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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー14 大切な人

「…………言ってもよかったんですか?」


「この話のこと?」


「はい。今の話辛いんじゃ……」


「勿論辛かった。でも今はそれ程でも。それに、話さないといけないと思ったことだし」




 さあ、教えてくれ純恋。


 傲慢な問いってことは分かってるけど、僕はこれを聞いた君が何を言うのか知りたいんだ。



 それでも頼むから、慰めるようなことはしないでくれ。

 同意にも同情にももう飽きたんだ。






 蓮斗は確固たる自分を持っていた。


 性格も雰囲気も僕とは真反対で。

 それでも親友でありたいと思った奴。


 何をしても真反対。

 何を聞いても望む答えと若干ズレてる。


 でもそれでいいと思った。


 だって蓮斗は蓮斗だから。



 僕が蓮斗になれないように。

 蓮斗も僕にはなり得ない。


 だから違って当然。

 むしろ同じ方が違和感がある。



 僕はアイツ自身の紛れもない形に尊敬に近い気持ちを抱いたんだ。





「ーー優人くんは優人くんですよ。なんで古宮くんの存在が全てだなんて言い方をするんですか」


 長い沈黙の後、彼女はそう言った。


「話を聞く限り、確かに古宮くんの存在が大きいのは分かりますけど、それでも優人くんはあの日からずっと同じです」


「あの日?」


「入学式の死んだ魚の目をしていた時ですよ!」


 あ、見てたんだ。


「例え古宮くんがいなくても優人くんはちゃんと立ち直れてました。根がとっても優しいですから。それに、もし立ち直れなくても私が立ち直らせてあげますよ」


 これは全部もしもの話。

 全部たられば。

 なんの確証も、証拠能力もない。



 でも、


「純恋ならやりそうだなぁ」


「そうですよ。ずっと暗いままなら私が後ろから蹴り飛ばしてあげますよ」


 普段の言動とは似つかわしくない言動に思わず苦笑が漏れる。



 そうだった。

 純恋は前からこういう奴だった。


「ありがとう」


 素直にそう返す。


「もうしないでくださいね。今は私たちがいますから。優人くんをもうあんな目にはあわせません!」


「守られるより守れるようになりたいんだけど……」


「いいんですよ、たまには甘えても」



 もし蓮斗が希望の道を与えた人ならば、蒼弥と純恋は与えられた道を照らしてくれた人なんだろう。

 温かく、淡い美しい光で照らしてくれた人なんだろう。


 初めての友人ができたあの日から召喚まで、ついに治ることのなかった女性不信が今は塵程度も残ってないのは、まごうことなく彼女のおかげだろう。




 とあるラノベに天使と呼ばれる少女がいた。

 容姿端麗、品行方正、文武両道な1人の少女。


 彼女のことをそのクラスメイトは天使様と呼んだ。





 でも。



「ありがとう、君のおかげで救われた」


「私結局まだ何もしてないですよ?」


「ずっとそばにいてくれたじゃん。『絶対に裏切らないし、裏切られない』これが僕の望むモノ。これをくれたのが蓮斗と蒼弥と純恋の3人。3人はいつでも大切で特別だ」




 やっぱり僕にとっての天使は純恋だ。




 綾井純恋は決して完璧ではない。

 かなりの頻度で間違え、失敗する。

 いつかの優人は、そんな彼女をポンコツと言った。



 それでも。

 彼女は『特別』だ。



「はっきり言うよ。僕は純恋のことが好きだ。この当たり前の今をくれた純恋が大切なんだ」


「………」


「今まで誰も信じなかった僕はあんまり恋というものが分からない。でも純恋は僕の特別で、大切な人だ。この気持ちに間違いはない。僕はこれからもずっと純恋といたいんだ」



 目の前に頬を僅かに朱に染め上げた顔がある。

 その両の瞳にはうっすらと光るものが浮かんでいた。




「純恋、僕と付き合ってほしい」


 次の瞬間、目の前には愛する人の小さな顔があった。

 そのまま背中に腕が回され、固く抱きしめられる。



 心臓が高鳴る。



「待ってました。その言葉をずっと前から」


 嗚咽を含んだ、それでもはち切れそうなくらいに嬉しそうな声が返ってきた。



「私も優人くんが大好きです!私と結婚してください」



「……」


 いずれは結婚しようと思っていた。

 いずれはそう言う関係になって、一生を共にするんだろうな、と考えていた。

 でももう結婚か。


 いつもなら軽く流しただろう。

 だが、僕も結婚を望んでいる。

 何よりそんな嬉しそうな顔をされるとこたえは一つしか出せないじゃないか。


 だからーー



「あっ、違っ、……わなくなくて……その、……」


 結婚しよう、と伝える前に、僕が困惑しているとでも思ったようで、純恋があわあわと手を振る。


 そして、


「いけないんですか!?結婚したら!」


 怒った。

 マジで怒ってるわけではなさそうだが。


「これが私の気持ちです!さっさと汲んでください。それとも遊び目的の告白だったんですか!?そうだったんですね!?」


「捲し立てて僕を悪者みたいに言うな!」


「変態ですね!」


「何がだよ!」


 ……疲れた。

 まあ、純恋が僕を大切に思ってることだけは分かったよ。

 だったらもういっか。

 うん、そうかもな。



「結婚しよう。いつかはね」


「それでいいです。いつか結婚しましょう」



 それに、純恋が大切だという気持ちに偽りは無い。



「別の場所行きませんか?ここだと椅子が小さいので隣に座れません」


 結婚の約束までしたのに真正面に座るのは嫌です、といきなり可愛らしいおねだりを始める純恋。


「どこかいい部屋があればいいんだけど……」


 あいにく今はパーティーの真っ最中だ。

 すぐには部屋を、と言ってもすぐには用意できないだろう。


「いいんじゃない?ここでも。その代わり僕が隣に移動するから」


 立ち上がってそのまま純恋の横椅子を移動させる。


「これで横にいられるだろ?」


 隣で僕を見つめる彼女に向かって笑いかける。

 でも愛しい彼女はご不満ならしく、


「これでもいいんですけど……立ちませんか?そうすればもっと近くにいられます」


 そう言ってすぐさま立ち上がった。


「誤差だろ」


「その誤差が大切なんですよ」


「大変だな恋人って」


「当事者ですけどね」


 椅子を元の場所に戻してから純恋の横に立つ。



「私がずっといます。それに九重くんも、それに多分、出原くんも」


「………」


 どうだろう?

 でも、もしそうならいいな。


「私たちがずっと側にいるので大丈夫です。もう一人ぼっちにはしません」


「……」




 ありがとう、純恋。

 君が恋人になってくれて本当によかった。

 おかげで僕は救われた。



「それにしても……いいんですか?私で。私多分独占欲強いですよ?もう一生離れませんよ?」


 本当にいいのか、と念押しに聞いてくる。


 でも、


 本当に愚問だよ。


「僕も独占欲強いなら問題ないだろ。2人とも相手が大好きなら、それで最高のカップルだ」


 一度つかんだこの眩しい太陽を僕が手放すことは絶対にない。

 この光はいつまでも僕らを明るく照らす。


 だから何の心配もいらない。

 何があっても僕らなら切り抜けられる。





 僕たちはきっと……いや、必ず幸せになれる。

 そんな予感がする。




 幾光年も先から星々が祝福を送っていた。



これで終わる。ここから始まる



……さて、次話はちょっと真面目な話です。

アルトムートの秘密と召喚の謎について、身内ないで会議します。

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