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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー7 無茶振り

優人とフェルテ初対面のちょっと後に初登場したアルトムート。ここからは彼もメインキャラの1人です。

 アルトムートの情けない強制送還から約1時間。

 下働きの人が来て大広間まで送ってくれた。


 でもさすがは王国の宮殿。

 着くのに20分もかかった。

 家の移動に20分ってどうなのよ。




 そのまま特に何かあるわけでもなく、下働きの人はフェルテのところまで案内して、そのままどこかへ去っていった。


「なんだか一気に老けましたね。これからはもうちょっと声量あげましょうか?」


「……誰のことを言っている」


 ……あなたのことですけど?




 場所は大広間。


 多くの貴族がうごめく大ホールに僕らはいた。

 使用人の人に連れられてホールに着いた途端、フェルテが父親かと思うくらいの生真面目さで迎えに来た。

 そのため、彼の周りは小学生の遠足みたいに、勇者に囲まれていた。


「まだ時間はある。もう少し話していていいぞ」


 広間についてからずっと黙っている僕らを気遣ったらしいフェルテが会話の許可を出す。

 それを聞いてから少しずつ会話が始まったところで大広間の壇上にあった扉が開いてアルトムートが入室してくる。


 いや、アルトムートだけでなく、王族らしき人が続々と入室してくる。


 人数は4人。

 見た感じあとの3人は王妃と子供2人だろう。


 ピンクのドレスに身を包んだ王女と緑のひらひらした貴族の衣装に身を包んだ王子だ。

 王女は黒……いや、紺色の髪か?それなら闇か風属性……それとも両方か。


 王妃が金一色の髪色なので娘も金髪の可能性が高そうなものだが、なかなかどうして、家族ではないように見えるほど髪色が違う。

これは普通のことなのかどうなのか。



 息子の方は緑の髪色。

 母親が金で父親が白なのになんで緑が生まれるんだか。

 もはや髪色に遺伝の形跡は一切見受けられない。

 表情がアルトムートとそっくりなので親子ではないということに間違いはなさそうだが。


 この国ーーというか、この世界は基本的に一夫一妻制だ。

 でも、あくまで『基本的には』。

 別に一夫多妻でも一妻多夫でも法律的には問題ない。


 外面が悪く思われる可能性があるのであまり推奨されないが、あるにはある。

 それに、王族は子孫を残さないといけないため、一夫多妻のところも少なくない。

 ヴァイスタークがどうなのかは知らないが、そういう国もある。

 エルリアの王族は一夫多妻だった。

 第二、三の夫人達は見かけていないが。



 余談だが、一妻多夫の家は殆どない。

 沢山の妻や夫を抱える家はそもそも裕福でないといけないため貴族家の中でも上級貴族に限られるのだが、一妻多夫ということは家の当主が女性ということだ。


 男性よりも立場の弱い女性が当主に選ばれることなど、家に娘しか生まれなかった時くらいだし、その時だって男の養子をとって家を継がせたりする。


 それに、女性は政略結婚に使える。

 僕らからするとあまり気持ちのいい考えではないが、そんな使い方もあるようだ。


 女性を当主に据えて家を支えてもらうよりかは、誰かを婿として迎えて、本人には妻として家を支えてもらった方がまだ現実的だし、実利があるというわけだ。




 ヴァイスタークの王族はどうなんだろな。

 あの息子の見た目なら母親があの王妃じゃないこともあり得るんだよなあ……。


 もし母親が前に立っている王妃だとしたらそれはそれで驚きだ。

 夫成分に随分と侵食されてしまっている。


「言い忘れていたが、前にいる女性がこの国の王妃であるアウレシア・ユノ・ヴァイスターク様だ。今すぐ覚えろ。『今すぐ』だ」


 いつもの僕だけに対する無茶振りかと思ったが、他のメンバーにもそれを伝えているのを見た感じ、どうやらそうではないらしい。


 何をそんなに急いでいるのかと思って聞くと、このあとのパーティーで王族に挨拶をする必要があるらしい。

 基本的にはフェルテが挨拶の誘導をしてくれるそうだが、万が一王族から質問が飛んできた場合、名前がわからないとかなりの不敬……というか、一般市民若しくは一般貴族ならば即処刑もあり得るくらいやばい不敬らしい。


 とはいえ、王族の名前を知らないことはヤバいを通り越して論外らしいので、普通の国民にそんな奴はいない。

 今までの歴史でもここ100年で王族の名前を間違えて罰せられた人間は5人にも満たないらしい。

 ついでに言っておくと、処刑された者は誰もいないらしい。



 ただ、この国で召喚された勇者の中に無作法な奴がいて、問題になったことはあったらしい。

『勇者だから』という理由で大した罰は加えられなかったが。



「なんとか覚えますから頭揺らすのやめてください。クラクラします」


 さっきから僕の頭をがっしり掴んだフェルテがそのまま手を揺さぶるせいで脳がグラグラしている。

 脳震盪になったらどうするんだよ。


「クハハッ……では頼んだぞ。ついでに、王子はオルテノート・フォン・ヴァイスターク様。王女はアルメフィア・ユノ・ヴァイスターク様だ。そちらも頼んだぞ」


 めちゃくちゃな規模の爆弾発言を僕らに落としたフェルテは『覚えてなくて困るのは私ではないから、覚えたくなければ覚えなくてもいい』とだけ言い残して少し距離を取った。


 いやらしい笑み浮かべやがって。

 少しでも頼りにしようと考えた僕がバカだった。


「ハア……」


 落胆を息乗せてわざと吐き出してみる。




その時、大広間に声が響いた。

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