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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー17 呪いの勇者

呪殺と言われてもな……具体的にはどうなのだ?」


「正確には触れた相手を確実に呪殺し、指定した対象を一定の確率で何らかの呪いを施す」


 実際のところはっきりと分からないのだ。

 スキルの効果なんて世間に公開するものではないし、はっきり言ってスキルとは、その保持ですら隠すほどのものだ。

 だからその正確な効果は不明。



 ただ一つ。



 神をも殺す威力だったことは分かっている。

 触れられれば神ですら間違いなく死ぬほどの反則具合だったらしい。


 神話に登場する神秘の女神ラツィエル。

 彼女は呪いによって神界から堕とされた。


 神秘の概念が崩れてないことを見ると殺されてはないのだろうが、神の力の大半を失っていると予想できる。


 まあ、なにが言いたかったのかというと、【呪】が反則級に強力だということだ。



 そう解説を加えているとメイドルファスが口を挟んできた。


「アルトムート。これは何の話し合いだ?」


 何の話し合いと言われてもな、今は呪いの…………ん?


「今話すべきは呪いがどうとかではないだろう。過去の怪物について考えてもなにも変わらん」


 確かにその通りだ。

 呪いの怪物はもう居ない。

 だったら考えて悩む必要はないわけだ。


「まあ、そういうわけだ。とにかく、召喚の理由と今回の原因は共有した。これ以上私から伝えることはないが、其方らはあるか?」


「ない。会議を終わらせてくれ」


「では会議は終わりだ。明日もこの執務室に来い。面倒な仕事が山積みだ」


「其方が1人でやればいいだろう。困ったらメイドルファスを頼れ。私を頼るのは最後だ」


「ふむ。いいだろう」


 有能な文官には他の仕事が既に積まれてある。

 つまりは私を助ける余裕はないわけだ。

 普段なら手を借りただろうが、生憎今は戦後処理で皆忙しい。


 図らずもメイドルファスとフェルテを頼ることになるだろう。




 逃れられない我が手から必死に逃げようとする義弟を横目に見ながら微笑を浮かべた。











 ***










「はっ……くしゅん」


「どうしましたか?風邪でもひきました?」


「風邪じゃない。……と思うが分からんな。まあ気をつけておく」


「これから暫く貴方に仕事があるので調子が悪いのなら早めに直しておいてくださいね。あの人からの連絡によれば勇者の一部が学園に行く予定ですから」


「だから何だ。まさか俺に学園に乗り込めと?」


「そのまさかです。貴方には学園で勇者と接触してもらい、折を見て勇者を片っ端から殺してもらいます」


「誰が最優先だ?全員殺せというが、せめて優先順位くらいは決めろ」


「愚問ですよ」


 というか、勇者の名前どころか上位の勇者のスキルさえ知らないのでしょうか?

 まあいいです。

 どうせ優先順位など決めずとも貴方なら全員殺せるでしょう。


「何が言いたいんだ貴様。さっさと俺の問いに答えろ。これ以上言わせるな」


「はいはい、言いますよ。……()()()()()()()()()()


 どうせ名前を聞いても分からないでしょうに。

 何で聞くんでしょうね。


「誰だ?知らんな。いや、俺が知らんということは大した奴じゃないってことか」


「まあ触れれば勝ちの貴方にとっては弱いのかもしれませんけどそれでも全体では強いですよ。それに、貴方だって言うほど強くないでしょう?遠距離戦なら梶原優人にさえ勝てませんよ?」


