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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー9 お願い

 「面白い。そのような分不相応な願いを口にしたのは其方が初めてだぞ?」


 ……そんな気はしていた。だって王の後ろ盾は、僕の行動全てに王が協力してくれると言ういうことだから。僕の行動一つ一つに王権が関わってくる。




 しかし、予想に反してアルトムートは突飛なことを口にする。



「だがしかし、悪くない。むしろ愉快だ。気に入ったぞ」


「……はい?」


「どうしたその顔は。願ったのは其方だぞ?」


 そう言ってニヤリと笑う。


「私は願いを叶えると言った。そして、これは私に可能なことだ。ならば配下の手前、約束を反故にするわけにはいかぬ」


 アルトムートがそう言うと、後ろに控えていた男性が何かの紙を王に手渡す。


「勇者梶原優人。其方の願いを叶え、王家の力で其方を庇護する。これが契約の書類だ。後で署名してフェルテに渡せ」


 周囲で拍手が沸き起こり、歓声が上がった。




 その後アルトムートは、学園の説明をフェルテに一任すると、さっさと視線をずらした。

 他の貴族達が挨拶があるのでさっさと勇者の話を終えたいらしい。



 結果、フェルテの仕事が増えただけだった。

 見事なサボり方である。

 慣れてやがる。



「いや、私が行くまでもない。後で文官を遣わそう」


 うっわ。

 こいつもだわ。

 慣れてやがる




「他の2人の願いはなんだ?」


 仕事転嫁の論争を繰り広げた2人の勝敗はフェルテが勝った。

 まあ、どちらが勝ったにしてもそれで大変になるのは文官なわけだが、僕の関知するところではない。

 上司のせいで仕事が山積みの誰かさん、御愁傷様。


「俺ーー僕、私?は後で決めます」

「私も〜………です」


 敬語忘れてたな、お前。



 残りの2人は今決めずに、そのまま保留にするらしい。


 アルトムートもふむ、と頷いただけでそのまま次の話題に移った。



「後で話さねばならぬことがある。フェルテが召集をかけたら集まってくれ」


「私ではなく文官が召集をかける」


 また文官の仕事増えたな。


「だそうだ」


 特に何かを指摘するわけでもなく、アルトムートもめんどくさそうに頷くと、軽く手を振る。

 後ろでげんなりといった表情をしていた側近の文官らしき人は同じように、舞台の端にいた別の文官に向かってお前がやれとばかりに軽く手を振った。


 こうやって仕事は下へ下へと流れていく。

 全面的にアルトムートが悪い。



「挨拶は終わりだ。パーティーに戻っても良いぞ」


 どうやら戻って良いという合図だったらしい。


 フェルテにならって一度頭を下げると舞台端の階段から会場に降りる。

 入れ替わりで1人の貴族が壇上に上がる。

 これからは上級貴族から順に挨拶をするらしい。


 階段ですれ違ったところでその貴族が小さく微笑みかけてきたので僕もそれに倣って笑みを返した。


「今のがこの国の宰相であるメイドルファス様だ。メイドルファス・ドイス・レナフォード様。いずれ話す機会があるだろうから覚えておくように」



 いや、どうやって覚えろと?


 なんとかヴァイスタークやら、かんとかヴァイスタークやら覚えさせておいて今更どこに容量(キャパ)の余裕があるって?


 ふざけんじゃねえぞ。

 そんなに覚えれる訳ねーだろ。


 ばーかばーかばーか!



「フッ……別に覚えなくてもいいぞ?私は一向に困らんからな」


 お巡りさん!ここに悪魔がいます!

 コイツです!!





「それから……もう私の子守りも必要なかろう。自由に動いてくれ」


 大広間の端まで勇者引き連れゾロゾロ移動して、着くや否やそれだけ言い残してフェルテはさっさとどこかへ行ってしまった。


 子守りがどうとか、というより自分が1人で動きたいだけだろうに。

 まあ、それだけ貴族にとってこういうパーティーが大切ということだろう。

 それに僕も1人で動きたかったしちょうど良い。


 他のクラスメイトが離れるのを軽く確認してから、自分も足早に出口へと向かった。

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