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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第三章 星と悪童
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3ー2 成長した……のか?

 テスカは強い。



 天獣種という生まれながらのチートがあり、ステータスがそもそも強い。

 ステータスだけ見ても僕らに勝ち目はないはずだった。


 それに加えてあのスキル。


【エネルギー操作】


 本当に反則だ。

 魔法の魔力エネルギーは当然含まれるし、物理攻撃による衝撃のエネルギーも全てでは無いらしいが、ある程度は含まれる。


 ゼロ距離の衝撃は流石に操れないようだが、周囲で発生したエネルギーを勝手に集めてそれを操作する。

 さらに集めたエネルギーを別のタイプのエネルギーに変換して万能性を持たせられる。

 なまじエネルギーの定義が広いせいで、どれがルールに触れるのかいつも戦々恐々している。



 だったらこれならどうだと毒を使ってみたが、もう一つ忘れていたことがあった。



『結界無効』の種族特性。



【星】は出力の微調整が難しいため、どうしても味方もまとめて攻撃してしまう【コズミック・レイ】が帯びる毒は使いにくい。

 だから【小宇宙(コスモス)】の中で使ったのだがこれが完全に裏目に出た。


 種族特性をすっかり忘れていた。

 てへぺろ。



 宇宙を作ってさあ毒をばら撒こうと悪魔みたいなことを考えていた最中にいきなりテスカ消えるんだもん。

 ミスって殺したかと思ってほんとに焦った。


 僕より強いテスカがそんなに簡単に死ぬはずないのに。


 自分の技の出力を見誤ったということは、まだ自分も自身の能力を理解しきれてないんだろう。

 心のどこかで自分を過大評価していたのだと思う。





 そんなことより戦闘の行方。




 結界から逃げられた後、急いで戻ると既に紗夜がダウンしていた。

 まあ、相性が悪すぎた。


 結界しか攻撃手段がないのに、その結界のアドバンテージ……どころか能力そのものを受け入れ拒否されたらもう無理だろう。

 無茶な要求にも程がある。



 戦いの様子は見てないが、大体予想できた。





 その後はまあお察しだ。



 自分より小さなポメラニアンサイズの魔物にみんな負けましたよ。

 はい。


 辛いのでもう掘り返さないでください。

 お願いしますよ。



 召喚した瞬間、テスカと初対面の2人と、天獣種だと初めて知った奏の3人の顔が面白かった。

 特に奏。


 いつも飄々としている奏のおもしろい顔が見れた。

 何度思い出してもあれは笑う。

 いつもとのギャップがあるだけに、なおさら面白い。

 しっかり脳内フォトに保存しておいた。

 もちろん、紗夜の顔も。






 そして今。


「テスカ……お前やりすぎ。強すぎ。どうすれば勝てんだよ……こんなの……」


「違うのである。主が弱いのである」


「平気で心抉ってくるな」


 5分足らずで楽々と全員をノックアウトさせたテスカには傷ひとつなく、対する僕らはボロボロ。

 全身に切り傷、打ち傷のあざだらけ。


 酷い有様である。

 今は回復スキルが使える奴がみんなを癒している状態だ。

 戦闘直後にこき使われるのはいつも純恋と奏である。


 紗夜は疲労でこれ以上スキルは使えない、と言っていた。

 多分嘘だ。


 面倒だし疲れるから適当な嘘つきやがって。

 後でお仕置きだな。




 ちなみに僕は、何度も【日蝕(サン・エクリプス)】で回復して戦って、このザマである。


 幻獣種と天獣種の差はまだまだ大きいようだ。




「あの真っ暗な世界で使ったあの技は良かったのである。あれは結構痛かったのである」


「あれ?毒喰らってたのか?」


「あれが毒であるか。うむ。当たったであるよ。一瞬であるが」



 ならよかった。


 エネルギーが絡まなければいいのなら毒はどうかと自作宇宙の中で放出してみたのだ。

 自分も含め、みんなに毒を喰らわせる攻撃なのでテスカが逃げて、自分だけ自分の毒を喰らっている間抜けな状況になっているのかと思っていた。


 自分も毒を喰らうので、自分も常に回復をしなければいけない。

 結界と毒と回復を殆ど同時にやって、それでも逃げられたのか、と落胆していたのでちょっと心の靄が解けた。



 たったの一撃。

 6人の敗北の成果はそれだけである。



 でも、手加減したテスカに一撃も入れられなかった昔に比べたら、殆ど本気のテスカに一撃入れたのだ。

 僅かだが、確実に進歩できている。


 それを聞いて少し表情が綻んだのがわかった。


「まあ、怪我にも入らない程度ではあるが」


「……そこでやる気落とさなくて良くない?」



 テスカ様はどうやら、一撃入れられたことにご立腹らしい。

 素直に主人を褒めろや。





「ところで、何の毒なの?生き物の毒?それとも種類とか無くって、スキルとしての毒?」


 スキルとしての毒など良く思いついたものだ。

 紗夜が本好きだからこその発想だろう。

 僕が放ったのがラノベの異世界ファンタジーでたまにでてくる、浄化系のスキルの力で中和しないと解毒ができないものなのか、解毒薬が存在するものなのか、という質問だろう。


 毒系スキルの設定のあるあるだ。

 異世界バトル好きなら気になるところ。

 少なくとも僕は気になるだろう。




 今回の質問について。


 惜しい!


 どっちの選択肢もちょっとずつ違う。


 治療不可の自然界の毒というものだ。

 そもそもこの世界に存在するのかさえ怪しいが、少なくとも地球にはあった。



 その名も放射能。



宇宙から飛来する【コズミック・レイ】と呼ばれる破壊光線がばら撒く放射能。

毒の中でもかなり凶悪なものであり、簡単に死を呼び寄せる悪魔の煙。


しかも術式終了後も滞留し、その場で周囲を蝕み続ける。



僕の持つ技の中では破壊力自体はそれほど上位ではないが、凶悪性においてはダントツ一位を誇る。


 

僕がこの技を使えるのは、ある程度操れるため風とかで広範囲に広がらない上、毒をすぐさま純恋が消してくれるからだ。

彼女がいなかったら使わない。



例え敵が目の前にいても。

 『人間』……というより『魔物以外の生命体』かな?に放射能を浴びせるのは憚られる。



 だからわざわざ【小宇宙(コスモス)】の中で使用した。

できる限り効果範囲を絞るために。

 9割9部失敗だが。



 いくら異世界に来たと言っても、中身の本質は日本人としての『優人』のままだ。

 人を躊躇いなく傷つけられるわけがない。








 僕らが本気で相手を殺せないのはいずれ弱点となり、他者に対して弱みを与える結果となるだろう。

 今の甘さはいつか必ず僕らに牙を向け、僕らに不幸な結果をもたらす。

 でも、それが人間というもの。


 僕はそう割り切っている。

 人としての心を失ってまで強くなりたいとは思わない。

 世界にはとにかく武の極地を目指す人もいるのかもしれないが少なくとも、僕はそうは思わない。



 だって僕の目標は強くなることでも戦いに勝つことでもなく、みんなで幸せを掴むことなんだから。



 僕にとって強さは2の次。

 僕の最優先は僕らの幸せなんだから。


この世界に放射能という言葉はありません。

ですが、宇宙の構造は同じなので放射能と同一の物質は存在します。

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