 少し煽り気味に話しかけてみる。

 自分を弱者と言われてどう反応するのか気になったのだ。


 弱者と言われてなにも思わずに受け入れるのなら期待しない。

 ブチ切れたとしても期待しない。


 ただ、もし自分の現状と力をはっきりと認識していて自分の長短を認められているのなら、期待できる。

 そういう人は自分に合った最適の手段を見出して目的を遂行できるから。

 身の程知らずで短絡的な行動には早々でず、冷静に対処できたりするから。


「相性の話だ。俺はスキルからしても奇襲による暗殺が最も適してる。逆に梶原優人は遠距離に、貴様は万能さに長けている。それだけだ」


 ふむ、これならば期待できそうですね。

 しっかりと自分のスキルと能力を認識できてます。


「貴様とて、この距離ではその命も危ういだろう?」


 それは違いますね。

 ちょっとイラッとしました。


「それは私を見くびりすぎです。貴方ごときを殺すのに1秒もかかりませんよ」


「試してみるか?責任は取らんぞ?」


 彼を中心に魔力が吹き荒れ、机が崩壊を起こす。

 粘土のように形が崩れて、そこには2人が今まで座っていた椅子だけが取り残された。


「立ったということは……そういうことか?」


「いいえ?貴方を殺すのは惜しいんですよ。これから最前線で戦ってもらわなければならない人ですからね、いくら腹が立ってもここで殺すわけにはいかないのですよ」


「逃げるのか?」


「はい、逃げてあげます」


「やってみろ!!」


 次の瞬間、体が毒物で侵されたかのように苦しくなり、体が一気に重くなる。


 ……毒だけじゃないようですね。重力は使えないでしょうから、状態異常で私自身の体重でも増やしたのでしょうか?まったく、乙女の体重を勝手に増やすなんて重罪ですよ。万死に値します。


 軽く腕を振るうようにして指を鳴らす。


 次の瞬間、目の前に5枚の板が現れて、毒やら加重やらから解放する。

 半透明の板からは向こうで自らの技を喰らって苦しむ仲間の姿があった。

 自分の技をモロに喰らうなんて間抜けにも程がありますよ。

 まさかこの程度では終わらないでしょうね。


 そう思って腕を組んだ時、高い音を立てて板が砕ける。


 ……ふむ、スキル効果の脆弱化といったところでしょうか。


 そう考えてすぐさましゃがみ込む。

 頭上を足が通り過ぎて風が吹き荒れる。


「避けれるのか」


「まさか後ろだからと言って見てないとでも思いました?」


「ああ、思った」


 嫌な予感がしますね。

 こういう時はよく当たります。



 そして背後を見ていた目が何かを捉える。


 何かは分からなかったが危険であることに間違いありませんね。


 体を真横に傾けて駒のようにくるくるその姿勢のまま横回転をする。




 ……それにしても終わる気配がしませんね。いくらかいなせば諦めると考えたわたくしが違ったのでしょうか。


「仕方ありません。貴方には屈辱を味わってもらいます」


 本番前に敗北を経験させるのは自信と気力を削ぐだけかと思いますが、仕方がないです。

 さっさと終わらせてあげましょう。


 再び指を鳴らす。

 スキル名の詠唱は当然、しない。

 弱い人たちはしないとスキルが使えないらしいが、その感覚はよく分からない。

 強くなりたいのなら例えそれが無理難題だったとしても達成するべきだろう。


 出来ないのではない。

 する気がはなから足りてないのだ。



 まあ、それは置いておいて。


 ジジジッ、と若干電子音のような音が混ざった音が聞こえて自分の指先に幾つもの板が生成される。

 そしてそれを纏った指を維持したまま仲間の眼前へと高速移動してその勢いのまま腕を突き出す。




 そして()()()()が放たれる。




 仲間の男はデコピンは何かのカモフラージュと考えたらしく、構わず私に確殺の腕を突き出す。



 が、早く出した分だけデコピンの方が到達は速かった。


 そして指が腹部へ当たる。



 そして男は消え去った。




 正確には部屋に大穴開けて隣の部屋……否、隣の隣……でもなく更にその向こうへと飛ばされていた。

 結果的に男は六つの部屋、7枚の壁をデコピンの力でぶち抜いていた。



「だからいったでしょう。降参ですよね」


「クックック………貴様との戦いは面白いな。どうせその体も偽物の体もどきだろう?」


「あら、分かってたんですか」


 わたくしもちょっとだけナメていたのかもしれませんね。

 次までに改善しておきましょう。


「それでは学園に向けて準備を進めてください。必要なものは揃えます」


「ああ、了承した」


「頼みましたよ、善」


 次の瞬間、その部屋には()()()()()、こと中山善だけが取り残されていた。


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