくつもあるのだ。


 魔術具の店だって、今いる店が突出しているわけではなく全ての店で高水準が保たれている。

 アルトムートが率先して自慢するだけある。

 それを聞いたフェルテが萎むだけある。



 ***



 魔術具とは魔法の術式を道具に刻んで、埋め込まれた魔石経由で魔力を注ぐことで使用する道具だ。

 種類は大まかに分けると属性数と同じ8種類。

 刻んである魔法の種類によって、発動した時の効果が変わってくる。

 そして、それによって用途も変わってくるため、必然的に買う人の社会的階級もある程度は決まってくる。


 例を挙げるとすると貴族階級でよく使われるのは光や闇の魔法が刻まれた魔術具だ。


 光や闇の魔術具にわかりやすい効果がない。

 例えば水を生み出す魔術具は用途が多く使い方も多岐に渡るため、全ての階級で重宝される。

 だが、この2属性に何かを生み出す効果は殆どない。

 傷を浄化する等の効果は持つが、傷を治すならば水属性の癒しの魔術具を買った方が役にたつ。

 そのため、経済的に余裕がある家庭が買うのだ。


 光属性には浄化や幸運、奇跡といった、お守りとして便利な効果を多くもっている。

 闇属性も同じように退魔や厄除けのお守りとして重宝される効果が多い。

 上流階級の人間はこうしたお守りを常に身につけて暗殺から身を守る。



 対照的に、それ以外の属性魔法は癒しや破壊、記憶、加速、創造などの目に見える効果が多く一般的な平民の家でも使われることがある。

 その最たるものが水属性の水を生み出す魔術具だ。

 この魔術具こそが世界で一番普及している魔術具であり、発展している魔術具である。

 理由は当然、用途が多いからだ。


 そんな感じで階級ごとに人気の魔術具は異なってくる。



 今日、初めて来たこの店は平民と子爵位くらいまでの下級貴族を相手にする店だった。

 店舗の数は少ないものの堅実な商売で力を持った店である。

 棚に載っている魔術具はどれもこれも綺麗で見るからに良質なものばかりだった。


 店主1人で運営する小さな店ながらも、王都にいつまでも店を出せると言うことは、人気なんだろう。




 店主の名前はバルトと言うらしい。

 既に高齢のおじいちゃんでもうすぐ店を畳むという噂もある。



 からんからんと木札がぶつかり合う軽快な音が客を出迎える。

 数秒後、店の奥の扉が開いて白髪の少年が顔を出した。

『白髪=高齢』という固定観念からか、どう見ても少年なのに高齢に見えてしまう。


 ……もしかして僕も実際より高齢に見えてんのかな?もしそうだったら嫌だな。


「いらっしゃい。商品は好きに見てくれ。気に入ったのがあったら持ってきてくれ」


 それだけ言うと、レジみたいな台の上に興味なさげの顔を貼り付けてだらしなくうつ伏せになった。


 中学生未満に見えなくもない背丈の少年の見た目は子供、言葉は老人状態に困惑を隠せなかった。


「あの、ここの店主のバルトさんはいますか?欲しいものがあるんですけど」


「本人を前にして失礼なことを言う餓鬼じゃの。ワシがバルトじゃ。これでも既に70を超えておる老店主なんじゃが、最近珍しい魔術具を手に入れてな、こうして10代まで若返ったのじゃ。気の短さは変わっておらんから欲しい物があるならさっさと言えぃ」


 見た目と口調のギャップが酷い。

 変声機を付けてると言われた方がまだ納得できるほどだ。

 ちょうど、()の人気なミステリ作品のへっぽこ探偵役をこの少年がして、変声機で謎解きをする主人公役を隠れた老人がしているみたいだ。


「早うせい。ワシは忙しんじゃぞ」


 ついさっきカウンターで船を漕ぎそうになっていた人間が何を言っているんだと言いたくなるが反論は喉で押し留める。

 店主と揉めて買い物ができなくなったら本末転倒だし、デートの真っ最中に喧嘩なんて論外だ。


「まずは鑑定の魔術具を見せてください」




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