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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー23 只今食事中

 ロキエラからの説明が終わり、入室した時から置かれてあったがナプキンやカトラリーをチラリと見てホッとした。

 どうやら基本的なカトラリーの種類や使い方は地球と同じらしい。

 特段おかしな物は見当たらなかった。


 宿に泊まっていた時はフォークとスプーンしか使ってないし、フレーデンの城でもこちらに配慮したのか、普通に食べやすい洋食だった。

 つまるところ、高級レストランの料理ではなく、家でも食べたことのあるようなパスタレベルの料理しか今まで食べてないと言うことだ。

 そのせいで、マジの貴族が使うカトラリーのあれこれなんて知らなかった……と言うか、知る機会がなかったのだ。


 でもまあ、よかった。

 これなら最悪は起こらない。

 ちょっと注意を受ける程度だろう。


 別に僕の家がしょっちゅう高級レストランで外食するような金持ちの家だったというわけではないのだが、それでも時たま『超』はつかないがそれなりに高いイタリアンレストランに行くことはあった。

 だからカトラリーの扱いは下手ではない。


 まあ、貴族の中じゃあ下手なんだろうけどね。



 閑話休題



 いつも通り食べろと言われたものの、いつも通りに食べられるわけがなく、誰も何も話さない時間が続いた。

 隣同士でこそこそ話すことはあっても、他の人にも聞こえるような声量を出す者はいない。


 いつの間にか丸くなっていたようで、いつもは騒がしい西田でさえ額に皺を刻みながら見るからにイライラした顔で黙っていた。

 正直言って、息苦しいことこの上ない。



 それを察したのか、ロキエラが退出した後に残って何やら板……というより板の中にある白い何かに文字を書き込んでいた人たちが


「これにて調べは終わりましたので、退出させていただきます」


 と言って全員揃って頭を下げる。


「これからの食事でもぜひこの状態を保ってください」


 それを言い残して3人とも出て行った。





 しばらくシーンとしていた食堂に西田の声が響いた。


「めんどくせェな。俺学校行かねェんだから関係ねェのに雰囲気で流されるし」


「ホントそう。アタシも行かないのに変に固まるし」


「貴族貴族ってめんどくせぇんだよ」




 数人が同調してグダーとだらける。


 が、


「まだ見られてるぞ、これ」


「そうなんですか?よく分かりましたね」


「ああ、そんな気配がある」


 ただの勘である。

 ただ、好きな人の手前、『勘だ』とは言いにくかった。


 でもまあ、あながち間違いでもないだろう。

 タイミング的に、こちらを気遣った感じがした。


「気をつけた方がいいよ。西田は別に関係ないけど僕らは関係あるから」


「ありがとうございます、優人くん」


 そう言う純恋はカトラリーの動かし方が上手い。

 もしかして日本にいた頃こういうのもきっちり教えられたりしたのだろうか。

 別に、綾井家の事情なんてこれっぽっちも知らないのだが。




 出されている料理はステーキ。

 この世界に果たして牛がいるのかは甚だ疑問だが、牛肉っぽい味はした。

 つい先日、真っ青な野菜の入ったサラダっぽい物を王宮で食べた身としては、普通に程よく焼けていて、見た目も地球のものと大差ない今日の料理はむしろ違和感があった。


 飲み物は白ワインみたいな飲み物。

 アルコールは入ってなさそうなので、白ワインの見た目をした果物ジュースか何かなのだろう。

 毎度毎度、見た目と味のギャップが凄まじい。


 ……まあ、味が良かったら他は特に気にしないんだけど。


 初めて毒々しい料理に出会ったあの日は特別だ。



 ***



「そういえば優人くん」


「どうした?」


「ここに来る前にフェルテさんに会いまして、優人くんへの伝言を預かってるんですよ」


 珍しいな、純恋に伝言を頼むなんて。

 よっぽど急ぎの内容なのか?



 そう考えたが、どうもしっくりこない。


 伝言なんてしなくても、部屋に文官か側仕えを寄越せばいい話だからわざわざそうするってことは緊急っぽいけど……純恋に『緊急』だと伝えてないのがどうもおかしい。

 純恋がその『緊急』の話を今の今まで言いそびれていたとも思えない。

 どういうことだ?



「フェルテさんから、夕ご飯の後に部屋に行くから知っておけ、と伝えるように言われました。時間は9の鐘だそうです」


 9の鐘……ってことは8時ごろか。


「ステータス」


 ふむ、今が8と4半の鐘ってことは6時15分……いや、鐘が2時間おきだから4分の1は30分か。

 つまり、え〜と……今は6時半。

 だからあと1時間半ってとこか。

 まあ、問題ないな。

 特にすることないし。

 強いて言えば、純恋の所に行くつもりだったけど、その時間が短くなるくらいか。



「分かった。じゃあ大人しく部屋で待っとくことにする」


 忘れずにきっちり言いきった、と隣で笑みを浮かべる愛しい恋人の、失われることのないあどけなさに少し癒された。




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